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事業所・企業統計調査は国内の全ての事業所を対象に産業や従業者数を調査したもので、5年ごとに実施しています。
総務省統計局から公表された18年調査の結果をもとに、小売業の特徴をまとめてみました。
<目次>
1 事業所数の減少が急な小売業
2 小売業の構成が変化
3 増加した業種
4 小売業の新陳代謝
わが国の景気が平成14年初めから穏やかな回復期にあるといわれる中でも、国内、そして大分県の産業構造は変化を続けてきました。小売業の動きも大規模店舗の新設や商店街の動向がよくニュースを賑わせています。統計にその変化はどのように現れているのでしょうか。
このほど、平成18年事業所・企業統計調査の結果が総務省統計局から公表されました。5年前の平成13年調査と構成比を比較すると、医療・福祉の拡大や建設業の縮小が目立つとともに、小売業事業所数の減少率が加速していることが今回の調査結果の特徴のひとつとしてあげられます。
小売業事業所(店舗)の数は5年間に2,540、従業者数は7,882人減少しています。おおざっぱに計算すると、従業者数3人の小規模事業所が2,540少なくなったことになります。
事業所数は昭和61年調査時がピークで、平成に入って以来減少を続けています。それで表1の増減率をみると、今回の15.2%のマイナスは急激です。また、これまでは事業所数が減少しても従業者数は増加を続けてきましたが、その従業者数もついに減少に転じたことがわかります。
小売業は転換期を迎えているといえるのではないでしょうか。
事業所数と従業者数が減少したこともさることながら、変化の程度の大きさです。表2には、産業小分類による事業所数の減少率が高かった主な小売業の業種を示しています。
産業小分類で変化の大きな業種を見ていくと、「○○屋」といわれて親しまれてきた業種の急激な減少が目立ちます。米穀類小売業(米屋)、自転車屋、酒類小売業(酒屋)等は、いずれも30%前後も減少しています。5年間に3割というのはまさに激変であるといえます。
これらの業種では従業者数の減少も急で、米穀類小売業と家具・建具・畳小売業では5年間に40%近くも減少しています。
各業種とも、ほぼ昭和50年代にピークとなっています。このことから、約30年前に小売業態変化の節目があり、それ以来続いてきた変化の動きがこの5年に速度を増したといえます。
一方で、増加した業種もあります。一つは「百貨店・総合スーパー」の増加で、事業所数で70.8%、従業者数で13.0%増加しています。
事業所数が7.5%、従業者数が38.6%も増加した「他に分類されない飲食料品小売業」の中心はコンビニで、現在も出店が続いています。
「医薬品・化粧品小売業」にはドラッグストアが含まれ、事業所数は減少したものの従業者数は18.9%増加しています。
冒頭で小売業の事業所数が2,540減少したと述べましたが、平成14年から18年にかけて新設された事業所数(産業大分類の「卸売・小売業」でしか結果表に表されていないので、卸売業の事業所を含む)も2,420を数えます。
新設と廃業を差し引きした減少数が2,540であり、この背景には更に大幅な廃業件数と、2,000件前後の新規開業が含まれるものと思われます。小売業は一方的に縮小しているのではなく、新規に開業する事業所も多いのです。
高齢者世帯の増加やインターネット通販の普及など、小売業の環境変化は止まりません。県民としては、長い目で見て、消費者の利便性を高める小売業であってほしいものです。
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