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空気の中には、粒子状物質(りゅうしじょうぶっしつ)と呼ばれる小さな粒子状の物質が浮遊しています。
このうち、粒子の大きさが2.5マイクロメートル(0.0025ミリメートル)以下のものを「微小粒子状物質(びしょうりゅうしじょうぶっしつ)」「PM2.5(ピーエムにいてんご)」といいます。
微小粒子状物質は、
など、さまざまな物からできています。
微小粒子状物質は、粒子の大きさが非常に小さいために、肺の奥深くまで入り込みやすく、ぜんそくや気管支炎などの呼吸器疾患への影響が心配されています。
微小粒子状物質の環境基準(注1)は「1年平均値が15μg(マイクログラム)/m3(注2)以下であり、かつ1日平均値が35μg(マイクログラム)/m3以下であること」と定められています。
環境省が平成25年2月に設置した「微小粒子状物質に関する専門会合」では、「1日平均値が70μg/m3以上になると、健康に悪い影響がでる可能性がある」とされました。これを受けて、1日平均値が70μg/m3以上になる可能性が高くなった場合は注意喚起を行うことにしています。
※1 環境基準について
人の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準のことです。環境基準を超えているからといって、ただちに健康被害が出るわけではありません。
※2 μg(マイクログラム)/m3について
1マイクログラムは0.001ミリグラム=0.000001グラム(100万分の1グラム)のことです。
微小粒子状物質の環境基準である15μg/m3とは、空気1立方メートル中に0.015ミリグラム=0.000015グラムの微小粒子状物質が含まれていることを表しています。
微小粒子状物質を吸い込む量を減らすため、次のようなことを心がけましょう。
屋外での激しい運動、長時間の運動をなるべく減らしましょう。
不要不急の外出はできるだけ減らしましょう。
換気や窓の開閉をできるだけ少なくしましょう。
呼吸器系や循環器系などの疾患がある方、子供、高齢者は、より影響を受けやすいと言われています。
体調に変化を感じたら、早くに屋内に入って安静にしてください。
症状が回復しないときは、医師の診察を受けましょう。
大分県のホームページで速報値を公開していますので、ご覧ください。
大分県衛生環境研究センターでは、微小粒子状物質の成分分析を開始し、微小粒子状物質の発生源に関する情報を収集しています。
調査地点
平成27年度~平成29年度:中部保健所由布保健部、西部保健所(全2地点)
平成30年度~令和元年度:中部保健所由布保健部、中津総合庁舎(全2地点)
令和2年度~令和3年度:中部保健所由布保健部、佐伯市立鶴谷中学校(全2地点)
令和4年度 :中部保健所由布保健部、佐伯総合庁舎(全2地点)
令和5年度~令和6年度:中部保健所由布保健部、中部保健所(全2地点)
春季、夏季、秋季及び冬季(平成27年度は秋季及び冬季のみ)
質量濃度、イオン成分(硝酸イオンなど8成分)、無機元素(鉄など30成分)、炭素成分(有機炭素など7成分)
写真1 ローボリウムエアーサンプラー
大気中の微小粒子状物質をより分けて、ろ紙上に吸引捕集します。
写真2 ろ紙上に捕集されたPM2.5
捕集前は白いろ紙が、微小粒子状物質が付着したことにより、黒く変色しています。
写真3 恒温恒湿チャンバー及びミクロ天秤
微小粒子状物質はとても小さくて軽い粒子であるため、1マイクログラム(100万分の1グラム)まで測定することができる天秤を使って、重さを測定します。
ろ紙に付着している微小粒子状物質は極めて微量なので、温度や湿度の変化によって重さが変わってしまいます。このため、温度や湿度を一定に保って重さを測定します。
写真4 炭素分析装置
微小粒子状物質の全体の3~4割を占めている重要な主成分である炭素成分を測定する装置です。
炭素成分は,無機炭素と有機炭素に大きく分けられ、さらに、無機炭素は、元素状炭素(エレメンタル・カーボン)と炭酸塩炭素に分けられます。
元素状炭素は、炭化水素が高温で不完全燃焼する際などに生成し、人間の目には黒く見え、光を吸収することから、黒色炭素(ブラック・カーボン)とも呼ばれ、主にボイラーやエンジンなどでの化石燃料の燃焼によって排出されます。中でも、“黒煙”や“煤(すす)”と言われるディーゼル排気由来の粒子に多く含まれます。
一方、炭酸塩炭素は炭酸イオンに含まれる炭素で,土壌に含まれる炭酸カルシウムなどがあります。
炭素分析装置は、これら炭素成分の構成とその濃度を分析する装置です。
大分県衛生環境研究センターでは、国立環境研究所や他の都道府県と連携して、PM2.5の発生源が何であるのかを調査研究しています。
詳細は「大分県衛生環境研究センター年報」で報告していますので、興味のある方はご覧ください。