epi.39 働く女性応援企業　株式会社山忠を取材しました！

太平洋と瀬戸内海をつなぐ豊後水道は、海藻をはじめ魚介類の宝庫です。古くから、ひじきなど海藻食文化が定着していた佐伯市で山忠が創業したのは、戦後間もない昭和22年のことでした。その後、高度成長期の昭和39年に法人化して、今日に至ります。

時代が進むとともに海藻食は天然のヘルシーフードとして注目され、同社は着実に実績を積み重ねてきました。今では、独自に開発した特殊技術「ノンドリップ蒸煮（じょうしゃ）製法」と、海の健康的な自然食を意味する「SEAGANIC（シーガニック）ブランド」の確立で、海藻業界のリーディングカンパニーとしての地位を確かなものにしています。

今回インタビューに答えてくださった阿部美代子さんと河野(かわの)里美さんが勤務するリバーパーク犬飼工場は、2012年に操業を開始しました。佐伯市の本社工場とは別に、内陸部の豊後大野市に犬飼工場を建設した理由は、東日本大震災の発生でした。国内の海藻食品市場で高いシェアを占める同社にとって、安定的な生産体制を整備してリスクを分散し、市場への影響を未然に防ぐことはとても重要な経営判断でした。

製造部で生産主任を務める阿部美代子さんは、2012年の犬飼工場操業開始と同時に入社して9年目を迎えました。現在は「選別」チームのリーダーとして、メンバー7名とともに安心・安全な生産体制を守っています。 「選別は安心・安全の要（かなめ）。会社の信頼性に直結する重要な工程です。海藻にゴミなどの不純物が混ざっていないか、目視で確認しながら指で取り除いていく作業で、高い集中力が求められます。そのため、メンバーにはいつも｢人の口に入るものだから、家族に食べてもらうつもりで選別しましょう｣と言っています」

「阿部さんは、以前も20年間にわたって製造工場で働いていました。しかし、通勤に時間がかかって当時まだ小さかった子どもたちの世話と仕事の両立に苦労し、やむを得ず退社したのだとか。ハローワークで自宅から車で数分しかかからない犬飼工場の募集を知り、入社。念願だった子育てと仕事の両立が叶いました。 「ここは近隣の皆さんから｢潮の香りがする山の工場｣と言われているように、緑に囲まれた自然豊かな環境にある工場です。総勢21名の約8割が女性。人間関係のわずらわしさが無く、アットホームな職場です。会社が子育て世代のことをよく考えてくれるので安心して働けます」。

阿部さんの勤務は平日の8-17時で、海藻の収穫がピークを迎える3～4月やお歳暮シーズンの12月は1時間ほど残業する日があるものの、通常は定時で帰っているそうです。同社には、一人ひとりの希望に合わせて勤務時間を設定するフレックス勤務制度があるため、無理なく働けると長く勤めている人がほとんどなのだとか。 「入社して3カ月間は研修期間。仕事を覚えるまで、丁寧に指導するので安心してください。半年もすれば、皆さん自信をもって仕事ができるようになります」

子育てもひと段落した阿部さんは、今後、自分自身と後輩のためキャリアアップに挑戦するそうです。係長さらに課長と、女性管理職の道を切り拓きたいと考えています。 「性別や年齢に関係なく実績をきちんと評価してくれる会社なので、挑戦のしがいがあります」と、阿部さんの瞳は輝いています。

河野里美さんは、リーダーの阿部さんのもと「選別」チームで働いています。入社したのは2013年、今年で8年目に入りました。小学校1年生だったお子さんも中学3年生になり、子育てと仕事の両立もホッと一息ついたところだそうです。

「以前は冷暖房のない工場で働いていたので、暑くて寒くて本当に大変でした。この会社に転職して快適な環境の中、気心の知れた仲間と一緒に落ち着いて働けるようになったので、入社以来、辞めたいと思ったことは一度もありません」 生産工程は「選別」と「包装」の工程に分かれています。河野さんが「選別」の仕事で常に心がけているのは、ゴミなどの不純物を決して見逃さないこと。2mm以下の小さなゴミを指で取りのぞく作業には、集中力が欠かせません。仕事に慣れるまでは集中し過ぎて、クラクラすることもあったそうですが、今では自分のペースで安定して仕事ができるようになりました。集中する仕事だけに、休憩をはさみながらメリハリをつけています。昼休みは和気あいあいとした雰囲気で、会話に花が咲くのだとか。

「産休・育休から復帰後も、会社がフレックス勤務などで柔軟に対応してくれます。子どもの参観日や急な発熱なども、早退や半休・有給が取りやすい雰囲気なので助かっています。従業員目線の働きやすい環境づくりに、積極的に取り組んでくれる会社です」 コロナ以前は、新年会や忘年会、花見、スポーツ大会、本社工場と犬飼工場合同の食事会など、レクレーションがよく開催されていました。とにかく、親しみやすい仲間と安心してのびのび働ける点が気に入っている、と河野さん。車で約20分の通勤は、スイッチを切り替えるのにちょうど良い時間。元気に出勤し、心地よい疲れとともに帰宅する、充実した毎日を送る暮らしに満足している、と語ってくれました。