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女性の働きやすさを追求
「リケジョ」「ドボジョ」という言葉が、世間で使われ始めたのはつい数年前のこと。これまで、理系分野とりわけ測量・建設業といわれるような、専門分野で活躍する女性の数はほんの一握りでした。
しかし、建設に関わる業界全体のイメージと環境を変えていこうとする企業、そして、その企業で働く女性に話を聞いてみると、現状は想像していたものとは全く違ったものでした。むしろ、ひたむきな姿勢と、前向きな頑張りに満ちあふれています。今回は、地元大分の測量界のパイオニア、「株式会社日建コンサルタント」社長、そして同社に勤めるひとりの女性にお話を伺いました。
入社5年目を迎える
しかし実際に働きはじめたら、年代の幅も広く、冗談を交えながら話をしたり、厳しいだけでなく楽しく進めることができる雰囲気が社内に漂っていてホッとしたとのこと。
人間が生活するうえで欠かせないライフラインの一つである上下水道。その設計に関わる仕事について、「実際には人の目に見えないマンホールの下の事ですが…やはりすべてがつながっていくものなので。完成した時点で人の役に立つことが想像できますし、誇らしく思いますね。」と、キリっとした表情で答えてくれた荒木さんがとても印象的でした。
建設業に対する世間のイメージとは裏腹に、楽しくやりがいをもって仕事に取りくんでいる荒木さんですが、「数ヵ月単位の中長期的な仕事がほとんどですので、工期の後半になってくると、自分が立てたスケジュールや予定に狂いが出たりすることもあります。」と仕事の難しさも感じているようです。それでも「厳しいだけで仕事をしているんじゃない、過ごしやすさと楽しさがあります。」と、荒木さんは仕事の難しさすら楽しんでいるように、笑顔で語ってくれました。
同社では、現在10名の女性社員が働いています。社員の3分の1が女性で、その就業スタイルは正社員、パート社員とさまざま。20代からお孫さんがいるおばあちゃん世代に至るまで、幅広い年齢層の女性が活躍しています。
中でも、荒木さんにとって「今育児休暇中の女性がいるのですが、何かを尋ねたら『打てば響く』ようにぱっと返してくれるほどの知識と技術と経験を持っている方なんです。」と、声を弾ませながら語った先輩社員の存在は大きいようです。
入社後に結婚をし、子育てをしながら再び産休、育休を取得しているこの女性社員は、育児休業中に新たな資格取得の勉強をして試験に一発合格。「女性は、成績も要領も良いように感じます。そして何より時間の使い方が上手い。良い意味で(他の社員の)刺激になるし、後輩の社員にはそれが見本になる。」と
「憧れの存在です。自分の心が少しへこんだ時も、『頑張ろう』と思えます。」同じ会社の中に、尊敬し、目標となる人がいること、近くで一緒に仕事をすることが、荒木さんのモチベーションアップに大きな効果を与えているようです。
同社で働く社員の中には、必要に応じて「テレワーク」システムを活用し、毎日の仕事を効率的に行っている人がいるのだとか。建設業は、場合によって本社から離れた現場に出向いて仕事をしなければなりません。また、本社から離れた場所に住む社員は、天候不順の日に本社へ通勤するリスクと時間的ロスを抱えています。そこで、本社にいるのと同じように仕事ができるシステムを構築し、既に実践しているとのこと。
「今は皆が当たり前にスマホを持っている時代。連絡も仕事も、パソコンとスマホがあれば大半は問題なく行えます。これから先、労働者人口は減少するだけでなく、働きながら介護に時間を取られるリスクが非常に高い。女性の社会進出という視点だけでなく、男女問わず、働きやすさを整えていく必要があるんです。」と、吉田社長は「多種多様な働き方」に対する前向きな思いを語ります。
男女の性別にとらわれず、社員全員が働きやすさを感じられるような環境と仕組みを整えていくという、将来を見越した発想力と実行の瞬発力が、非常に高い企業だと感じました。
「現場にももちろん行きます。力が必要なところ(マンホールのフタ開けなど)は男性が率先して、その後の確認と調査は私が行うというように、男女ではなく適材適所で役割を持ち、一つの業務をこなすことができる場です。」と荒木さんは言います。
建設業は、専門的なスキルと知識が必要な分野の仕事ゆえに、そのテリトリーを広げて、適材人員としてスキルアップの可能性を高めるためには、資格取得が大きな課題のようです。
「技術を生かすために必要な資格がいくつかあります。私は技術士という資格取得を目指しています。」男女の差を感じさせない職場環境だからこそ、個人のスキルアップに集中できる。そして実際に仕事の幅を広げることで、やりがいを高めていけるのでしょうね。
吉田社長も、「資格があれば、産休、育休を経てもそれがブランクにならない。むしろプラス評価です。」と、資格への意識と取得に期待が高いようです。
男女を問わず、社員が働きやすいと感じる環境を、可能な限り実現することを考えて形にするためには、そこで働く人一人ひとりに目が行き届く環境づくりも大切です。
「中でも女性、とりわけ「母」は、子どもにとってかけがえのない存在であり、変わりが効かない唯一無二の存在だということ。だからこそ「女性の働きやすさ」を考えた制度を取り入れることが大切なんです。」という吉田社長の想いは、その取り組みにも表れています。
同社は2015年10月より、大分県が募集する「女性活躍推進宣言企業」に加わり、女性が利用しやすい社内設備(ハード面)と、産休、育休、時短勤務の制度化や女性社員の雇用促進(ソフト)を整え、社員の要望と先見の明をもって、全面的にバックアップする取り組みをスタートさせています。
最後に、これから働こうと思っている女性に向けて、荒木さんに建設業界のPRをしてもらいました。
「弊社は特に、楽しさ・働きやすさを実感できるポイントが多く、恵まれているなと思います。でも、業界全体的に見ると、男女に関わらず人員が不足しがち。新しい人や若い人を迎え入れて盛り上げていこう!と頑張っているところです。」
まだまだ、男性社会の名残を感じさせる風潮が一部にあるそうですが、これから測量・建設業の世界でさらに女性が活躍する可能性を十分に感じられるインタビューでした。
企業名 | 株式会社日建コンサルタント |
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事業内容 | 測量・空間情報コンサルタント・建設コンサルタント・補償コンサルタント・機器販売 |
設立 | 1963年10月 |
所在地 | 〒870-0018 大分県大分市豊海3-7-7 |
TEL | 097-534-0313 |
従業員数 | 25名 |
URL | http://www.nikken-c.jp/ |
※ 2018年7月現在