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女性採用をきっかけに職場改革
「三浦国土建設株式会社」は、1972年に臼杵市で創業。土木工事や舗装工事、宅地造成、駐車場舗装など、公共、民間を問わず多様なプロジェクトを手掛けてきました。その技術力は官公庁や自治体からも高く評価されており、大分土木事務所管内の土木及び舗装工事競争入札では「特A級(令和6年度時点)」の格付けを取得しています。また、社員の平均年齢が約30歳と活気に満ちた職場環境も特徴の一つです。特に女性技術者の採用と育成に力を入れており、全社員の約4分の1が女性、そのうち8名が技術者として地域のインフラ整備に貢献しています。
「高校のクラスでは、女性は40人中3人だけでしたが、ここでは社員の約4分の1が女性なので、女性が多い職場だと感じています」と話すのは、工事部に所属する佐藤萌恵さんです。大分工業高校土木科を卒業し、2022年に入社しました。中学生の頃から土木の仕事に興味を持ち、就職先を探す中で、女性が技術職としても活躍できる環境が整っていることを知り、入社を決意。また、工事部には同校出身の女性技術者が子育てをしながら働いている実績もあり、長く働ける職場だと確信したそうです。
現在は、現場監督の補佐として工事の進捗を記録する写真撮影や、住民への工事概要、作業予定の通知、近隣住民とのコミュニケーションを担当。最近では、工事完了後に提出する竣工書類の作成に携わっています。「工事が完成すると景色が一変します。すべてが新しくなった風景を見ると、大きな達成感があります。また、自分で仕上げた竣工書類を何度も見直し、ミスなく完成させたときや、検査で大きな指摘がなかったときも、『頑張ってよかった』と実感します」。
近年、建設業界では人材不足を背景に賃上げが進み、2024年4月からは時間外労働の上限規制が適用されるなど、働きやすい環境が整いつつあります。佐藤さんも「カレンダー通りに休めるようになり、仕事とプライベートのバランスが取りやすくなりました」と話します。“セカオワ”の愛称でおなじみのロックバンド、「SEKAI NO OWARI」のライブに足を運ぶことを楽しみに、日々の仕事に励んでいます。
今後の目標は、工事現場で主任技術者として活躍するために必要となる国家資格、土木施工管理技士2級を取得すること。会社が勉強時間として確保してくれた、月に一度の土曜出勤日を活用し、資格取得に向けて勉強を進めています。
「建設業は『きつい・汚い・危険』の3Kと言われることもありますが、実際に働いてみると安全対策が徹底されていて、決してきつくも汚くもなく、女性が働きやすい環境も整っています」と語る佐藤さんの笑顔からは、仕事への誇りが感じられました。
吉武瞳さんは、鶴崎工業高校産業デザイン科を卒業し、2023年に入社しました。もともと絵を描くことが好きでデザインを学んでいましたが、建築業に携わる親戚が多かった影響で、次第に建設業にも興味を持つように。特に、多くの女性が活躍している点に魅力を感じ、同社への入社を志望しました。
就職活動当時、同校出身の社員はいませんでしたが、職場見学を通じて社内の雰囲気や現場の様子を確認。「社員同士の関係が良く、楽しそうな職場だ」と感じたことで、入社を決意しました。また、「同じ部署の先輩が育児と仕事を両立させ、周囲の人たちも協力しながら働いている姿を見て、『この会社なら安心して長く働ける』と思いました」と振り返ります。
吉武さんは同社の魅力について、ファッションを楽しみながら働ける点を挙げます。成人式の前撮りをきっかけに派手な髪色にしたときは、学生時代の友人から「その髪色で大丈夫なの?」と驚かれましたが、会社の人たちは温かく受け入れてくれたそうです。吉武さんは「建設業だからといって、ファッションを楽しめないわけではない。むしろ、他の会社に就職した友人と同等以上におしゃれを楽しめる環境だと思います」と、自身の働く環境に満足している様子でした。
現在は、公園利用者の足腰への負担を軽減し、歩行や運動時の疲労を和らげるゴムチップ舗装工事の現場を担当。そこで、事前の役所や業者との打ち合わせから、実際の工程管理まで幅広く任されています。
吉武さんは、個人のスキルを正当に評価した上で仕事を任せてもらえる一方で、体力的な面にも配慮がある現在の環境に、「良い意味で、想像していた建設業のイメージとは違いました」と満足。充実感を持って仕事に取り組んでいます。
三浦国土建設では、女性社員の活躍を支えるため、職場環境の整備に積極的に取り組んでいます。工事部課長の藤目大樹さんは「2016年に初めて女性技術職を採用。それを機に、会社として継続的に女性社員を受け入れる方針を決定し、働きやすい職場環境の整備を進めてきました」と振り返ります。
その一環として、まずは福利厚生の充実に取り組みました。全社員が将来に安心して働けるよう、iDeCoやNISAの手当を支給。また、女性社員の働きやすい環境を整えるため、専用の更衣室やトイレを設置し、デザイン性に優れた作業服を導入しました。さらに、業務負担の軽減を目的に管理部を新設し、これまで工事部が担っていた書類作成業務を引き継ぎました。加えて、出産や子育てを支援する制度を拡充し、ワークライフバランスの向上にも力を入れています。
これらの取り組みの結果、「現場に女性が増えたことで、男性社員も身だしなみに気を配るようになり、職場の雰囲気も明るくなりました。また職場環境の改善が、若手社員の定着率向上に繋がっています」と成果を強調します。
女性技術職の採用を、会社の成長のきっかけとした三浦国土建設。採用当初は、資材運搬や汚れる作業、女性の安全面や体力面への配慮など、男女平等の実現には課題もありました。しかし「同じ扱いではなく、それぞれの特性を生かすことが重要だ」という考え方が現場に浸透し、現在ではそうした課題は解決されつつあるそうです。
「地域で知名度のある企業になり、建設業に興味がない人々にもその存在を知ってもらいたい」と藤目さん。今後も採用と人材育成に力を入れることで、さらなる企業成長を目指しています。
企業名 | 三浦国土建設株式会社 |
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事業内容 | 土木一式工事(宅地造成、駐車場舗装、歩道改修、舗装工事、とび等) |
設 立 | 1972年 |
所在地 | 〒870-0945 大分市大字津守60番地の1 |
TEL | 097-569-4641 |
URL | https://miurakokudo.jp |
※ 2025年2月現在