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農業は「仕事をつくり、仕事を呼ぶ」、大分県版地方創生に欠かせない産業ですが、グローバル化の進展や労働力不足の顕在化、先端技術の発展など、大きな転換期を迎えています。
今後、農業の明るい展望を切り拓くためには、こうした局面に果敢にチャレンジし、農業を魅力ある、もうかる産業にしていくことが大事です。
特に本県は水稲の作付け割合が41%と九州で最も高く、米の消費量が年々減少する中、農業産出額が伸び悩む原因の一つとなっており、現在、米から高収益な園芸品目への転換を急いでいます。
また、農業産出額の約35%を占める畜産業では、「おおいた和牛」の生産量の拡大や品質・収益性の向上などを進めています。
農業が元気でなければ地域に活力は生まれません。農業の成長産業化に向け、構造改革を加速前進します。
県外で就職していましたが、実家の農業を継ぐために帰郷。農業大学校やアメリカでの農業研修を経て、6年前、実家の農業を継ぎました。当初は米や麦を作っていましたが、より収益のあがる農業経営を実現するため、周辺の農地を預かって経営面積を拡大し、畑作物への転換を進めています。現在、地元の方4名を通年雇用しながら、水田の畑地化により、キャベツを6ヘクタール作っています。
キャベツ栽培のメリットは、高収益に加え、経営が安定することです。全農との契約栽培により、販売単価が安定し、経営計画が立てやすくなりました。また、米・麦・大豆の収入のタイミングは主に年3回ですが、キャベツは出荷した翌月には収入を得られます。
農業は身体に負荷がかかるハードな部分もありますが、直進アシスト機能付きのトラクターによるうね立てや全自動定植機などを導入し、きつい作業時間をできるだけ短くするよう努めています。新しい定植機のおかげで今までの2倍のスピードで作業ができるようになりました。
今後の目標は、消費者に喜んでもらえる良い商品をつくるのはもちろん、得意分野を持った農業人材を育成していくことです。
また、ライフスタイルに合った働き方も提案していきたいですし、農業大学校の卒業生も積極的に受け入れて、海外研修に送り出してあげたいという夢もあります。
農業を取り巻く環境は転換期を迎えていますが、人の縁を大切に、地域で認められる農業経営者となれるよう、前向きに取り組んでいます。
前職を退職後、子育てと仕事の両立を考え、ストレスのない仕事をしたいと思っていた時、「道の駅」立ち上げの話にかかわったのが農業に興味を持ったきっかけです。ある農業法人の社長さんに「もうかる農業をしないと続かないよ」と言われたこともあり、ビジネスとして継続できる農業をしたいと平成27年に起業しました。
起業にあたっては、女性が働きやすい環境を第一に考え、軽量野菜のレタスを選択。高さが調整できる作業台や運搬台車を導入し、30アールのハウスでリーフレタスを水耕栽培しています。
温度や湿度などハウス内の環境は、スマートフォンで管理しているので、日曜日も休めますし、安定した栽培管理ができています。このシステムのおかげで負担が軽減され、農業を続けられていると思います。
現在は、20代から60代の女性15人を雇用していますが、柔軟な勤務体系を選べることもあり、十分な人数を確保できています。女性は働ける環境があれば働きたいと思っている人が多いので、今後も環境を整えていきたいですね。
「女性だけで作るレタス」として他との差別化を図ろうと、野菜のパッケージや商品名も自分で独自のものを考え、それが販路の拡大につながりました。作った料理に商品名のハッシュタグをつけてインスタグラムにあげてくれる方もいて、励みになっています。
子育てと仕事の両立という面から「田舎で農業をする」というのは魅力的です。8時から17時まで一生懸命働いても、17時過ぎには保育所へお迎えに行くことができ、子どもと過ごせる時間が十分にとれます。都会で会社に勤めていたら、こんな子育てはできなかったと思います。
女性の活躍が注目される今、女性が農業に取り組むことで、農業のイメージが変わると思います。地元の子どもたちが誇りをもって「農業をやる」と言えるよう、農業をあこがれの職業にすることが今後の目標です。
ロボット技術やICTなどの先端技術を活用して、身体への負荷を減らす省力化や生産物の高収量・高品質化を可能にする新たな農林水産業を「スマート農林水産業」といいます。
ドローンによる農薬散布
リモコン式自走草刈り機
問 地域農業振興課 097-506-3572
農業に興味のある女性を対象にセミナーやバスツアーを開催。農業で活躍する女性の話を聞いたり、女性が働いている農業法人などを巡ります。今後の開催予定は、ホームページで。女性就農者の声を載せた冊子「農業女子 Work Style]も発行。県振興局などで配布中です。
問 新規就業・経営体支援課 097-506-3586
県外で就職していましたが、自然の中での生活に魅力を感じ、妻と帰郷。当時の畜産試験場で研修を受け、実家の畜産業を継ぎ13年程になります。
管理できる頭数にするため、継いだ時よりも少し頭数を減らしていましたが、今は、母、私、妻、そして4月に帰郷した弟の4名体制となり人手が充実してきたことや県の和牛増頭の方針も踏まえ、飼育頭数を現在の約90頭から150頭規模まで拡大しようと考えています。
日々の作業は大変なこともありますが、少しでも楽になるよう、工夫しています。例えば、牛舎の構造では、通路を広くとることで、餌を機械で運べるようにし、負担を軽減しています。また、天井も一部透明な波板にして日光を取り入れやすくしています。牛の寝床が乾きやすくなり、牛の環境にも良く、床替えもしやすくなりました。
繁殖農家なので、離れた場所から牛の出産を監視する「分娩用カメラ」も設置しています。このカメラのおかげで、夜中の出産に備えて牛舎まで様子を見に行く回数が減りました。特に冬場は牛舎に行くと体が冷えて、その後なかなか眠れないこともあったので、大変助かっています。子牛に必要量のミルクを飲ませてくれる「哺乳ロボット」も使っています。
今後は、牛の首にセンサーをつけることで分娩も含めて行動観察ができるICT機器を導入しようと思っています。
AIや機械は便利ですし、便利なものは取り入れようと思っていますが、それだけでなく、今までと変わらず人や地域のつながりも大切にしていきたいですね。
この周辺には牛を飼っている方がたくさんいて、協力して作業する「地域の絆」があります。若手の後継者も増えている中、そういう風土を作ってくれた先輩方のことを伝え支えていくのも自分の目標です。
ムーパッド…県が支援し民間開発された、牛の繁殖を管理するスマートフォンアプリ。繁殖管理データを入力すれば、分娩予定日などをカレンダー化して表示。お知らせメッセージ通知や、分娩届などの書類もワンタッチで作成できる機能がついています。
牛温恵(ぎゅうおんけい)…県と民間事業者が共同開発した牛の分娩監視システム。分娩予定牛の膣内に温度センサーを装着し、「分娩24時間前」や「破水時」にメールで知らせてくれます。
どちらも繁殖管理の省力化につながります。