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少子高齢化や人口減少が急速に進む中、地方創生の加速前進には女性の活躍が不可欠であり、社会のさまざまな場面での女性活躍が求められています。
女性が働きやすく存分に個性と能力を発揮できる社会の実現に向けて、職場や家庭での意識を変革するとともに、業種業界ごとに抱える課題を解決するため、具体的な対策を一つずつ進めていくことが求められています。
今回は、女性活躍に向けた県の取組の一部と、さまざまな分野で活躍する女性をご紹介します。
「男は仕事、女は家庭」といった性別で役割を分担する意識が根強く存在しており、それが女性のみならず多くの人の働き方の選択を狭める原因の一つとなっています。
アンコンシャス・バイアスは誰にでもあるもので、それ自体が悪いものではないですが、そこから生まれた言動が誰かを傷つけたり、キャリアに響いたり、自分自身の可能性を狭めてしまうなどの影響があります。
「無意識の思い込み」と言われるもので、自分自身が気づいていない、ものの見方や捉え方のゆがみ、偏りのことをいいます。
例「血液型をきいて、相手の性格を想像する」
「女性は家事や育児があるので、営業職や管理職には 向いていない」
内閣府の「性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究」(令和4年8月実施)によると、回答者の76.3%に性差等に関する偏見や無意識の思い込みがみられました。
女性の活躍を推進するためには、固定的な性別役割分担意識を解消し、男女共同参画に関する意識を深め、定着させることが必要です。
このため、県では、アンコンシャス・バイアスについて、県民に「知ってもらう」「気づいてもらう」「対処・行動してもらう」ための取組を行っています。
令和4年度は、企業と一緒に、職場におけるアンコンシャス・バイアスの事例を深掘りし、その結果を広く啓発するための動画を作成しました。今後も引き続き動画などを活用して啓発を行っていきます。
育児期間中の女性は重要な仕事を担当すべきでない 男性1位(33.8%)/女性1位(33.2%)
組織のリーダーは男性の方が向いている 男性2位(26.1%)/女性2位(20.9%)
受付、接客・応対(お茶だしなど)は女性の仕事だ 男性3位(24.1%)/女性4位(18.3%)
大きな商談や大事な交渉事は男性がやる方がいい 男性4位(23.1%)/女性3位(20.9%)
仕事で成功していても、結婚をしていない男性は何かが足りないと感じる 男性5位(20.9%)/女性
5位(16.4%) 男性(回答者数:5452)/女性(回答者数:5384)
※回答者が自分の考えに当てはまるものを「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答したものの上位 令和4年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究 調査結果より抜粋(内閣府男女共同参画局)
問 消費生活・男女共同参画プラザ 097-534-2039
伸和建設株式会社(中津市)代表取締役 山本寛泰さん
当社は、建築工事及び土木工事の設計施工を行っています。
以前は、土木や建築関係の技術者は男性の仕事という雰囲気があり、実際に仕事も大変でした。しかし今は、ITも導入され、女性も活躍できる環境が整ってきています。
4年ほど前に、女性を採用する準備として、社屋を移転した際に女性専用トイレ・更衣室を設置するとともに、現場にも女性専用トイレを設けるなど、受け入れ体制を整えました。
また、技術者は短い期間では育たないため、看護師の常駐する企業主導型保育園を設置し、子育て中の技術者も安心して仕事ができるよう配慮しています。子育て中に職場を離れることなくキャリアを積み重ねられることは、企業にとっても本人にとっても利点があると考えています。
今後も女性を含めた若手の採用、育成に力を入れていき、一人前になってもらうまで、資格取得のサポートなど伴走支援をしっかりと行っていきたいと考えています。
(手前左) 建築部 比嘉亜依璃さん (手前右) 同部 佐野桃花さん (奥中央) 総務部 高島綾沙さん(採用担当、女性の働きやすい職場づくりに取り組む)
◎技術者の女性二人に伺いました
●アットホームで自分のペースで学んでいけるところが魅力です。
●子どもの急な体調不良で休まざるを得ないときも、サポートしてもらえる体制が整っているのがありがたいです。
●工期に左右されることはありますが、普段は自分のペースで仕事を進められるので、日々経験を積みながら資格取得に向けて取り組んでいます。
●現場というとブラックなイメージを持っていましたが、思っていたものとは違い、やりがいを感じています。
●後輩が入社した際には、技術面でも仕事以外のことでも親身になってあげられる存在でいたいと考えています。
○就農のきっかけ
夫の実家がいちご農家で、夫は実家で働いていたのですが、私は長女の出産まで別の仕事をしていました。長女の出産後、家の経営を良くしたいという気持ちが湧いてきたこと、家で仕事ができたら子どもと過ごす時間も確保できるのではないかと、思い切って就農することに決めました。現在は、経理や労務管理を担当して、夫と共に経営に携わっています。
○今後の目標
いちごは冬から春にかけて収穫するので、生果だけの生産では収入が一時期に限られます。通年で安定した経営を行うために、今後は規格外品の加工にも取り組みたいと考えています。
おおいたAFF女性ネットワークのいちご生産者のグループ立ち上げに関わりました。同じ志を持つ女性たちとのつながりに元気と刺激をもらっています。
○就農を考えている女性へ
農業は天候など、自分ではどうにもならないこともあるので、やりたいという気持ちを持ち続けることが大事だなと感じています。どんな仕事でも、忙しくても楽しめる、大変でも頑張れる働き方ができたらいいなと思っています。
『AFF』は、Agriculture(農業)、Forestry(林業)、Fisheries(水産業)の頭文字から取った愛称です。自身の経営や仕事を主観的・客観的に考え、農林水産業を“もっと自由に” “もっと楽しく”するために、交流活動や勉強会、情報発信等を行っています。
女性は、その感性や柔軟な発想、細やかな視点によって新たなビジネスを創造し、特に地域や社会の課題解決に繋がる商品・サービスを生み出す大きなポテンシャルを持っています。県では、これまで6年にわたり、女性起業家創出促進事業を実施しており、県内の創業件数の約3分の1が女性という実績も出ています。
今年度は、これまで築き上げられてきた女性起業家ネットワークをさらに強化し、女性起業家を対象としたセミナーやビジネスプランのブラッシュアップを行う事業成長プログラムの実施、地域企業交流セミナーや支援者であるサポーター企業とのマッチングを目的としたビジネスプラン発表会(FLY)を開催します。先輩女性起業家と女性起業希望者、そして、その支援者による起業家支援のエコシステム構築を目指します。
県では、多様な生き方の受け皿となる創業の促進と、次世代の県経済を担うスタートアップの創出・育成に力を入れています。県が公益財団法人大分県産業創造機構とともに実施している創業・スタートアップの施策をホームページに掲載しています。ぜひ、ご活用ください。
創業者が入居する個室や、利用者が自由に使える交流スペースも充実。セミナーやワークショップを開催し、創業者が切磋琢磨できる環境を提供します。
経験豊富なセンター長とコーディネーター3名が丁寧に対応します。
受付時間/平日9:00~17:00
所 在 地/大分市東春日町17-20 大分第2ソフィアプラザビル5F
電 話/097-534-2755
問 経営創造・金融課 097-506-3232
アップソイルカンパニー株式会社 (大分市) 代表取締役 中原ひとみさん
○起業したきっかけ
10年以上前から、ベランダガーデニングをしていますが、プランターの土を捨てられないことで悩み、また、子どもたちに美しい緑を残したいと考えていました。
土を回収してリサイクルする事業で起業ができないかと考え、自分の思いを社会へ問うために県が実施している女性起業家創出促進事業のビジネスプラン発表会にエントリーし、当日会場の来場者から一番共感を得た人に贈られるオーディエンス賞を獲得することができました。その勢いのまま、翌年度、県のビジネスプラングランプリに応募し、チャレンジ枠の最高賞であるベストチャレンジ賞を受賞することができました。日常生活の悩みから生まれたアイデアを形へ変え、その思いをたくさんの方に聞いてもらうことで、ビジネスへ向けたヒントを得ることができ、また、多くの協力者を集めることができました。その協力者のおかげで、商品化や、製造に関わる分析を実施することができ、今は、販売に向けて、準備を進めています。
○今後の目標
一般販売で成果が出たら、需要があると思われる都市部でもチャレンジしたいと考えています。
○起業を考えている女性へ
まず、アイデアの段階で、たくさんの人に話を聞いてもらうこと、話を聞いてもらえる場所へ出向くことが大事です。
次に、その場でもらえるアドバイスを基に自分のアイデアをブラッシュアップすること。そして、なぜ、自分がこの事業をするのかをしっかり考えることです。
最後にプレゼンテーションの練習を十分に行うこと。起業する際には、営業や協力者を得るために自分の思いを相手へ伝えることは必須になります。
私がチャレンジした県の女性起業家創出促進事業は、業種を超えた起業家同士や先輩起業家、協力してくれるたくさんの企業の方々とつながることもできるので、ぜひ挑戦してみてください。