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知事からのメッセージ 風紋 -VWと人事塞翁が馬

印刷ページの表示 ページ番号:0001001958 更新日:2015年1月30日更新

VWと人事塞翁が馬

大分県知事 広瀬勝貞

 新年の番組で、iPS細胞を創ってノーベル医学・生理学賞を受賞した山中伸弥京大教授と対談しました。

 別府の鉄輪にお祖母さんがおられて、小さい頃によく来たのだそうです。ノーベル賞学者が少年の頃入った温泉ということで「おんせん県おおいた」のブランドに磨きがかかったのではないでしょうか?

 山中教授は最初、整形外科医を目指しました。その時の経験で、難病に苦しむ方、医師も手の施しようのない重病の方を見て、こういった方々を治せないものかという思いが、後々、再生医療や創薬に大きな可能性を拓くiPS細胞の開発につながったと伺いました。

 お医者さんになるよう薦めてくれたのは、町工場を経営していたお父さんだそうです。お父さんにはもう一つ、体をつくるために柔道をやるように言われたそうで、「自分は父の言うことはただの2つしか聞かなかったけれど、今思うと2つとも実に有り難いアドバイスだった」と述懐しておられました。世のお父さんの責任重大ですね。

 山中教授の研究スタイルは、様々の研究所で色々研究して、あたかもらせん階段を昇るようにいろいろの分野をぐるぐる廻りながら、着地点に到ったような感じです。当の教授は、「しかしそれは、偶々何か実験すると、自分の予想とは正反対の結果が出る、それではと、今度はそちらの方をつき詰めてみる。そうすると結果的にぐるぐるまわっているんですよね。それも大事なんです」と言っていました。まさに教授の言われる「科学は驚きに満ちている。科学の面白さは、予想通りの結果にならないところにある」ということでしょう。

 山中教授が研究者として心がけていることは「VW」。ビジョンとハードワークだと伺いました。アメリカの研究所にいたとき、所長によく言われていたことだそうですが、何かをやろうとするときは、目標をしっかり定めて、それに向かって、力の限り努力することが大事ということです。

 いくらビジョンを持ってやっても、うまくいかないこと、行き詰ってビジョンの実現が可能なのか悩むことは誰しもあることと思います。山中教授は「人間万事塞翁が馬」というのも好きな言葉だそうです。私は、物事は運次第だとも言っているような気がして、あまり好きな言葉ではありませんでしたが、ハードワークを前提にすれば、ひとつの拠りどころにもなるし、前進の力にもなるのかもしれないと、少し思い直しました。

 アメリカと中国の言葉ばかりで、日本の言葉はないのかという方もいるかもしれませんが、そこは、このグローバルな時代、二つの国の言葉を肝に銘じながら、ノーベル賞をとったのは日本人、ということで三方を収めていただければと思います。
  

   県政だより新時代おおいたvol.98 2015年1月発行