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スイートコーンもぎとり式
大分県知事 広瀬勝貞
新型コロナ対策で外出自粛を含む厳しい自主規制をお願いいたしましたが、皆様にはご理解ご協力をいただきありがとうございました。おかげで状況は随分落ち着いてきました。皆様には久しぶりに外の空気を楽しんでいただいていると思います。私も早速、豊肥地区の田園風景を楽しみながら、竹田市菅生のスイートコーンのもぎとり式に出かけてきました。
豊肥地区は、大分県一の園芸産地と言われています。火山性の黒っぽい土壌をよく改良して様々な園芸作物が緑の葉を茂らせていました。豊後大野市千歳に、オリジナルのパフェが人気のお茶と軽食の店があります。名前を「グリーンブラウン」と言いますが、この地にピタリと決まっていると思います。
さて、菅生地区ですが、荻柏原地区等とともに待ちに待った大蘇ダムの供用開始を受けて、大野川上流地区畑かん営農(※)に取りかかっているところです。
この地区には、意欲十分の農業従事者が集まっているのですが、泣きどころは農業用水で、畑作は長い間天水のみに頼って、不便で不安定な農業をやってきました。そこで、昭和54年に農水省が農業用水の畑かんを造る計画を打ち出してくれました。ところが阿蘇の溶岩でできた土地だからか、完成に近づくと、「どうも漏水があるようだ」ということでやり直しがあり、ようやく令和2年に一応完成し、供用開始まできました。実に、計画が持ち上がってから41年かかったことになります。1世代2世代、場合によっては3世代かけて待ってくださった農家もあります。よく頑張っていただいたと思います。
何しろ畑かん営農と言いますか、畑に水をたっぷりやると大根、人参、白菜等の収量は概ね1.2倍くらいになります。収量が増えるだけでなく、戸別に給水栓を設けて、その管理も自動化すれば、一戸当たりの作付面積も大幅に拡大でき、そうなると機械化効率も向上しますから機械も導入できる。面積拡大、機械導入の好循環ができます。この地域の畑かん営農計画では、農業産出額は全体として令和元年は29億円ですが、10年後には50億円が見込まれており、頼もしい限りです。
こうして将来に大きな目標があるからだと思いますが、この地区は若い農業生産者が多く集まっていて、竹田市青年農業者KONT21等様々な勉強会を作って互いに切磋琢磨しています。私もここの若者と意見交換会をしましたが、堅実に目の前の課題に取り組み、元気いっぱいに将来を構想している姿に心を打たれました。ちなみに、令和2年大分県の新規就農者は過去最高の290人で、うち竹田市が26人、豊後大野市が25人でした。
もぎとり式に伺った農家も親子孫、3代にわたってそれぞれ独立して営農しながら(お孫さんは修行中)、必要な時は協力してスイートコーンをはじめ様々な園芸作物を作っていました。肝腎のスイートコーンはハウス栽培で、それだけに初夏の早い時期から晩秋まで作れるということで、近年この地区で急激に伸びてきており、今や大分県一の生産を誇るまでになっています。ご主人によると「ハウスでスイートコーンができるようになったのは畑かんで水が十分使えるようになったから」と、大蘇ダムの供用を大変喜んでいました。
仕事上?「試食」をしてみましたが、今年も甘くて、やわらかくて、それでいて噛んだ時のプリプリ感もあって上出来でした。
※畑かん営農
畑地の農作物を対象に、農業用水を安定的に供給して行う農業のこと
~県政だより新時代おおいたvol.137 2021年7月発行~