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ポストコロナのくらしと仕事
大分県知事 広瀬勝貞
大分県で初めて新型コロナウイルスの感染者が確認されたのは昨年3月3日でした。皆様にはもう1年近く感染拡大防止対策にご協力をいただいています。丁寧な手洗いやマスク着用から始まって、こと細かな注意事項をこれだけ長く遵守していただいていると、さすがに疲れもでてくると思います。ふとした気の緩み、油断も生じます。同じ市内に住んで親しく交流している数家族が健康状態を確認した上で会食したのですが、つい長引いてしまい、会食クラスターを起こしてしまったという例もあります。「このくらいは大丈夫だろう」という気持はよく分かりますが、折角ここまで気をつけ我慢してこられたのですから、もうひと頑張りお願いします。
他方、家に閉じこもって、不安をそそるようなニュース等を見ていると徐々に気持が不安定になって、つい怒りっぽくなったり、さらに悪くすると鬱の状態になったりということもあるようですから、是非、散歩をしたり好きなTVを見たり気を紛らわすことも忘れないでください。
私は正月、楽しみにしていた子や孫が誰も帰ってこないというので、一転楽しみの方向を変えて、司馬遼太郎「坂の上の雲」のNHKドラマ版を見ました。全巻ですから何日かに分けて、時々うちのパートナー相手に蘊蓄を傾けながら楽しみました。また、その代わりと言いますか、彼女の読んでいる塩野七生「ローマ人の物語」の何人かの英雄伝について読後感を「根気よく」聴かせてもらいました。丁度どこかの首相や大統領の交替期でこういう方々と比較しながらおもしろい議論ができました。
ウィズコロナ、なるべく人と人との接触を避けるようにと言われます。人との接触がダメなら野に出て自然と接触しようと散策も楽しんでいます。やっぱり日本人には自然があり、四季があって、そして年の移ろいが実感できるものなのだとしみじみ思います。
リモートライフもウィズコロナの賜物かもしれません。
私も時々ネットの家族会議を招集します。あらかじめ言っておけば対面ではなかなか実現しない全員参加が可能ですし、互いにネット画面に集中しているから、よく話し、よく耳を傾けます。孫の成長に驚いたり、子どもの活躍ぶりに感心したり、力いっぱい訓示を垂れたりと、充実した時間を持てます。
リモートワークも普及しました。通勤の時間は不要になるし、ネットで打合せ、指示すれば、あとはそれぞれ思いのままに分担をこなしていけるし、特に海外とやりとりする場合、時差の関係で夜中になっても自宅からだと支障ないし、仕事と家事との両立も格段にしやすくなると思います。
買物もインターネット販売が盛んになると思われますが、お店もそれに応じて体制を考えてビジネスチャンスをつくり出すことが大事になるでしょう。
リモートライフの環境が整ってくると、仕事は都会の会社を相手にリモートで、現実の生活は安全できれいで美味しい田園でという生活スタイルが流行すると思います。大分県では令和2年度UIJターンが1,300人を超える見込みで、もちろんこれまでの最高になります。
経済の動向を見ると、半導体や自動車それに産業用の素材など製造業は回復してきたようですが、観光関係のサービス業は直接コロナの影響を受けて苦戦のようです。どこかの研究所の調査では、今年お金をかけたいことの1位は旅行、2位は貯金、3位は外食だそうです。お客さんも待っています。旅館、ホテル、飲食店の皆さんも是非その日を目指して準備をしておいていただきたいものです。
~県政だより新時代おおいたvol.135 2021年2月発行~