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コミュニケーションを考える
大分県知事 広瀬勝貞
平成32年度から実施予定の大学入試改革では、思考力、判断力、そして表現力をしっかり見るのだそうです。よく考え、正しい判断をすることばかりでなく、それを他人に話し、理解してもらう力も問われることになります。
錦織選手の才能を開花させたマイケル・チャンコーチのことをご存じの方は多いと思いますが、アメリカではスポーツだけでなく、ビジネスや政治の分野でもプロのコーチングという仕事があるそうです。そんな一人、アンソニー・ロビンズという人が、コミュニケーションについて「あなたの話に相手から様々な反応が示されるが、それはあなたのコミュニケーション能力の結果だと思いなさい」と言っています。あの人にこんな大事なことを言っているのに理解してくれない、と嘆いたり、苛立ったりすることがありますが、そんな時まずは自分の説得力やコミュニケーションの力不足を反省すべし、ということです。
そのコミュニケーション、これも誰かが言っていましたが、耳から入ってくる論理の部分はわずかで、声のトーン、目の表情、顔つき、身振り、様々な要素が総合して説得力になるそうです。確かに「シッカリシロ!」という言葉も、言い方や表情で同情や激励になるし、逆に叱責にもなるものです。
それに相手が置かれている状況も大事です。ヤル気満々の時の注意の一言は効果的なアドバイスになりますが、落ち込んでいる時の注意はむしろ回復への妨げになります。ネットのやりとりでは、お互い状況のわからない中、表情のないやりとりで、下手をするととんでもない方向にエスカレートしていくこともあります。
かと言って完全に相手の状況を捉えて、逃げ道のないくらい論理的にやればそれでいいかというとそれもどうかということもあります。ここがコミュニケーションの難しいところです。我が家のパートナーは有り難いことに無料でコーチングをしてくれますが、ある時はガミガミ、またある時はガミガミガミとやられると、こちらも折角のコーチングですが、右から左に聞き流してしまう術を身につけたりします。時に持ち上げながら下げるから効果があるということも忘れないでほしいものです。
いろいろ申し上げましたが、良いコミュニケーションの基本はやはり、思考力、判断力です。よく考えられた自分なりの判断には説得力があります。
最近、そんな高校生と実り多いコミュニケーションをすることができました。大分県では毎年、小学生を500人程募集して「大分県少年の船」を仕立てていますが、この子どもたちには30人近い高校生の班長とその倍の中学生の副班長が付いて指導をしてくれます。今年も私は一緒に乗船させてもらい、子どもたちの眠った後に高校生の班長さんと「これからどんなことをしたいか」というテーマで話しをする機会をいただきました。正直、そのことについて高校生がどこまで考えているか疑問でしたが、さにあらず、世の中のこと、自分のことをよく考えながら、看護師、保育士、自衛官、国際協力隊、政治家-知事?、中学校の先生など具体的に挙げて話を聞かせてもらい、本当に嬉しくなりました。やはり普段から目的意識を持って考え、努力している人の話には、理解を越えて、感動がありました。
県政だより新時代おおいたvol.102 2015年9月発行