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テレワークとは、ICT(情報通信技術)を活用し、場所や時間を有効に活用できる柔軟な働き方を指し、リモートワーク、フレキシブルワークと呼ばれることもあります。
テレワークには様々なスタイルがあり、働き方で分けると「雇用型」と「自営型」、コワーキングスペース※1やサテライトオフィス※2などで行う「モバイル型」と「在宅型」の4つに分けることができます。
現在、「働き方改革」としてテレワークの活用が広まっており、生産性の向上や多様な人材の確保にもつながっています。
今回ご紹介する事例は、いずれも働き方改革の推進にテレワークを効果的に導入している県内事業所の優れた取組です。
働き方改革におけるテレワークの必要性や導入のメリットなど、ぜひ今後の導入の参考例としてご活用ください。
計6社紹介予定、随時更新します。
※1 コワーキングスペース・・・出張先等で仕事をするための他社共有型のスペース
※2 サテライトオフィス・・・企業または団体の本拠から離れた所に設置された自社オフィス
株式会社ナガヨシ
昭和14年、現在の豊後大野市緒方町に「長吉呉服店」として開業。その後、総合衣料品店である「ショッピングプラザナガヨシ」を開店。平成12年の介護保険制度の開始に合わせて県の指定居宅サービス事業所の指定を受け、福祉用具のレンタルや販売、住宅改修の事業を開始しました。現在は豊後大野市を本社に、県内外に8つの営業所を展開。在宅介護を住環境からサポートしています。
当時は販路拡大の課題があり、本社と離れた場所にある事業所との連携や、利用者の自宅に訪問する仕事内容もあったため、オンライン化には早い段階から取り組んできました。全営業社員にipadを支給し、会社の基本システムをクラウド上に構築していたことが、テレワークをスムーズに導入することができた要因です。
4年前からは自営型テレワーカーも活用し、業務効率化に取り組んでいます。緒方町内だけでは求人への反応が乏しかったため、大分県が主催するテレワーカーとのマッチングイベントに参加したのがきっかけです。テレワーカーに委託する業務は主に、スキルを求めない単純な事務作業と、介護保険の単価表の制作などの専門的業務の二つです。前者はマッチングイベントに参加した県内在住のテレワーカーや、家庭の事情で退職した元社員。後者はクラウドワークスで全国に募集をかけています。常時働いている自営型テレワーカーは7名で、専門的な知識が必要なときはスポットで募集しています。会社のホームページも、自営型テレワーカーに制作を依頼したものです。テレワーカーを活用する上で難しかったのが、仕事の要件定義でした。テレワーカーに依頼する場合には、どんな結果を求めているかしっかり伝える必要があります。今までの曖昧でも通用していた社内の要件定義を見直す、良いきっかけになりました。
テレワーカーへ発注するメリットは大きいと思います。業務を内製化すると、市場原理の競争が生まれません。外部のワーカーと社内のスタッフが同じ仕事をすることで比較対象が生まれ、仕事の質の向上を図れると思います。自営型テレワーカーを時間給で契約すると雇用とみなされるため、報酬単価の設定で悩むこともありますが、今後マッチングイベントに参加したワーカーが、一つの会社を設立するという話もあり、それが実現すれば時間単位での業務委託も可能となるため、期待を寄せています。
自営型テレワーカーへ委託するための環境づくりが、社内でのテレワークの推進にも繋がりました。特に昨今のコロナ禍では、すぐテレワークに移行できるシステムが整っているということは、大きな武器になっています。 コロナは終息に向かっていますが、今後もテレワークを推進し、テレワークで賄えない仕事は、社内に残さないつもりです。
現在、仕事上のやりとりにはサイボウズを利用しています。その他にもチャットワークやマイクロソフトのoffice 365など、汎用のクラウドシステムを組み合わせて使用しており、 介護保険の請求システムをクラウド化したこと以外、コストはほとんどかかっていません。このように、自社向けにオリジナルを用意するのではなく、既存のシステムを活用するべきだと思います。セキュリティや個人情報保護を考えても、データベースはクラウド上に設置する方が安全で、紙ベースで資料を持つことや、自社サーバーで管理することには紛失やウイルス感染の危険性があるため、マイクロソフトのセキュリティ以上の安全は確保しづらいと考えます。例えば、オンラインでの情報共有でもシェアポイントであれば、一定量以上の情報をダウンロードしようとしたら通知が届くことや、利用者に応じてデータベースへのアクセス権限の付与ができることもメリットです。
zoom によるオンライン会議はもちろん、あらゆる資料をデータベース化し、社内マニュアルをyoutube動画にして教育を標準化しGoogleForms上に設置したテストで取得状況を確認するなど、効率化や自動化に積極的に取り組んでいます。その成果は、前年比120%で推移している業績面だけでなく、社員の平均残業時間が月40分未満という、社員のワーク・ライフ・バランスの改善にも現れてきています。商品や価格、営業方法を真似することはできますが、効率化や教育の方法は時間をかけて作りこむ必要があります。
企業名 | 株式会社ナガヨシ |
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事業内容 | 福祉用具のレンタル・販売・住宅改修工事 |
設 立 | 1939年 |
所在地 | 〒879-6601 豊後大野市緒方町馬場31番地1 2F |
TEL | 0120-957-381 |
URL |
※ 2023年3月現在
株式会社くだものかふぇ
2003年、当時は三光村と呼ばれていた中津市三光のショッピングモールの一角で産声を上げ、果樹農家や関係者の多い地域ながら、「そのまま食べるよりもおいしい」との評価を得て、20年かけて九州全域に店舗数を拡大しました。フレッシュジュース専門店「くだものかふぇ」のフランチャイズ本部として、商品開発や店舗設計、加盟店への商材の卸売り、店舗の運営管理、ECサイトによる商品販売を行っています。また近年では店舗の開業支援コンサルティングや、カフェ向けの業務用商材の開発など幅広く事業展開しています。
現在従業員は4名。すべて女性で子育てをしています。入社時は子育てをしていなかった従業員が、次々に出産したこと、また私もひとり親として子育ての経験者で、子育ての大変さや自宅で働くメリットを理解していたこともあり、テレワークを導入しました。10年前にオンライン化のノウハウを活かしてテレワークを開始し、2020年にはリモートワークの就業規則を制定、労働基準監督署へ提出しました。多店舗化と海外進出で業務拡大する中、指導のオンライン化は避けて通れない道であったため、開業当時から、フルーツの切り方からミキサーのかけ方まで、動画によるマニュアル制作を行い、店舗で共有をしてきたことがテレワークの基礎となっています。
10年前はパソコンのスペックも低く、ソフトも充実していませんでしたが、限られた機能を利用してテレワークを開始し、現在でも数値管理を行うスクリプトなどは独自に組み上げています。HACCP(衛生管理のガイドライン)などは、店舗からスマホを介してリアルタイムで送られてきます。プラットフォーム自体はGoogleが無料配布しているものと全く同じです。既成のものを徹底的に活用することが、中小企業では重要だと思います。完璧を求めず、まずトップ自らが始めてみることです。そして今ある仕組みをもう少し検証してみると、更に効率化できるようになると思います。事実、チェック体制をオンライン化し、自宅にいながら確認できるようになっただけで、事業を行う上で大きな強みにつながっています。
タスクの共有もフリーソフトを活用しています。就業日毎にやるべきことを最小単位にし、付箋のようなもので共有して、1枚ずつ剝がしながら処理していくという方法を取っています。テレワークは、管理の目が行き届かなくなるため、従業員のモラルの低下や、モチベーションの状況によってはサボりやすくなるリスクがあると言われますが、仕事をガラス張りにし「見える」形にするのも有効な手段だと思います。また、テレワークを導入するなら、価値観の共有も必要であると考え、1日3回のオンラインミーティングを行っています。精神論だけの会社はダメですが、日々の具体的な目標が見えて、価値観が共有出来ていれば、自分だけがサボろうという考えが浮かんでこないと思います。オンラインではお互いが見えないから繰り返すことが大事です。ただしストレスにならないように、ITツールをはじめとする理論と、価値観共有などの理念のバランスには細心の注意を払っています。
テレワークの推進をする一方、「健康経営」にも取り組み、経済産業省の「健康優良法人2022ブライト500」に認定されました。昨年1年間の1人当たりの平均残業時間が1時間以内だったことが認定につながったのではないかと感じます。
移動時間などの時間と費用を大幅に削減でき、生産性の向上も見込めるテレワークは、労働時間の短縮にとても有効だと思います。就業規則では8時間労働のうち、10時から16時半までをコアタイムに設定していて、タスクを完了すれば、16時半で勤務を終了して良いと伝えています。労働時間の短縮に取り組むことで効率性や生産性がより向上し、現在はほとんどの社内手続きをオンライン化、簡素化した結果、テレワーク実施率は約70%、有給消化率は100%になりました。
小さな会社の良いところは、すぐに取り組めることです。中小企業こそ大きな改善の余地があると考えています。Web会議システムや、チャットツール、業務管理システムなど無料で提供しているツールを活用してみて、もし自社にうまく適合しないと感じたならそこがチャンスだと思います。大手が組んだシステムの多くは現在の社会情勢や仕組みに合わせて構成されています。その乖離が『事業的な特異性なのか』『自社の独自文化なのか』に気づくことが出来れば、自社の課題解決につながると考えます。
企業名 | 株式会社くだものかふぇ |
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事業内容 | 飲食・卸売業 |
設 立 | 2015年 |
所在地 | 〒872-0102 宇佐市南宇佐2167-6 |
TEL | 0978-37-0399 |
URL | https://www.kudamono-cafe.com/ |
※ 2023年3月現在
株式会社THINK-DO.BE
クライアント企業のバックオフィス業務、経理や人事、総務など仕事のデジタル化を推進することで、社内業務の効率化をサポート。また経理業務の代行や補助金、助成金などの提案や申請の支援を行っています。
2019年の創業当時から、テレワークやデジタル化の導入に取り組んでいます。テレワークが可能な業種だったのもありますが、通勤にかかる時間を業務に充てることができれば、生産性の向上が期待でき、スタッフの負担も軽減できると考えてスタートしました。翌年、新型コロナウイルスの感染拡大で、政府のテレワークやDX推進の動きも加速。結果として弊社の方針と、世の中の流れが合致しました。
テレワークを導入するにあたり、事前の情報収集はしていません。会計ソフト自体がクラウド化されるなど、働く場所を選ばない環境が整ってきた中で「自分たちの働き方」を考え、工夫しました。実際導入したところ、業務の効率化は実現できた反面、コミュニケーション不足に陥り、人間関係がギクシャクしたり、業務依頼がしづらくなったりするデメリットも。業務に関わることだけをテキストでやり取りする関係になってしまうと、人間関係の構築ができず、仕事に支障をきたすことがありました。そこで「完全なテレワークは難しい」という結論に至り、週一回は必ず顔を合わせ、同じ空間の中で仕事をするというルールができました。
現在出社するかしないかは、スタッフの判断に任せています。半数は事務所で仕事をすることを選んでいますが、それぞれ「どうしても自宅では集中できない」「印刷が必要だ」「ミーティングがしたい」などの理由があるようです。弊社では、別府市内に借りているコワーキングスペースの利用や、支給したWi-Fiを使って、公園やカフェなどで仕事をすることもできると提案しています。また、印刷する機会が多い業務の事務員には、プリンターを支給しています。
テレワークを導入したことが、会社のブランディングにつながったという実感はあります。就職活動をしている人には、「在宅で働ける」ことは魅力的に感じるようです。子育て中の女性スタッフも、その点に魅かれたと言います。現在、自営型テレワーカーなど、個人事業主20人ほどに業務を委託していますが、子育て中の方が多いことからも働く方のテレワークに対する需要がうかがえます。
お客さまとの時間が、より確保できるようになったこともメリットです。今までは、社内での入力業務などに多くの時間を割いていましたが、それらをテレワークで行ない、デジタル化によって入力作業そのものを減らすことができました。結果として、顧客満足度が上がり、新たな受注につながるなど大きな成果が上がっています。
一日の時間の使い方も工夫しています。弊社の就業時間は一般的な企業とは異なり、7時~16時になります。「頭を使う仕事なので、脳がよく働く午前中を大切にしたい」という考えと、出社する場合も渋滞に巻き込まれないというのが狙いです。昼休憩も11時からなので、ランチタイムの混雑を避けられます。無駄な時間を過ごさないと意識することで、一日30分から1時間の時短が期待でき、その時間をプライベートの充実や、試験勉強などキャリアアップのために充てることができます。
現在新たに導入中なのが「ワーケーション制度」。在宅やレンタルオフィスではなく、働きながら休暇を取る過ごし方です。もちろん事前申請は必要で、行動計画書などを提出してもらいますが、移動時間も公共交通機関などを利用する分には就業時間としてみなしています。
今は「業務効率化」を重視して、テレワークや就業時間などを会社から提案している状態。「やりづらい」とか、「こうしてほしい」などという意見もあると思います。そのような口にしづらいことも言える環境づくりを整備していくことが、これからの課題です。「働き方改革」は一緒に作り上げていくもの。双方にとって良い環境でないと、スタッフはついてきてくれないと考えています。 また、弊社は他の会社にデジタル化を推進していく立場ですが、デジタル化に必要な技術ばかりではなく、まずは現在の働き方に対する無意識の思考パターンや固定化された考え方の変革など、企業自身の意識改革から手掛けていきたいです。
企業名 | 株式会社THINK-DO.BE |
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事業内容 | 企業経営コンサルタント、総務業務請負、DX化サポート、 資金調達支援 |
設 立 | 2019年 |
所在地 | 〒870-0938 大分市今津留2丁目1番27号 ラトゥール今津留302 |
TEL | 097-535-8311 |
URL | https://www.think-do-be.jp/lp/index.html |
※ 2022年12月現在
株式会社 古城
2022年度で創業70周年。建設及び測量設計業様へのデジタル化ご支援(建設ICTグループ)と一般企業様へのDX化ご支援(TXチーム・DX推進チーム)という二つの事業を柱として、デジタル化への取組に邁進、地元企業の皆さんの発展に貢献する会社を目指します。
テレワーク導入への取り組みは以前から少しずつ始めていましたが、新型コロナウイルス感染拡大で一気に拍車がかかりました。まず社内環境の整備からスタートしようと、ビジネスチャットツールを導入し、テレワークをする社員も、出社する社員も、スムーズに連絡が取り合える環境を作りました。さらに、全社員に会社のスマートフォンを貸与したことで、セキュリティー面でも安心して進められるようになりました。
社内では業務担当の女性社員4名が、事務や外部からの電話対応などを受け持っていますが、彼女たちが交代でテレワークを取り入れることができる環境作りにも取り組んでいます。まず会計の基幹システムをクラウド化して、どこからでもデータを取り出せるようにしたこと。さらに、お客さまからの電話を会社貸与のスマートフォンを使って自宅で受け、社長や営業担当者に内線のような形でつなぐことができる仕組み作りも現在進めているところです。スマートフォンなどの設備投資には、大分県の「中小企業等テレワーク導入推進事業補助金」を活用させていただきました。
営業の仕事は比較的テレワークが取り入れやすいため、コロナ感染者が急増した際に推奨して、進めてきました。事前に必ず申請書を提出し、「どういう理由で、何の業務をテレワークで行うのか」ということを明確にした上で、生産性の上がるテレワークに取り組んでいます。テレワークを取り入れることで、自宅からお客さまの所に直行したり、会社から持ち帰ったパソコンで見積書や提案書を作成して送ったりすることもでき、必要な場合は営業車の貸与もしています。書類のペーパーレス化にも挑戦中で、まず社内文書から取り組んでいるところです。 テレワークのスケジュールについては、チャットツールを使って各グループのマネージャーが社員の希望を聞き、営業と業務担当で連携を図りながら、毎月のスケジュール表を作成。それを全員で情報共有しています。
テレワークを進めてよかったことは、社員全体に時間管理の意識が出てきたこと。特に営業は、移動距離が短くなり、打ち合せもオンラインで行うことで仕事の効率が上がって、残業時間も大幅に短縮できました。遠方から通勤している社員は、通勤の負担が減って助かっています。道路が渋滞する時間帯の通勤を避けたり、半日だけ休んで子どもの学校行事に参加したりするなど、多様な働き方・休み方ができるようになったのも、テレワークの影響が大きいと思います。このように残業時間は短縮しながら、コロナ禍にもかかわらず毎年増収・増益が達成できており、最終的には「残業時間ゼロ」が目標です。
またテレワーク導入のおかげで、リクルートにも予想以上の反響をいただいています。今は「テレワークができる会社しか選ばない」という学生も多いので、今後はテレワーク(弊社では「スマートワーク」という言葉を使っています)への取り組みを、会社PRの一環として発信していきたいと考えています。
テレワークを利用して業務を進める上で大切なのは、情報共有体制を確立すること。現在、データベース型の業務アプリを構築するクラウドサービスを利用して、社員全員が過去のデータをほしい時に取り出し、商談などに活用していく取り組みを始めています。全体朝礼やマネージャーの朝会などはすべてリモートで行っていますが、そんななかでリアルなコミュニケーションをどう図っていくかが課題。チャットツールだけでは難しいので、今後はワンオンワンミーティングを活性化していきたいと考えています。2022年8月には経済産業省のDX認定を取得し、社長が社員に向けて、会社は何のためにDXを進めるのかというプレゼンテーションを行いました。私たちが将来目指すものは「ウェルビーイング」、すなわち社員の物心両面の幸せです。働き方改革はその一環であり、テレワークはそのための一つのきっかけと考えています。
今後テレワークの導入を目指す企業の方も、テレワークのやり方を社員に伝えるだけでなく、最終的な会社のビジョンを伝え、なぜテレワークなのかという理解を促すことが大切だと思います。また必要最低限の機材を会社から貸与できる環境を作ってあげることも必要。今はさまざまな補助金もあるので、アンテナを張って情報をキャッチし、ぜひ挑戦していただければと思います。
企業名 | 株式会社 古城 |
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事業内容 | 建設・測量ICTソリューション、DX化 |
設 立 | 1952年 |
所在地 | 〒870-0026 大分市金池町5-2-2 (本社) |
TEL | 097-533-1196 |
URL | https://www.kojoh.co.jp |
※ 2022年11月現在
伸和建設株式会社
河川改修や橋梁工事などの土木工事から、住宅や病院、学校などの建設工事の企画・提案・設計・施工までトータルで請け負う総合建設業。グループ会社では特別守る老人ホームなど介護事業にも進出、確かな技術で街の将来を作り続けています。
現場監督の仕事は、文字通り工事現場が主な仕事場となります。現場を重視してほしいという工事発注者の意向もあり、朝8時の朝礼から17時、18時の終業まで、ほぼ現場にいます。現場監督業務の空き時間では処理しきれない提出書類作成や、会社に戻らなければできない書類の印刷などがあり、それらの作業が滞ると工事全体の工程に影響を与えてしまうのが悩みの種でした。しかし、土木工事の施工管理をサポートするシステムの存在を知り、会社に導入を進言しました。大分県のテレワーク助成金や、サテライトオフィスにおける働き方改革のための支援が受けられるタイミングだったのもラッキーでした。
ソフト導入後は、写真を撮影する、作った構造物の長さと幅、高さを入力するなど、簡単な入力を一度行うだけで、さまざまな図表をソフトが自動的に組み上げてくれます。受注した時に作成する施工計画書から出来形管理図表まで、連動して組み上がるのはとても助かります。度数表やヒストグラムなども、都度入力しなくてもソフトが自動的に作ってくれるので、私の感覚的には作業時間が半減したように思います。オプション機能の中にあるCADソフトのように、従来のものと操作が微妙に違い、一から習得し直さなければならないものもありましたが、効率的に仕事ができるようになったので満足しています。このタイミングで会社から一人一台のパソコン貸与が行われ、それぞれにプロダクトキーを購入してもらえたので、会社に戻ってライセンス認証をし、印刷をしてまた現場に戻るといった非効率的な作業をすることもなくなり、現場によっては、会社との往復で最大2時間も時短できるようになりました。
現場の工程は、一つできあがったら発注者による検査が入るといった具合に、段階的に進んでいきます。書類作成から検査のステップが円滑に進むことで、職人さんからは「無駄な待機時間がなくなり、現場に常駐できるようになった」「現場を掛け持ちする必要がないので、準備や道具の運搬の手間が減った」など、変化を歓迎する声が上がっています。弊社としても、人手不足の昨今に職人さんを確保でき、多くの職人さんが弊社管理の現場に継続して参加してくれることを、大変ありがたく思っています。
(写真=「土木工事の管理一式を効率化するソフトですが、まだ導入できていない機能もあるので、さらに勉強してフル活用できるようになりたいです」と平山さん)
会社全体で働き方改革を推進していくなかで、勤務時間や出勤日数などオーバーワークにならないように、人員配置や仕事バランスについて細かく指導をしてきました。しかし現場の作業は天気に影響されるため出勤日数が増えがちで、総務など事務方の仕事が年間休日105日なのに対して工務部は87日と差があり、大きな課題となっていました。しかしシステムの導入により作業が効率化され、工期の短縮ができたことで、すべての社員が年間休日105日という目標を達成することができました。工期短縮に伴い、工事機械のリース代をはじめとする経費が削減されたのも大きなメリットになります。テレワークで課題とされるコミュニケーションですが、もともと現場仕事が主なため希薄になりがちということもあり、レクリエーションなどを取り入れて補っていました。しかしグループ会社で特別守る老人ホームなど福祉施設を経営しており、そこの社員との兼ね合いもあってコロナ禍の現在、県外に出たり、会食したりできないためコミュニケーション不足が新たな課題となっています。
(写真=ここでは国家資格の取得サポートも万全。「資格を持つことにより、会社に貢献できるのはもちろん昇給もできます」と建設業経理士2級を持つ高島さん。)
企業名 | 伸和建設株式会社 |
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事業内容 | 建築工事及び土木工事の設計施工 |
設 立 | 1979年8月6日 |
所在地 | 〒871-0025 中津市大字万田648番地1 |
TEL | 0979-23-7733 |
URL | https://www.shinwa-kensetsu.info/ |
※ 2022年11月現在
株式会社ザイナス
株式会社ザイナスは、AIやI0T、衛星データなどのシステム開発、ソフトウエア開発を中心に最近では防災、減災のプラットホーム作りなどにも対応。また、2021年6月に教育事業部を立ち上げるなど、さまざまな分野での情報通信業を行うIT企業です。東京にも本社があります。
今回、会社の採用に携わる、人事部チームリーダーの薬師寺さんにお話しを伺いました。
コロナウイルスの蔓延をきっかけに2020年1月頃からテレワークを導入し、東京本社の社員が全員テレワークを始めたことで全社に広がりました。元々テレワークに対し積極的に取り組んでいたわけではなかったので、スタート時は知識もなく、右も左も分からない状態。部長クラスを中心に推進チームを立ち上げ、テレワークをする上でのリスクとして考えられるものを洗い出しながら、手探りで規定規程を作っていった状況でした。
具体的には勤怠管理システムに新たにテレワークというチェック項目を設け、在宅勤務規程を作ることで、自宅の水道・光熱費、通信費を按分するようにしました。これまで持ち出しを許可していなかったパソコンも、セキュリティソフトを導入し、持ち出せるようにしています。セキュリティを担保した状態で社外から社内ネットワークにアクセスできるVPNを増設し、それと同時にクラウド化を現在も進めています。
テレワーク実践のポイントは「社員を信じること」。さまざまな不安はありましたが、従業員を信じて導入したところ、想定したような不都合は起こりませんでした。弊社では社員のアウトプットを重視しているので、管理ツールなどは不要だと考えています。ただ生産性が上がらなかった場合には、原因を探ることは必要だと思います。
現在、特にIT企業ではテレワーク不可での採用が難しくなっています。弊社はテレワークを導入してから採用の幅が広がりました。テレワークやフルリモートという働き方に魅力を感じての応募が増え、UターンやIターン就職、長野、北海道、アメリカからなど、国内外遠方在住のフルリモート社員も在籍しています。海外在住でもスキルがあって日本企業に勤めたい、日本人と仕事をしたいという希望を持った優秀な人材を取り込めるようになってきました。テレワークで働きたいというニーズに対し、柔軟な対応ができるということが、企業の価値向上につながると思います。 (写真=コレジオ大分1Fコワーキングスペース「OWNSPACE」では社員がリモート会議やテレワークをすることもあります。)
新入社員の中には、一度も他の社員と顔を合わせたことがないという事例があります。また採用面でも、オンラインでの面接ではなかなか人柄がつかめず、研修後は仕事への取り組みをリアルで見ることができないためフォローが行き届かず、残念ながら退職に至ったケースもあり、フルリモートでの採用の難しさや課題を感じています。働き方に関しても、スキルがない人にはフルリモートは難しいことに加え、教育やコミュニケーションの問題もあり、東京本社に比べて大分本社では若手社員にかなりの頻度で出社してもらっています。
現在日常的にテレワークを行っているのは全体の1/3程度なので、今後は社員にテレワークという選択肢があることをさらに周知させなければなりません。大分でも週2日テレワークを推奨している部署もあります。そういった動きを各部署に広げていきたいと思っています。
一方、対面でのコミュニケーションを大切にしたいというテレワーク未経験の社員もいますので、働き方を選べるようにしています。退職希望者を引き留める目的で提案するのではなく会社の制度として、個々の考え方やライフプランの変化に合わせて、多様な働き方として提示していきたい。そのような相談に対して、社員のスキルに合わせたテレワークの提案ができるように導入を推進しています。
テレワークを働き方の選択肢の一つとして捉え、まずは無理をせずできる ところから小規模で始めてみるのがいいと思います!
企業名 | 株式会社ザイナス |
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事業内容 | システム、ソフトウエア開発 |
設 立 | 2000年5月 |
所在地 | 〒870-0839 大分市金池南1-5-1 コレジオ大分5F |
TEL | 097-547-8639 |
URL | https://zynas.co.jp/ |
※ 2022年10月現在