epi.67 働く女性応援企業　大分第一交通株式会社を取材しました！

「大分第一交通株式会社」は、タクシー業界最大手である第一交通産業のグループ会社です。大分県内に10カ所の営業所を構え、全国展開のノウハウを生かした地域密着型のサービスを提供しています。地方や郊外の人口減少により路線バスの減便や廃止が進みつつある中、高齢者や障がい者などの移動機会の確保に貢献。また、「ママサポートタクシー」や「子どもサポートタクシー」など独自のサービスで、多様化する需要に対応し、地域社会の発展に寄与しています。

3年前、大分第一交通株式会社に入社した佐々木惠さんは高松営業所に所属し、タクシードライバーとして活躍しています。昔からバイクなど乗り物が好きで、以前はトラックドライバーとして勤務した経験もある佐々木さん。運転業であると同時に接客業でもあるタクシードライバーは、コミュニケーション能力が高い彼女の性分に合っているそうです。現在の勤務形態は、1日に2日分に相当する19時間勤務し、業務終了後は丸一日のインターバルを取る「隔日勤務」という特殊なもので、大半のドライバーが選択しています。「子どもが2人とも成人していることと、主人が深夜帯の仕事にも理解を示し、家事などを協力してくれるので仕事を頑張れます」。

基本的にタクシードライバーの仕事は「歩合制」で、がんばった分だけ本人の成果になるのも大きな魅力。会社に所属していても、個人の裁量を広く認められているタクシードライバーは、一般の会社に比べ勤務時間の融通が利き、原則的に残業がないので、家事や育児などの時間を確保したい女性にはおすすめの仕事だと言います。なかでも第一交通産業グループは、国土交通省の「女性ドライバー応援企業」に認定されるなど、女性が働きやすい環境が整っているそうです。「今までいろんな仕事をしてきましたが、大分第一交通ほど、なんでも相談できる会社はありませんでした。社長にも『いつでも社長室に来ていいよ』と言われています」。

佐々木さんがいきいきと働く姿は家族にも影響を与えたようで、なんと長女もタクシードライバーとしてデビューし、今では母親と同じ車両に日替わりで乗車しています。また長男もタクシードライバーを目指し、現在二種免許取得のため研修中だそうです。「お客さまからの『ありがとう』が一番のやりがいに繋がっています。『ママサポートタクシー』の研修を受け、出産を控えた妊婦さんの送迎も担当したことで、お客さまの命を預かっているという責任感をより感じるようになりました。今はカーナビに頼らなくても一番近い道が選べるようになれるよう勉強中です。タクシードライバーだけが知る裏道も覚えていきたいです」と佐々木さん。その真摯な仕事ぶりにファンも急増中で、指名依頼を受けることも多くなっているそうです。

「少子高齢化による人手不足への対応と、多様化するお客さまのニーズに応えるため、積極的に女性ドライバーを採用しています」と早瀬社長。「ママサポートタクシー」では、助産師会の先生による研修を受けたドライバーが、防水シーツやバスタオルなど「救急セット」を用意してお迎えに上がりますが、最も利用者の不安に寄り添えるのは、育児経験者であることは間違いありません。また保護者の代わりに子どもを塾や保育園などに送迎する「子どもサポートタクシー」の利用者にも、女性ドライバーを指名されることが多いと言います。

現在、女性ドライバーの比率が11％と、全国平均の倍以上である大分第一交通株式会社。その秘訣を尋ねると、「女性が働きやすい環境の整備」という回答が得られました。営業所に女性用トイレや更衣室を設置するのはもちろん、売上に左右されることのない完全固定給や、隔日勤務ではなく日勤や夜勤など、働き方の選択制も導入。ライフスタイルに応じて細かく勤務時間を選べるので、働き方の柔軟性は他の業種以上だと胸を張ります。また乗務中の車両の現在地をGPSで把握し、車内外をドライブレコーダーで常時記録。身の危険を感じた時に周囲や会社に知らせる防犯スイッチや、催涙スプレーを常備するなど防犯対策が充実していることも、女性の定着率が高まる要因になっています。2023年9月には、大分市に拠点を置く他のタクシーグループと共同で「合同女子会」を開き、女性ドライバーの意見を吸い上げ、さらに女性が働きやすい職場環境へと改善する取り組みも行っています。

「タクシードライバーは、女性や未経験者でも始めやすい職業です。タクシードライバーとして働くには二種免許が必要ですが、全額会社負担で取得できます。免許が取得できない人や断念する人はほぼいません。免許取得後10日間は、接客の研修も行っています。もちろん研修期間中にも給与は発生します。女性でも運転しやすい小型車両も導入し、全車カーナビを搭載しているので、運転や地理への不安もありません」と早瀬社長。 給与面や労働環境の改善が進み、格段に働きやすくなりつつある「タクシー業界」。女性に限らず、転職先やセカンドライフの選択に選ぶ人も増えてきているそうです。