epi43.働く女性応援企業　有限会社ヴィーナス美容室を取材しました！

有限会社ヴィーナス美容室は、大分県における美容業の草分け・河野シヅ子氏により、戦後間もない1946年、現在地に開店しました。以来75年、美容業界のトップリーダーとして、最高の技術と最良のサービスを提供し続けています。現在は美容室2店舗とブライダルサロン1店舗を展開し、総勢40名のスタッフが実力を発揮しています。

創業者が掲げ、スタッフが毎朝唱和する「5つのことば」は、単に技術者としての美容師育成にとどまらず、総合的な人間力を身に付ける全人教育に基づいた行動指針です。わかりやすい言葉で、美容師として、人間としての成長をうながし、誇りをもってのびのびと働くプロを育んでいます。

＜5つのことば＞

◎育ててもらって育ったら、育てて返す心を忘れません。

◎してあげるのではなく、させてもらう心を忘れません。

◎自分を信じ、自分に自信を持ち、その自信というエネルギーを社会のために使います。

◎時間つぶしの仕事はしません。時は金なり、命なり。

◎自分が楽しくなるように、そして周りが楽しくなるような仕事を心がけます。

人事担当として、スタッフが快適で意欲的に働ける環境づくりを進めているのが、嶋本亞未子さんです。創業者・河野シヅ子氏の孫娘、また嶋本晃大社長の娘として、創業のスピリットを受け継いで時代に即した職場環境をいかに整備するか、考え続けています。「ありがたいことに、お祖母様、お母さま、お嬢さまと、3代にわたり通ってくださるお客さまは珍しくありません。お客さまに育てられた75年間の結果として、今の私たちがあります」と語る、嶋本さん。

ヴィーナス美容室では、カラー、カット、パーマ、シャンプー、スタイリングなどすべてにおいて最高の技術を提供し、決して水準を下げないことを大切にしているそうです。もちろん一つひとつのシーンに、小さな気くばりを忘れないのは言うまでもありません。 社長以外はすべて女性という職場で、嶋本さんは女性のライフステージに合わせた柔軟な対応を心がけています。 「結婚や出産、子育てを理由に離職せざるを得ない事態には決してならないよう、産休や育休はもちろん、復帰後の時短勤務や急な早退にも柔軟に対応できるサポート体制を整えています」。

それぞれの事情に合わせたサポートで、子育てなどプライベートと仕事のバランスを考慮しながら、女性が安心して長く働き続けられる職場づくりに取り組んでいます。 創業者の河野シヅ子氏は、戦争未亡人が手に職をつけ、働いて子どもを育てていけるようにとヴィーナス美容室を立ち上げたのだとか。その志は今、嶋本さんの心にしっかりと引き継がれ、より良い職場づくりに生かされています。

嶋本さんの妹で、同じく創業者の孫娘である好田千春さんは、介護の仕事から転身して家業に携わるようになりました。美容師になって11年。現在はブライダル部門のプレイングマネージャーとしてマネジメントをしつつ、現場でメイクを担当しています。 「お客さまの人生の、大切な1日に関わらせていただける素晴らしい仕事です。人からも｢良い仕事ですね｣と言われ、本当にそうだなと実感する瞬間がたくさんあります。だから、その日がお客さまにとって生涯素敵な記憶になるよう、心して仕事に臨んでいます」と笑顔を見せる好田さん。

ママでもある好田さんは、妊娠8カ月まで仕事をして、産前産後5カ月の産休を取りました。もちろん他のスタッフはもっと長く産休を取っているそうですが、好田さんは保育園が見つからないまま子ども連れで出勤し、時短勤務でいち早く復帰したそうです。 「1歳になってようやく保育園が見つかるまで、うちの子は仲間たちに育ててもらいました(笑)。もちろんイレギュラーな対応ですが、そんな柔軟性がある会社でもあります」。

大分を代表する美容室だけに、技術力だけではなく人間性を育む教育には定評があります。大切に人を育て、一人ひとりを全力でサポートする風土から、美容業界では珍しく定着率がとても高いそうです。 「技術を身に付けるのはもちろん、楽しく働きたい方に自信をもってお勧めしたい職場です。祖母の志、父の思い。どちらもしっかりと根づいているので、安心して長く働き続けられます」と、好田さんは目を輝かせ語ってくれました。

増村理恵さんは、創業者の河野シヅ子氏が初代学校長を務めた「明星美容専門学校（現・明星国際ビューティカレッジ）」を卒業して、ヴィーナス美容室に就職しました。当時、社会保険など福利厚生まで完備した美容院は少なく、安心して働ける点や、体験入社で感じた雰囲気の良さ、総合美容室として意欲的に新技術へ挑戦する気風に惹かれ、入社を決意したそうです。入社後は12名の同期で切磋琢磨しながら技術を磨き、サロンの店長を任されるまでキャリアアップしました。

「その後、家庭の都合で県外に転居することになり、後ろ髪を引かれる思いで退職しました。出産を機に大分に戻り、5年間のブランクはありましたが、戻っておいでと声をかけてもらい再入社したのです」と、当時を振り返ります。再入社して12年ですが、それ以前の社歴を含めると21年。現在は杉乃井ホテル店を拠点に、ブライダル事業のリーダーとして活躍しています。

創業者の河野シヅ子氏は、90歳まで現場に立ち続けたそうです。だから、ヴィーナス美容室に定年はありません。向上心がある限り、生涯現役として働き続けられます。 「今は若い頃のエネルギッシュさとは違うスタンスで、自分らしく仕事をしています。健康を保ち、1日でも長く現場に立ち続けたい。社内には個性的でさまざまなタイプの仲間がそろっています。彼女たちから刺激を受けて自分を高め、互いに良い面を引き出し合いながら頑張っていきたいですね」と語る、増村さん。プロとしての誇りと、母として、女性としての自信に満ちた表情が、とても印象的でした。