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建設業の未来を見つめて
「鬼塚電気工事株式会社」は1955年の創業以来、地域に根ざした電気工事業者として、家庭や小規模施設の配線工事から、商業施設や公共施設の大規模な電気設備の設置・保守・修理まで、幅広く対応してきました。2021年には、ZEB(省エネや発電を通じて、年間の消費エネルギーの収支がゼロになる建築物)プランナーとして登録され、脱炭素社会を目指すショールームや地域の防災拠点としての役割も担う新社屋を建設するなど、社会的な課題を事業機会に捉える経営に挑戦しています。
営業部に所属する白岩晴花さんは、2024年の新卒採用社員です。電気設備工事を行う物件の非常灯や誘導灯の図面への書き込みや、既存の照明やコンセントの設置場所を現地調査する仕事を行っています。また部署の垣根を越えて構成される広報チームの一員として、SNSを活用したPR活動にも取り組んでいます。
文系学部出身の白岩さんが、理系企業である「鬼塚電気工事」を選んだのは、「働きやすさ重視」の就職活動を行った結果でした。同社が文系出身の女性社員を積極的に採用し、入社後の教育や資格取得の支援を評価され「おおいた女性活躍推進事業者」として表彰されていることが入社の決め手となりました。社長自ら会社説明会に参加し、人見知りの白岩さんをリラックスさせる言葉をかけてくれたことも印象的だったと言います。
入社後は人間関係の良さに驚いたという白岩さん。同社のオフィスフロアは広々としたワンルームで、自然とコミュニケーションが促される設計になっています。周囲の社員が積極的に声をかけてくれ、困った時にはサポートしてくれるので、新入社員の白岩さんにとって心強く感じられる職場環境だそうです。
また、同社では服装や髪色、ネイルなどに厳しい規定がないことも働きやすい環境づくりに一役買っています。「仕事に支障をきたさない範囲でおしゃれを楽しんでいる社員が多く見られます。前向きな気分でいられることが、仕事にも良い影響を及ぼしています」と話します。
今後の目標を「公式SNSを通じて、若い世代にも鬼塚電気工事に関心を持ってもらうこと」と語る白岩さん。特に社員の「人の良さ」を伝えることで、この会社で働きたいと思う人を増やしたいと意気込んでいます。
齊藤秀香さんは、2024年8月に中途入社しました。以前は東京の映像関連の会社に勤務していましたが、2019年に帰郷。社員の高齢化で廃業となった家業の学校給食事業を、事業終了まで支え続けました。廃業後、2歳の子どもを育てながらの再就職先に「鬼塚電気工事」を選んだのは、「事業の枠にとらわれない幅広い活動をしている会社で、面白そう」と感じたからでした。
炭素活動や防災活動にも取り組み始め、地域の人々と社会課題を共有する必要性を感じていた同社にとっても、映像制作スキルを持つ齊藤さんは、求めていた人材だったそうです。現在は白岩さんと同じ営業部に所属し、会社の業務内容の把握に努める傍ら、広報チームにも参加しています。
齊藤さんは会社から、「子どものことを優先的に考えていい」と言われているそうです。そのおかげでお迎えに遅れないように退社できるほか、同僚も子育てへの理解があるため、急な体調不良にも柔軟に対応できていると言います。さらに時差出勤制度もあるため、お迎え時間が早まる日には、勤務時間帯を前倒しすることで対応できています。齊藤さんは「家業の時のように自由度の高い働き方ができるか不安もありましたが、支障なく子育てを続けられています」と安心した様子です。
今後は「第二種電気工事士」の資格試験に挑戦したいと語る齊藤さん。同社では、現場で働く社員はもちろん他部署の社員も仕事に役立つ知識として、多くの人が入社1年以内にこの資格を取得していると知り、意欲を燃やしています。資格手当や報奨金の支給に加え、試験前の個別指導など資格取得のためのサポートも充実しているため、子育てをしながらでもキャリアアップを考えることができるところが魅力的な会社だと教えてくれました。
尾野文俊代表取締役社長は、2012年に社長に就任しました。従来の理系男子中心の採用活動を見直し、文系学科出身者や女性の積極採用へと転換しました。その決断の背景には、建設業界の将来への不安があったと言います。「建設業界は人手不足に直面しています。データによると55歳以上の労働者が36%以上を占める一方、次代を担う20代の若手労働者は10%程度しかいません。この状況を打開するため、広範な人材の採用が必要だと考えました」。
その第一歩として、まずは「働きたくなる」新社屋の建設に取り組みました。1972年に建設された旧社屋は社員30~40人を想定して設計されており、男女共に便器が一つしかないという状況でした。現在の120人を超える社員を収容することはできず、部署ごとに所在地が分散させるなど、とても選ばれる会社とは言えませんでした。
そこで新社屋では機能性、快適性、創造性を高めるデザインを模索。木材をふんだんに使用することで、木の温もりや自然の美しさに溢れ、CO2の削減に寄与するだけでなく、木のもたらす心理的・生理的効果も享受できるオフィスを作り上げました。機能面でもCASBEEウェルネスオフィスのSランク評価の認証や2022年度の日経ニューオフィス賞を受賞するなど、高い評価を受けています。
また、男女共に子育てや介護、持病などそれぞれの事情に合わせて、「辞めずに働き続けることができる会社」になることも目指し、独自に対応しているのが特徴です。ここ5年間で女性社員の数が6人から21人と大幅に増加するなど、急激な社内環境の変化に対応するためには、「一緒に解決すること」が重要だと考えています。その結果、現場仕事中心の会社でありながら、在宅勤務が導入されるなど、社員の求める働き方の柔軟性も高まっています。
最後に、採用活動の広範化にあわせ、育成にも力を入れました。キャリアアップ面接を年に一度実施し、どのように成長したいのかをヒアリングしています。特に入社3年目までは社長面接を行い、仕事だけでなく、それぞれの人生においてどのように「自己実現」したいのかを話し合い、全力でバックアップ。尾野社長の「自己実現を応援できる会社が、社員が長く働き続けたいと思える会社になる」という信念のもと、「鬼塚電気工事」では社員一人ひとりの成長サポートに力を入れています。
企業名 | 鬼塚電気工事株式会社 |
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事業内容 | 電気工事、管工事、電気通信工事、消防施設工事、IT事業、アート関連事業 |
設 立 | 1955年 |
所在地 | 〒874-0930 大分市大字津留1979番地1 |
TEL | 097-569-3271 |
URL | https://www.onizuka.co.jp/ |
※ 2024年10月現在