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離島の元気
大分県知事 広瀬勝貞
冬はつとめて。・・・霜のいと白きも、またさらでもいと寒きに、火など急ぎおこして、炭持てわたるも、いとつきづきし。(枕草子) 寒い朝など、布団の中でこんな一文を思い起こしては、さすがに日本文学と感心しつつ、もうひと眠りするか、見ならって凛として飛び起きるか、迷う今日この頃です。
そんな風の冷たい日に、大島、屋形島、それに深島で「ふれあいトーク」をしました。
どの島も随分少子高齢化が進んでいるのですが、嬉しかったのは、そのことを嘆くよりも、皆さんが島の将来のことを考えていることでした。
生活に欠かせない水は、水道が通っていたり、井戸水や雨水に頼っていたりしますが、それでも今のところ不自由はないとのことでした。
申し訳ないのは情報関係で、風雨が強い時などTVすらもよく見えないとのことで、深島では「あんたが知事かい」と言って、からかわれました。冗談で済めば良いのですが、台風の時など動向がわからないのは大変不安なようでした。それにネットの方も屋形島と深島は携帯電話の通信サービスしか手段がないとのことでした。これは急いで対策を打たなければと思いました。
保健医療のことですが、大島の方は住民も多いからか、医療、特に救命救急医療のことが心配だという声を聞きました。こればかりはある程度人がいないと医師も住んでくれないし、当分ドクターヘリの充実で対応するのかなと思います。他方、深島では定期的に保健師さんがやってきて健康体操を楽しんでいるとのことでした。
問題は、島でどんな仕事をして収入を確保するかということですが、これも期待ふくらむ動きが出てきています。屋形島の方ですが、以前から付加価値の高い水産物を物色していたところ、岩ガキがよかろうということになり、養殖を始めて、もうすぐ本格出荷できるのではないかということでした。乞うご期待。それにもう一つ、近頃青年がカップルで帰ってきて、名物緋扇貝を養殖していました。生産・販売も順調、最近は赤ちゃんも授かったそうです。
深島の方は地元の女性陣が港のそばに作業場を持って、こちらも名物の白みそ作りをしています。ここにも最近若いカップルがやってきて、レストラン、民泊、それに夏はシュノーケルやスキューバダイビングのスクールを開いているとのことでした。こちらも好評のようで、夏場にもっとお客さんを呼び込めるように、連絡船を増便してくれとのことでした。元気が出ることは大歓迎ですから、早速予算をつけようと思います。
大島の方は、今のところやはり漁業中心でやっているようですが、2島に比べると陸にも近く、従っていろいろプランも立てやすいのではないかと期待しています。
それにしても最近魚介類が少なくなった、もっとしっかり資源管理をやってもらいたいということは3島の皆さん言っていました。その前に佐賀関の新規就業者と懇談した際にも言われましたし、これは喫緊の課題です。
帰りにどこかの島のご婦人から「交通安全のお守り」と言って糸を丸めた手鞠を頂きました。そこでふと思ったのは、何しろ有史以来交通事故のない島のお守り、霊験に間違いなし、大変な特産品になるかも、という名案?少し凝り過ぎですかね。
県政だより新時代おおいたvol.104 2016年1月発行