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大分県の温泉の現状(概要)
1 県内の源泉数・湧出量
本県は16市町村において温泉が湧出しており、平成27(2015)年3 月末における源泉総数は4,381 で全国の16.0%を占め、また湧出量は278,934L/分で全国の10.6%を占め、源泉数・湧出量ともに全国第1 位となっています。源泉数及び湧出量の全国上位5 都道府県は、次のとおりです。
No. | 都道府県 | 源泉総数 | 構成比(%) |
---|---|---|---|
1 | 大分県 | 4,381 | 16.0 |
2 | 鹿児島県 | 2,771 | 10.1 |
3 | 静岡県 | 2,274 | 8.3 |
4 | 北海道 | 2,222 | 8.1 |
5 | 熊本県 | 1,354 | 4.9 |
全国合計 | 27,367 | 100.0 |
No. | 都道府県 |
湧出量(L/分) |
構成比(%) |
---|---|---|---|
1 | 大分県 | 278,934 | 10.6 |
2 | 北海道 | 255,624 | 9.7 |
3 | 鹿児島県 | 156,539 | 6.0 |
4 | 熊本県 | 139,453 | 5.3 |
5 | 青森県 | 137,554 | 5.2 |
全国合計 | 2,630,428 | 100.0 |
出典:平成26 年度温泉利用状況(環境省)
図1 大分県内における源泉数の推移
図2 大分県内における湧出量の推移
県内の源泉総数の推移は、平成18(2006)年度の5,093 をピークに、以降は年々減少しています。源泉総数が減少している理由のうち多くは、泉源の所有者による処分や泉源が確認できない事例(現孔不明)などによるものです。一般に、温泉地においては、開発当初は自噴泉が多く、その後開発が進むにつれ、温泉水位が低下し、動力泉が多くなる傾向があります。本県の温泉資源についても、平野部での温泉利用の増加等によって動力泉の割合が増えています。
2 市町村別の源泉数・湧出量
市町村別の源泉数・湧出量についてみると、別府市は源泉数2,291、湧出量87,360L/分で、源泉数・湧出量ともに県内トップとなっています。源泉数については、以下、由布市(941)、九重町(405)の順になっており、湧出量に関しては、九重町(83,882L/分)、由布市(48,446 L/分)の順になっています。
No. | 市町村 | 源泉総数 | 構成比(%) |
---|---|---|---|
1 | 別府市 | 2,291 | 52.3 |
2 | 由布市 | 941 | 21.5 |
3 | 九重町 | 405 | 9.2 |
4 | 大分市 | 242 | 5.5 |
5 | 日田市 | 164 | 3.7 |
県合計 | 4,381 | 100.0 |
No. | 市町村 | 湧出量(L/分) | 構成比(%) |
---|---|---|---|
1 | 別府市 | 87,360 | 31.3 |
2 | 九重町 | 83,882 | 30.1 |
3 | 由布市 | 48,446 | 17.4 |
4 | 大分市 | 17,247 | 6.2 |
5 | 日田市 | 16,566 | 5.9 |
県合計 | 278,934 | 100.0 |
出典:平成26 年度温泉利用状況(大分県)
図3 市町村別の温泉湧出状況
図4 大分県内における温泉湧出状況
3 県内の温泉について
1)別府市
別府市は、別府八湯と呼ばれる温泉郷に分かれており、別府温泉、鉄輪(かんなわ)温泉、亀川温泉、柴石温泉、明礬(みょうばん)温泉、観海寺温泉、堀田温泉、浜脇温泉の8つはそれぞれ異なった雰囲気や特徴を持っています。それぞれの地域には共同温泉も数多く存在していることから、それらの施設を巡る周遊型の温泉利用も行われています。
また、源泉数、湧出量はともに県内随一であり、地獄めぐりをはじめとする観光利用や花き栽培、地熱発電など多目的な温泉利用も進んでいます。
【泉質】
市北部は塩化物泉、南部は炭酸水素塩泉が多く、また、単純温泉は市全域に多く分布しています。
2)由布市
由布市は、別府市に次ぐ源泉数を誇り、全国的にも有名な由布院温泉や古くから湯治場として栄えた湯平(ゆのひら)温泉、強い酸性泉で知られる塚原温泉などがあります。由布院温泉は主に単純温泉ですが、市内では7種類の療養泉が湧出しています。
別府市同様、温泉地での源泉の密集化により、温泉資源への影響が懸念されており、温泉地周辺は特別保護地域や保護地域に指定されています。特別保護地域に指定されている湯平温泉では昭和45(1970)年から、県内で唯一、温泉の集中管理方式による利用が行われており、温泉資源の保護と適正利用のモデルケースとなっています。
【泉質】
単純温泉が最も多く、特に温泉は湯布院駅周辺に集中しています。
3)九重町
開湯から1,000 年以上の歴史を持つとされる筋湯温泉や宝泉寺温泉をはじめ、九重“夢”温泉郷として町内各地に温泉地があり、泉質も多様な温泉が湧出しています。また、活発な火山活動の恩恵を受け、国内最大出力を誇る八丁原発電所や大岳発電所、滝上発電所などの大規模な地熱発電所が立地しています。
近年では、町内に地熱発電を目的とした開発計画が多数持ち上がっており、新規の温泉掘削が急増しています。そのため、平成27(2015)年12 月には環境保全及び公共の福祉の増進を図ることを目的とする「九重町地熱資源の保護及び活用に関する条例」が制定されました。
【泉質】
単純温泉が最も多く、次に炭酸水素塩泉が多く分布しています。
4)大分市
大分市の温泉は昭和50(1975)年以降に急速に開発が進み、県内第4位の源泉数を誇ります。大分平野で湧出するのは地下600~800mにある深層熱水であり、30~60℃の温泉が利用されています。なお、大分市東部地域で湧出する極めて塩分濃度が高い温泉は、沈み込むフィリピン海プレートに付随する海水由来の可能性が指摘されています。また、野津原には塚野鉱泉があり、浴用や飲用に利用されています。
なお、大分平野には温泉に付随して可燃性天然ガスが湧出する温泉も数多くあり、温泉採取にあたっては適切な管理が必要になります。
【泉質】
塩化物泉が最も多く、次に炭酸水素塩泉が多く分布しています。
5)日田市
日田市内には、天ヶ瀬温泉、日田温泉、杖立温泉などの温泉地があります。玖珠川沿いにある天ヶ瀬温泉は、別府や由布院とともに豊後三大名泉に数えられ、豊後国風土記にも記録が残る歴史ある温泉地です。
また、日田市街地には、屋形船や鵜飼いで知られる三隈川沿いに日田温泉があり、温泉旅館・ホテルが立ち並んでいます。浴用以外の利用としては、温泉熱を使って冷暖房を行う「ヒートポンプ」を利用した旅館施設もあります。
【泉質】
単純温泉が最も多く分布しています。なお、天ヶ瀬温泉には硫黄泉も分布しています。
6)竹田市
竹田市内には旧竹田市、久住町、直入町、荻町にそれぞれ温泉があり、源泉数、湧出量ともに県内第6位の豊富さを有しています。市内の代表的な温泉地として長湯温泉があります(竹田市直入町)。
【泉質】
炭酸水素塩泉が最も多く分布しています。なお、長湯温泉には県内でも分布が少ない二酸化炭素泉も分布しています。
4 大分県内の温泉データ
大分県内の温泉データを地域毎にまとめています。なお、対象は1996年4月~2016年3月までに温泉登録検査機関で分析を行った温泉です。
(1)泉質
大分県全体で見てみると、含よう素泉及び放射能泉以外の8泉質が分布しています。最も単純温泉が多く、次に塩化物泉、炭酸水素塩泉が多く分布しています。なお、市町村毎に泉質の分布も異なっています。また、特徴としては、別府地域の酸性泉及び硫黄泉、西部地域の硫黄泉、豊肥地域の二酸化炭素泉、由布地域の硫酸塩泉が挙げられます。
地域名 | 大分 | 別府 | 北部(中津・宇佐) | 西部 (日田・九重・玖珠) | 南東部(佐伯・臼杵・津久見) | 豊肥 (竹田・豊後大野)) | 国東(豊後高田・国東・姫島) | 杵築日出 | 由布 | 計 | |
1 | 単純温泉 | 21 | 155 | 21 | 134 | 1 | 10 | 1 | 17 | 254 | 614 |
2 | 塩化物泉 | 72 | 132 | 5 | 16 | 3 | 2 | 2 | 7 | 24 | 263 |
3 | 炭酸水素塩泉 | 44 | 86 | 7 | 30 | 1 | 53 | 4 | 0 | 9 | 234 |
4 | 硫酸塩泉 | 0 | 8 | 0 | 5 | 0 | 5 | 3 | 0 | 19 | 40 |
5 | 二酸化炭素泉 | 4 | 0 | 1 | 2 | 2 | 10 | 1 | 0 | 1 | 21 |
6 | 含鉄泉 | 1 | 2 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 4 | 9 |
7 | 酸性泉 | 0 | 16 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 3 | 21 |
8 | 含よう素泉 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
9 | 硫黄泉 | 0 | 26 | 0 | 13 | 0 | 3 | 1 | 0 | 0 | 43 |
10 | 放射能泉 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
計 | 142 | 425 | 34 | 202 | 7 | 85 | 12 | 24 | 314 | 1,245 |
(2)泉温
大分県全体で見てみると、最も高温泉が多く、次に温泉、低温泉、冷鉱泉の順に分布しています。特に別府、西部、由布地域には80℃以上の非常に熱い温泉も多く分布しています。
地域名 | 大分 | 別府 | 北部(中津・宇佐) | 西部 (日田・九重・玖珠) | 南東部(佐伯・臼杵・津久見) | 豊肥 (竹田・豊後大野) | 国東(豊後高田・国東・姫島) | 杵築日出 | 由布 | 計 | |
冷鉱泉 (25℃未満) | 4 | 0 | 2 | 11 | 4 | 6 | 1 | 0 | 5 | 33 | |
低温泉 (25℃以上34℃未満) | 9 | 6 | 10 | 8 | 1 | 7 | 2 | 8 | 6 | 57 | |
温 泉 (34℃以上42℃未満) | 24 | 14 | 12 | 28 | 0 | 14 | 6 | 9 | 22 | 129 | |
高温泉 (42℃以上) | 100 | 361 | 9 | 138 | 0 | 43 | 1 | 7 | 273 | 932 | |
内数 | 42℃以上60℃未満 | 100 | 198 | 8 | 93 | 0 | 42 | 1 | 7 | 180 | 629 |
60℃以上80℃未満 | 0 | 81 | 1 | 26 | 0 | 1 | 0 | 0 | 68 | 177 | |
80℃以上 | 0 | 82 | 0 | 19 | 0 | 0 | 0 | 0 | 25 | 126 | |
総 数 | 137 | 381 | 33 | 185 | 5 | 70 | 10 | 24 | 306 | 1,151 |
(3)pH
大分県全体で見てみると、中性からアルカリ性の温泉が多く分布しています。なお、別府地域には酸性及び弱酸性の温泉も多く分布しています。
地域名 | 大分 | 別府 | 北部(中津・宇佐) | 西部 (日田・九重・玖珠) | 南東部(佐伯・臼杵・津久見) | 豊肥 (竹田・豊後大野) | 国東(豊後高田・国東・姫島) | 杵築日出 | 由布 | 計 |
酸性(pH 3未満) | 0 | 15 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 3 | 20 |
弱酸性(pH 3以上pH 6未満) | 0 | 44 | 0 | 11 | 0 | 4 | 1 | 0 | 4 | 64 |
中性(pH 6以上pH 7.5未満) | 29 | 90 | 7 | 51 | 2 | 54 | 8 | 6 | 21 | 268 |
弱アルカリ性(pH 7.5以上pH 8.5未満) | 58 | 195 | 16 | 92 | 2 | 7 | 1 | 12 | 175 | 558 |
アルカリ性(pH 8.5以上) | 50 | 37 | 10 | 30 | 1 | 4 | 0 | 6 | 103 | 241 |
総 数 | 137 | 381 | 33 | 185 | 5 | 70 | 10 | 24 | 306 | 1,151 |
(4)浸透圧
大分県全体で見てみると、低張性の温泉が多く分布しています。なお、大分地域には高張性及び等張性の温泉も多く分布しています。
地域名 | 大分 | 別府 | 北部(中津・宇佐) | 西部 (日田・九重・玖珠) | 南東部(佐伯・臼杵・津久見) | 豊肥 (竹田・豊後大野) | 国東(豊後高田・国東・姫島) | 杵築日出 | 由布 | 計 |
低張性(溶存物質 8,000mg/kg未満) | 119 | 381 | 32 | 185 | 5 | 70 | 9 | 22 | 303 | 1,126 |
等張性(溶存物質 8,000mg/kg以上10,000 mg/kg未満) | 6 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 7 |
高張性(溶存物質 10,000 mg/kg以上) | 12 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 | 3 | 18 |
総 数 | 137 | 381 | 33 | 185 | 5 | 70 | 10 | 24 | 306 | 1,151 |