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大分県は、日本三大干潟の一つである豊前海や、外洋水と内海水が混合する別府湾、さらには深く入り組んだリアス式海岸の豊後水道と、変化に富んだ好漁場が形成され、多種多様な水産物が漁獲されています。しかし、温暖化など漁業を取り巻く環境の変化もあり、その漁獲量は、年々減少しています。
水産資源を大切に守りながら、持続的に漁獲していく取組とともに、より効率的で安定的に水産物を供給できるよう、新技術を導入した養殖も進められています。
水産資源の回復のためには、資源管理と種苗放流を適切に組み合わせることが重要です。
そのため、漁業者はクルマエビ、マコガレイ、ガザミ、アワビなどの種苗放流や「小型魚介類の漁獲禁止」など自主的な資源管理に取り組んでいます。
県はその取組を後押しするため、資源管理の取組段階に応じて、漁業者が行う放流に上乗せして種苗を配布しています。
マコガレイ種苗放流
マコガレイ種苗
問 水産振興課 電話097-506-3955
海洋環境の変化によって佐伯湾では平成29年、30年に大規模な赤潮が発生し、養殖クロマグロが大きな被害を受けました。
赤潮被害軽減策として、従来の2倍となる網丈(水深)40mの「大分方式深層型生け簀」を整備し、赤潮の少ない水深帯へマグロを避難させる手法について研究を行っています。
観測筏
赤潮は、主に植物プランクトンの異常増殖によって発生し、漁業には大敵です。しかし、植物プランクトンは海中の二酸化炭素を吸収し、酸素を供給することや、二枚貝の餌として利用される等、海の基礎生産を担う重要な生物です。
二枚貝のカキは主に植物プランクトンを餌としており、カキ1個で1日に約200L(ドラム缶1個分)の海水を浄化することができ、赤潮の原因プランクトンの増殖を抑えることが可能です。
県ではこの能力に着目し、赤潮の初期発生海域となる佐伯湾大入島周辺でカキ養殖による赤潮防除策を推進しています。これにより、周辺で養殖されているマグロを赤潮から守ることが期待されています。
●カキ養殖のきっかけ
カキは、赤潮の原因となるプランクトンを食べ、海の環境を整えてくれます。ここで赤潮を抑えることができれば、被害拡大を食い止めることが期待できます。カキ養殖は人が餌を与える必要もなく、半年で成長し出荷できることから、非常にエコな養殖といえます。
●カキ養殖で工夫したこと
従来のような塊状のカキ種苗を垂下する養殖ではなく、単体のカキ種苗を育成バスケットに入れて養殖する手法を導入しました。バスケットで養殖するため、見栄えが良く、生食用にも適した濃厚で美味しいカキが育ちます。 養殖用のプラスチック資材が流出せず、環境にやさしい養殖方法であるうえ、船の動力を使うことで、短時間でバスケットを反転させることができ、定期的に天日干しをすることにより、汚れの付着を防止できます。
この、バスケットを反転させる手法は日本で初めての導入で、さらにサイズの選別など養殖工程の機械化も行い、労働時間の大幅な短縮を図っています。
また、これまで産業廃棄物として処分していたカキ殻を粉砕して農家で有機肥料として使ってもらっています。自然な肥料として需要が伸びています。
カキ育成バスケット
● 今後の目標
佐伯市が高品質なカキの生産地となることを目標に立ち上げた「佐伯市シングルシード養殖協議会」の代表をつとめています。カキ養殖の技術習得の場や機械設備などを会員が利用できる場を提供し、働き方改革の提案もしていきます。最終的には、ここ大入島に若い漁業後継者が育ってくれることを願っています。
コロナ禍の外出自粛等により、農林水産物は消費が大きく落ち込み、打撃を受けています。そのため、県では関あじ、養殖ヒラメ、養殖ブリ、おおいた和牛など県産ブランド食材を給食に提供する取組を7月から開始しました。食育を通して、家庭での消費拡大につながることが期待されています。
関あじの味噌カツ フィッシュ(ヒラメ)・チップス
大分県内のブランド魚を販売する県漁協直営「おさかなランド」の3号店が大分市内中心部のOPAに10月末オープンしました。明野アクロス店、トキハわさだタウン店に続き、漁業者と消費者が直接「ふれあえる店舗」として、消費者の皆様からの声を聴き、今後の県産魚のPRや販売戦略に生かしていきたいと思います。鮮魚のみならず、総菜や刺身など豊富なメニューを揃え、県民の皆さんに新鮮で美味しい県産魚を食べていただく機会を提供します。
問:漁業管理課 電話 097-506-3915
~森と川と海をつなぐ森林環境税の取組~
森林には、水を蓄える働きや地球温暖化を抑える働きなど、私たちの生活に欠かせない多くの機能があります。また、森林から流れ出る水の中には、魚や貝の餌となる植物プランクトンの成長に必要な養分が豊富に含まれており、「豊かな森林が豊かな海を育む」と言われるほど、森林と海は密接に関係しています。
県では、県民共通の財産として森林を保全し、みんなで守り育てるため、平成18年度から大分県森林環境税を導入し、「森林資源の循環利用」、「災害に強い森林づくり」、「森林づくり意識の醸成」を推進しています。これまでも豪雨等により漁港や海岸に漂着した流木の撤去などを実施してきました。
大分県森林環境税は、5年間を1期としており、今年度は第3期の最終年度にあたるため、現在第4期への継続に向けた検討を行っています。
●国の森林環境税による取組
経営放棄された森林の整備
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●大分県森林環境税による取組
・河川沿いの森林整備(流木の抑制)
・再造林による資源循環
・漁業者による流木の回収
・ボランティアによる流木の清掃活動
・森林環境教育による子供達の意識醸成
漁業者による流木の回収
平成31年4月に、国において森林環境税が創設されました。国の森林環境税は、市町村が仲介役となり森林所有者と林業経営者をつなげ、これまで経営が放棄されていた森林の整備を推進する「森林経営管理制度」の運用に活用されています。
これに対して、大分県森林環境税は「森林資源の循環利用」「災害に強い森林づくり」「森林づくり意識の醸成」に関する取組に活用しています。 県と国の両税を活用し、森林がもつ公益的な機能が、これまで以上に発揮されるよう、大分の森林づくりに努めていきます。
大分県森林環境税 | 国の森林環境税 | |
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税率 | 個人 500円/年 法人 1,000円~40,000円/年 | 個人 1,000円/年 (R6から課税開始) |
税の活用内容 | 森林資源の循環利用 災害に強い森林づくり 森林づくり意識の醸成 | 経営放棄された森林の整備 森林整備を担う人材の確保・育成 木材利用の促進、普及啓発 |
問:森との共生推進室 電話 097-506-3873