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特集1 次世代につなぐ!大分から考えるエネルギーの未来

印刷ページの表示 ページ番号:0000230533 更新日:2024年1月18日更新

特集1 次世代につなぐ!大分から考えるエネルギーの未来

新春対談

佐藤 県民の皆さんにも大変身近な課題であるエネルギーと環境についてお話をさせていただくこと、大変楽しみにしています。よろしくお願いします。

池辺 九州電力の池辺です。今日は、大分県の現状や、将来に向けた取組について、佐藤知事にお話いただけると伺っており、とても楽しみにしています。よろしくお願いします。

平山 池辺社長の大分での思い出をお聞かせください。

池辺 1958年に上津江村(現日田市)で生まれ、1クラスで同級生が25人しかいない川原小学校という小さな学校で教育を受けました。みんなと仲よくするのが一番大事という小学校時代を過ごしました。
  高校は大分舞鶴高等学校に進みました。あまり競争心がなく、図書室で本を読むのが大好きな、おとなしい子だったと思っています。

 卒業して東京に行きましたが、大分は私を形づくってくれたふるさとだと今でも思っています。

平山 知事は、東京大学に進学され、入庁した通商産業省(現 経済産業省)では、環境問題にも取り組んでこられましたよね。

佐藤 大学のときのゼミ論が「大分新産都と公害対策」で、学生の頃から関心がありました。地球環境問題は省エネと新エネが両輪ですが、通商産業省の省エネルギー対策課長のときには、地球環境に優しい社会をどうつくっていくかに取り組みました。

平山 大分県と九州電力は、昔から密接な関係があるんですよね。

池辺 九州最大の発電所である新大分発電所や、日本製鉄と共同で経営している大分共同火力の発電所もありますし、とてもつながりが深いと思っています。
  そのほか特徴的なものでは、豊富な地熱の資源があり、それを昔から積極的に活用しています。事業用として国内初の地熱発電所である大岳発電所、国内最大規模の八丁原発電所があります。現在日本全体に55万キロワットの設備量があり、そのうち約半分は九州にあり、またその大部分が大分県にあります。

平山 昨今の不安定な国際情勢をどう受け止めていますか。

池辺 ロシアによるウクライナ侵攻、中東のガザ地区の状況等、大変心配しています。新大分発電所は、化石燃料である液化天然ガス(LNG)を使っているので、電気料金に与える影響と電気の安定供給について、とても心配しています。
  九州電力は、非常に効率化を進めたおかげで、電気料金の値上げをしないで済んだと思っています。
  さらには、地熱、水力という再生可能エネルギーは化石燃料を使わないので影響が少ない。それから、原子力も影響を受けにくい。
  九州に進出している半導体工場などから、電気料金が安く、CO2を出さない電気がたくさんあることも立地した一つの理由であると伺います。企業誘致のためにも、低廉な電気料金をできるだけ長く続けていきたいと思っています。

平山 地球温暖化問題についてどのように思っていますか。

池辺 電気事業は、基本的にはエネルギーをつくるために、LNG火力とか、石炭火力を使っていますので、とてもCO2の排出量が多いんですね。まさに自分事として取り組んでいます。

佐藤 県も2020年にカーボンニュートラル宣言を行い、昨年9月に地球温暖化対策実行計画を改定して、その中で初めて産業部門の削減目標も掲げました。
  計画では、一つは環境と、社会や産業との調和を図ること、もう一つは、地球環境に優しい社会をつくることで技術開発を促進させ、新しい産業、雇用を生むことを目指すとしています。

池辺 気候変動による影響は多く、線状降水帯で何日も雨が降るとか、台風も大規模化して、予測が難しい動きをすることもあります。ひとたびこういう災害が起きると、広範囲で停電が発生してお客様にご迷惑をおかけするので、とても心配しています。

佐藤 気候変動により近年激しさを増す雨が降っても大丈夫なように、河川の掘削や堤防を造る災害対策も大事です。もう一つは、例えば、農林水産物にいろいろ影響が出ているので、高温でも育つ稲の品種に転換するとか、適応する取組もあわせて大事だと思っています。

池辺 再生可能エネルギーは、発電時にCO2を出さないという非常にいい特性を持っています。九電グループは、再エネの主力電源化を目指しています。
 ただ、その一方で、特に太陽光を中心とする再エネは、夜間は違う電源で発電しなきゃいけないし、何日か雨の日が続くと全然発電しないから、火力の力を借りるしかないんですよね。
  やっぱり原子力、火力、再生可能エネルギーのバランスが大事じゃないかなと思っています。

佐藤 大手企業が再生可能エネルギーである地熱を使って水素を作る実証実験を九重町で行っており、製造した大分県産水素を日田彦山線のBRTの燃料として活用する脱炭素化の取組が行われています。
 先端的な実証実験はリスクも伴い、費用もかかり、企業の負担だけでは難しいところもあるので、実証実験、技術開発は、県も含めて行政の取組が大変大事だと思います。

平山 環境対策についての取組を、お二人に伺います。

池辺 「九電グループカーボンニュートラルビジョン2050」では、カーボンニュートラルを最優先の経営課題と位置づけて取り組んでいます。
 我々が発電で排出するCO2の量を2050年までに実質ゼロにしたい。さらに諸外国で再生可能エネルギーを開発するとか、日本や諸外国での植林でCO2を吸収する努力、それから、家庭や工場、産業分野で、電化を進めることによってCO2を出す量を少なくし、抑制する活動とあわせトータルで「カーボンマイナス」にしたいと思っています。

佐藤 今、電気自動車(EV)とか燃料電池自動車も普及が始まってきていますが、それを使うことにより、圧倒的にCO2の排出量を下げることもできます。
  もう一つ、生活の仕方として小まめに電気を切ると、地球環境に優しい生活という面で大事なだけでなく、コストも下がると思います。

池辺 具体的には、供給面は電源の低・脱炭素化、需要側は電化の推進を大きな柱として取り組んでいます。
 電源は、再生可能エネルギーをいかに主力電源化するか。安全と地域の皆さんのご理解を前提として、原子力発電所を有効に活用すること。それから、調整力としての火力発電に、アンモニアや水素を混ぜる、もしくは、出たCO2を地中に埋めて温室効果をなくす、カーボンキャプチャーアンドストレージ(CCS)の技術も開発していきたいです。
 需要側は、まず、住宅はオール電化、車はEV等をいかにして普及させていくか。そのためには、充電設備がかなりネックになっていくと思うので、取り組んでいきたいです。
 それから、産業部門は、ヒートポンプの技術です。ヒートポンプを使って熱、蒸気を提供でき、その電気自体が再生可能エネルギー、原子力、CCSを使った火力発電からくれば、全体のCO2を下げられるなと思っています。

新春対談1

佐藤 昨年8月に九州電力をはじめ、臨海部のコンビナート11社が入った「グリーン・コンビナートおおいた」推進会議を立ち上げました。
 よく大分県は一人当たりのCO2排出量が全国で一番多いと言われますが、それは世界のものづくりを支える鉄鋼、化学、石油、非鉄金属などが集積しているからです。大分には圧倒的に高効率で、省エネ型の事業所が立地しており、むしろ誇りに思っていいと思います。
 ただ、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、今までにない技術が必要になってきます。

池辺 企業の取組には限界があるので、県がリーダーシップをとり、こういう動きがあるのはとてもいいことだなと思います。
 それから、大分の新産都、コンビナートには大変感謝しています。上津江村では日田市内まで行かないと高校がないので、下宿しないと通えません。うちの家族はそれだけの収入がなく、高校に通えないかなと思っていたのが、父親が40歳のときに三井造船(今の三井E&S)に採用され、中学校2年生のときに、大分市に引っ越してきました。おかげで高校、大学まで進学することができました。

佐藤 働く場、生活の場がしっかり確保されていることは、将来大分を担う子どもたちのためにも大事なことです。グリーン・コンビナートのような取組は、企業が立地やどこに投資するかを決める上で、とても大きなメッセージになってくると思うんですね。
 そして、他方で、カーボンニュートラルやGXという意味では、家庭とか事業所に太陽光をもっと普及させていく。太陽光と蓄電池のセットを導入することに対して、中小企業の方々に支援することもあわせてやっています。

平山 九州電力の大分県内での環境への取組を教えてください。

池辺 大分県を中心にして4447ヘクタールの森林を持っていて、100年以上前から管理しています。
 九電みらい財団を設立して、由布市の「くじゅう九電の森」での環境教育活動や、環境保全活動の一環として、2000年から毎年、地元の方々と竹田市のくじゅう坊ガツル湿原の野焼きを行っています。また、平治岳で、植生保護活動にも取り組んでおり、「自然共生サイト」として、環境省から認定されています。
 大分県は、森林資源が豊富で、地熱のエネルギー賦存量も非常にあること、それから、水力発電のポテンシャルも大きいんですよね。また、森林というCO2の吸収に対するポテンシャルがあり、とても有望な地域だと思っています。我々も経営資源を投入して一緒に開発させていただけたらなと思っています。

佐藤 森林はバイオマスにつながってきますし、水力、太陽光、大変豊富に賦存している日本一の地熱をどう活用していくか。
 大分の農業用のかんがい用水路は、恐らく日本の中でも有数のものが整備されていると思うんですね。そこにローカルに使う発電機を設置していくなど、アイデアは無限大に出てくるのではないでしょうか。

池辺 地球温暖化を防止するためには、できることは全てやると考えていますので、ぜひ協力させていただきたいと思います。

佐藤 日本は世界に誇る省エネ国家でずっときていますが、日本全体がしっかり連携をしながら取り組んでいけば、2050年に向け世界のモデルとなるのではないかと思います。
 国を挙げて、しっかり取組をしてもらうことも大変大事だなと考えています。

池辺 2023年に国がグリーントランスフォーメーションに向けた法制度をきちんと整備し、2024年からは事業者が中心になって実行に移す年になるでしょう。我々も心して前に進んでいきたいと思っています。
 子、孫の世代が、豊かで快適で、今の国力を維持していくためには、エネルギー問題は非常に重要な位置づけにありますし、まずは地球温暖化を防止していかなければいけません。
 そのために、九州から業界全体をリードして、カーボンニュートラルに向けて一生懸命取り組んでいきます。皆さんもエネルギーの効率的な利用から始めていただいて、ご協力いただければと思います。

佐藤 子どもたちが将来安心して暮らせる社会をつくるために、エネルギーの安定供給と同時に、地球環境をはじめとした環境問題に取り組んでいくことが大変重要です。ぜひ、県民の皆さんのご協力をお願いします。

新春対談2