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高齢化や急速な人口減少はさまざまな影響をもたらしていますが、特に農林水産業ではその状況が顕著に現れています。
今回は、挑戦と努力で成長する農林水産業の実現に向けた、畜産業と水田農業の取組についてお知らせします。
高齢化等による生産基盤の弱体化や産地間競争の激化などにより、畜産業を取り巻く環境は、厳しい状況にあります。
県では、肉用牛の品質・収益性の向上、高付加価値化、生産基盤の強化に取り組んでいます。
●全国和牛能力共進会
全国和牛能力共進会は、各都道府県で厳選された優秀な和牛が一堂に会して優劣を競う大会で、5年に一度開催されることから、「和牛のオリンピック」と呼ばれています。出品は全9区に区分されており、繁殖性や飼いやすさなどを競う「種牛の部」、枝肉の肉量や肉質、脂肪の質などを競う「肉牛の部」などがあります。
共進会の審査結果は、その後の和牛ブランドの知名度を左右することなどから、畜産振興を行う上で非常に重要な大会と位置付けられており、大分県でも生産者・関係者一丸となって出品に向けた取組を進めてきました。
10月6日から10日にかけて鹿児島県で開催された第12回大会には、全国から438頭、大分県からは21頭が出品されました。
第2区では、竹田市の後藤克寿さんが出品した「さだの5号」が優等賞首席を獲得し、農林水産大臣賞を受賞しました。
また、大分県代表チームは、特別区を含む全出品区で優等賞に入賞し、出品団体賞を受賞しました。全9区での優等賞入賞は大分県と鹿児島県だけであり、大分県のレベルの高さを示すことができました。
大分県としては、今回の団体賞を足がかりに、生産者や関係機関とも連携しながら、さらなるブランド力強化に取り組んでいきます。
●未来を担う若者の育成
前回の第11回大会で付帯行事として行われた「高校生の部」は、地域内での技術支援や交流を深めるきっかけとなり、担い手育成の環境整備にもつながりました。このことから、第12回大会からは高校と農業大学校が競う「特別区」が設けられました。県内からは、久住高原農業高校うし部の「いちか号」が出品され、優等賞を受賞しました。
●おおいた和牛
おおいた豊後牛が誕生して100年目の年に生まれた「おおいた和牛」。おおいた豊後牛の中でもおいしさにこだわり、生産者の顔が見える農場で育てられた肉質4等級以上のものだけが「おおいた和牛」です。
県では、「おおいた和牛」を核とした肉用牛の高付加価値化に向けたブランド戦略に取り組んでいます。
その一つが、歌舞伎役者で俳優の中村獅童さんを「おおいた和牛推し隊長」に任命しての販促活動(プロモーション)です。中村獅童さんの知名度をいかして、全国に向けておおいた和牛のおいしさをPRしています。
●新規就農者への手厚い支援
県内では、肉用牛生産農家の高齢化や人手不足により、年々、農家戸数が減少しています。
そこで県では、JAと連携して県西部にキャトルステーション(CS)という、生まれた子牛を預ける施設の建設を計画し、令和6年度の運営開始を目指しています。
肉用牛の子牛は、概ね生後9ヵ月で子牛市場に出荷されますが、CSは生後4ヵ月くらいから市場出荷まで子牛を預かってくれるので、繁殖農家は労力を軽減することができます。
このほかにも、新規就農者へのハードルを下げるため、肉用牛ヘルパーという制度を設けています。農家がヘルパーに牛の世話を依頼することで、休みを取って家族との時間を確保できるなど、就農後のワークライフバランス実現を推進しています。
また、肉用牛ヘルパー制度を活用して、これから就農を目指す人の畜産インターシップを実施しています。就農希望者自身がヘルパーとなって、牛の飼養管理技術や経営に関するノウハウを習得し、自らが就農する際のビジョンを描けるようになります。現在、県内では6つのヘルパー組織が活躍しています。
今後も新規就農者、就農希望者の両方を支援し、担い手の安定的な確保に取り組んでいきます。
大正 7年 (1918年)
和牛改良目標の設定によって、大分県の和牛の歴史が始まる。
大正10年 (1921年)
種雄牛「千代山号」が全国畜産博覧会で1等賞受賞。
「牛は豊後が日本一」を掲げて銀座をパレード。
昭和58年(1983年)
大分県を代表する名種雄牛「糸福」号が誕生。
のちに豊後牛の名を全国に轟かせ、大分県の和牛の歴史に大きな功績を残す。
平成25年 (2013年)
県内統一ブランドとして「おおいた豊後牛」が誕生。
平成29年 (2017年)
第11回全国和牛能力共進会種牛の部で内閣総理大臣賞を受賞。
平成30年 (2018年)
おおいた豊後牛のリーディングブランド「おおいた和牛」発表。
牛肉のマーラー炒め 今が旬の白ねぎを使った、ピリっとしびれるスパイスが効いた料理です。
記念日や自分へのご褒美として、皆さんもぜひ味わってみてください。
レシピ監修:蓮池陽子さん(料理家・フードデザイナー)
問 畜産技術室 097-506-3682(品質・収益性の向上、生産基盤の強化) 畜産振興課 097-506-3676(高付加価値化)
近年、地球温暖化により気温が上昇し、農作物の品質に影響を与えています。
現在、大分県における水稲の作付面積の75%を占めるヒノヒカリは、夏場の高温により、白く濁ったお米(白未熟粒)の発生や収穫量の減少などが課題となっています。
このような中、県では高温でも品質が安定する特性を持つ「なつほのか」の普及に取り組んでいます。
なつほのかは、ヒノヒカリと比べて面積あたりの収穫量が多く、また、収穫までの成長が7日ほど早くなります。そのため、複数の品種を作付けすることで、台風などの気象災害や病害虫による被害のリスクを分散できるといった特徴があります。
令和3年度に試験水田を設け、生育状況の確認を行ったところ、収穫量・品質ともに高い評価を得ることができました。そのため、令和4年度からは県内全域で本格的な栽培を行った結果、作付面積は1,000haを超え、ヒノヒカリ、ひとめぼれに次ぐ県内3位の面積となりました。
今後は、高温の影響が強く見られる地域を中心に普及を進め、令和5年度は2,000ha、令和6年度は3,000ha以上を目標として、引き続き栽培面積の拡大を推進します。
なつほのかは、今年度が市場初出荷となり、県内のスーパーなどで購入することができます。ほどよい粘りがあり、粒が大きいことから冷めてもおいしいと言われています。ほのかな香り、優しい甘みが特徴のなつほのかをぜひご賞味ください。
ヒノヒカリと比べて高温に強い
ヒノヒカリは高温に弱く、白未熟粒の発生による品質低下のおそれがあります。
なつほのかは高温に強いことから品質が優れる傾向にあります。
問 水田畑地化・集落営農課 097-506-3596