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「え?」が「お!」につながるDX
大分県知事 広瀬勝貞
最近「DX」と書いて、そのまま「ディーエックス」と言ったり、「デジタルトランスフォーメーション」と言ったりするのをよく耳にします。そのたびに「訳のわからない言葉を使うとはケシカラン。こんな話聞くものか」と反発しておられる方も多いと思います。これから社会や経済や行政等あらゆる分野でそのDXを推進しようというときに、多くの県民にそっぽを向かれるようでは困ると心配していました。そんな時、県庁の担当部局でわかり易い資料を作ってくれましたので、参考にしながらDXの話をさせていただきます。
DXって、コンピュータやAI(人工知能)や情報通信技術を使って、ビジネスの場合なら、人手はできるだけ省きながら、しかしお客の満足度をより高めるように充実したサービスを提供する、行政の場合なら、なるべく役所に足を運ばないで、役所でもできるだけ人手をかけずに、効率的に行政手続ができるようにするということです。その仕掛けというか、システムは専門家が作ってくれますから、私どもは窓口の人に聞きながらでも、出来上がったDXの成果をうまく活用できればよいわけです。
いくつか例をあげてみましょう。
(弁当注文の効率化)
オフィスの昼前ともなると弁当注文当番は大忙しです。上司、同僚から弁当の注文―どの店の何を食べたいか―を聞いて、店ごとに分類して電話をします。一回で掛かればいいのですが、お店の方も忙しくなる頃で、なかなか電話に出られなかったり、話し中だったりです。
そこでDXの出番です。注文する側は、当番なし。個々人が出入りの店のメニューを見て、好きなものを選んで注文、それも電話でなくスマホアプリですから簡単です。一定の時間になったらお店の方でスマホを見て注文をまとめて弁当を作り、配達、集金という次第です。注文は個々人の希望が十分尊重されるし、オフィスにとってもお店にとっても人手、時間が大変セーブされることになります。
(AIオンデマンド交通サービス)
過疎地住民の足の便にデマンドバスを走らせているところも多いと思います。これまで例えば前日19時までに電話予約があったもののみ配車するというように利用が大変窮屈でした。というのは、予約が出そろったところで、バスの運転手がすべての予約の発地・着地・時刻を見て明日の配車計画を作るからです。
そこでDX登場。住民はバスを利用したい時にいつでもスマホアプリで申し込みます。今度はそれを受けたAIが最適の配車計画を作り、バスの運転手に指示します。運転手はそれを確認しながら運転に集中できます。AIによりバスがどこにいるのか確認できるようになりますから助かります。
DXで大事なことはビジネスならお客さん第一に、行政なら県民中心に思考を巡らすことです。そして、お客さんや県民の立場に立って、どこに不便があり、どこに足りないところがあるのかよく議論し、それをどう便利にし、充実していくか、ビジョン、「ありたい姿」をえがき、あとは専門家がデジタルを使ってそれを実現していくことです。お客さんや県民の皆さんには、使ってみて本当に良いものができたかどうか検証していただく必要があります。
DXと聞き、「え?何それ」、「自分には関係ない」、「知るもんか」と思う方もおられます。しかし、難しく考える必要はありません。一番大事なことは、目指すべき「ありたい姿」を考えることです。あとは専門家の力も借りながらDXで「ありたい姿」を作っていきます。私たちはそんなDXを進めていきます。
結びに、これも県庁資料のダジャレから。窓口で「DX対応」と言われて、「え?」と思わずたたずむのではなくて、マイペースで手続を進めて、意外に簡単に、満足な結果が得られて「お!」と感嘆の笑顔がこぼれて、「え?」が「お!」につながるDX。お粗末!
~県政だより新時代おおいたvol.141 2022年3月発行~