本文
能力開発
大分県知事 広瀬勝貞
リオデジャネイロ・オリンピックでは、日本代表の活躍に勇気と元気と涙と寝不足をもらいました。金メダルをかざしながら「このために全てを打ち込んできました。」という選手たちの歓声には心から祝福を送りたいし、それでも負けてしまった選手の悔し涙には思わずもらい泣きしてしまいました。
いろいろ印象深い競技がありましたが、私はやはり陸上男子のトラック種目で史上初の銀メダルを獲った400メートルリレーを挙げたいと思います。4人の各100メートル自己ベスト記録を合計すると40秒38なのに、今回の決勝での記録は37秒60と、随分短縮されています。これは、バトンをつなぐときの助走加速とそれに伴って難しくなる確実なバトンの手渡しを両立させたからだそうで、まさに工夫と努力が実ったのだと言われています。各競技ともこんな具合で少しでも速く、高く、強く、結果を出せるように徹底的に練習したのだと思います。
工夫や努力と言えば、芸術の世界も同様で、毎年音楽祭のために来県してくれるマルタ・アルゲリッチさんですが、彼女も天才と言われながら本当に練習熱心です。はるばるやって来ても演奏会が終わるまでは歓迎レセプションはもちろん、PRのためのカメラ撮りなども一切断って練習に打ち込みます。それでも今年5月のお別れパーティのときに「音楽は難しい。自分は年々練習時間が増えている。」としみじみ語っていたのには感動しました。
努力は人間だけかと思っていたら、人工知能も学習努力をしないと使いものにならないということです。先日、囲碁の世界チャンピオンを撃破した人工知能“アルファ碁”君は、プロの棋士が一生かかって読む棋譜の数倍の棋譜を一心不乱に(機械ですから他に考えることはないはずですが)、読み込みメモリーに入れて戦いに臨んだのだそうです。人間の数倍の勉強をしているだけに、人間の知恵の及ばないような手を習得して、世界チャンピオンを打ち負かしたのでしょう。
情報技術の専門家は、「これからは頭を使うことはコンピュータの方が間違いがない。人間は体を動かすスポーツや感性が舞うような芸術世界でのみ優位性を保つことができる。」と言っていました。そんな時代が案外早く来るかもしれませんが、それまではこの分野もやはり精進努力、頭を鍛えることが大事です。
嬉しいことに、どの分野でも何歳になっても努力は確実に良い結果につながるそうです。
皆さんもそんな志をもっていろいろ頑張っておられると思います。私もこれから散歩に行き、音楽を聴いて、それから本を読んで、昼寝をします、精進努力、能力開発です。パートナーから、何とかの冷や水! と声がかかりそうですが。
県政だより新時代おおいたvol.108 2016年9月発行