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不当労働行為の審査
1 不当労働行為とは
労働組合法では、使用者が労働組合または労働者個人に対して行ってはならないことを「不当労働行為」として禁止しています。《労働組合法第7条 》
◎労働者を雇うとき、 |
◎労働組合が使用者に団体交渉の申入れをしたとき、 |
◎労働組合の結成、運営において |
使用者から、このような行為があったと思われる場合、労働組合または労働者個人は、その使用者の行為を正してもらうために、労働委員会に対して救済の申立てをすることができます。
※ 審査の期間の目標
(1)労働組合法第1号、第3号及び4号に掲げる行為(支配介入等)に係る事件並びに同条第1号から第4号までに掲げる行為が複合した事件 360日
(2)労働組合法第2号に掲げる行為(団交拒否)のみに係る事件 100日
2 申立てと審査の手続き
使用者が不当労働行為を行ったと思われる場合、その具体的な事実行為があった日(一定期間続いている行為ならばその行為が終了した日)から1年以内に労働組合または労働者個人が救済申立てを行うことができます。
ただし、労働組合が申立てをするときには、労働組合の資格審査の手続きが必要です。
申立ては、不当労働行為の行われたところ、当事者である労働者または使用者の住所、労働組合の事務所のあるところのうち、どの都道府県の労働委員会でもかまいません。
3 不当労働行為の審査のながれ
(1)救済申立て(労働組合・労働者)
不当労働行為と思われる具体的な事実(1)いつ (2)どこで (3)誰が (4)誰に (5)何をどうしたいか、どういう救済を求めているかを書いた書面を労働委員会に提出します。
《申立書様式 [Wordファイル/46KB] 電子申請用様式 [Wordファイル/46KB] 記載例 [PDFファイル/157KB]》
(2)担当委員の選任
申立てがあると事件を担当する委員が選任されます。
公益委員が「審査委員」となって審査を指揮し、労働者委員と使用者委員は「参与委員」として審査に加わります。
(3)審査(調査・審問)
当事者の主張や証拠を整理する調査と証拠調べを行う審問を行います。
申立人は、使用者の不当労働行為を明らかにするため、また、使用者は不当労働行為事件でないことを主張するため、証拠を提出したり、証人を呼んで事情を聴いたりすることができます。
(4)不当労働行為の判定(公益委員会議)
公益委員は、当事者の主張と労働委員会で調べたこと等を考え合わせ、参与委員の意見を聴いて不当労働行為になるかどうかを判断し、不当労働行為であらばどういう命令を出すかを話し合います。
(5)命令(救済命令または棄却命令)
使用者の行為が不当労働行為であると判断した場合には救済命令を、そうでないと判断した場合には棄却命令を出 します。救済命令は不当労働行為をやめさせ、正しい労使関係に戻すためのもので、事件の内容によって違います。
たとえば、
◎ 解雇された労働者を元の職場に戻し、それまでの間、当人がもらえるはずだった賃金相当額を支払うことを含め、解雇されなかったと同様の状態を回復すること
◎ 組合が○年○月○日に申入れた○年賃上げに関する団体交渉に応じること
◎ 直接又は父母等を通じて組合からの脱退を勧奨しないこと
◎ 今後そのような行為をしない旨の文章を掲示すること
等です。
※命令に不服がある当事者は、中央労働委員会に再審査の申立てをしたり、裁判所に命令の取消を求める訴訟をおこすことができます。
4 不当労働行為は和解で解決することもある
不当労働行為の申立てがあっても、当事者間の話し合いや労働委員会の働きかけにより、命令までいかず和解で解決することもあります。
労使間の争いがしこりを残すことなく解決し、その事件を契機にかえって円満な関係が築かれる場合があります。
なお、労働組合または労働者は、命令が出されるまではいつでも、申立ての全部または一部を取り下げることができます。