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(4.地籍調査の効果って?)
(効果1~9)
【効果1:土地境界をめぐるトラブルの未然防止】
問題の所在
地籍調査を行っておらず、土地の境界等が不明確なままの地域では、しばしば土地の売買や相続などをきっかけに隣人との間で境界争いが発生するなど、土地をめぐるトラブルに巻き込まれる場合があります。その結果、住民関係の悪化を招いたり、長期にわたる裁判での解決を余儀なくされるケースもあります。
地籍調査を行うとどうなるか
○一筆ごとの土地の境界が地権者の立会のもとに確認され、その結果が数値データにより記録・保存されるため、将来の境界紛争が未然に防止されます。
○土地取引や相続が円滑にできるようになり、個人資産の保全及び地域の安心につながります。
【効果2:登記手続の簡素化・費用縮減】
問題の所在
相続に伴って土地を分筆したり、公共用地の取得のために必要な範囲を分筆したりする場合、通常は、隣接地との境界確認書を添付した上で、登記所に分筆登記の申請を行う必要があります。そのため、土地所有者が自ら隣接地権者に現地立会を求め、互いに境界を確認し実測しなければなりません。
地籍調査を行っておらず境界が不明確な場合、この境界の調査に多くの費用と時間を要したり、隣接地権者の印がもらえず登記手続に支障を生じる場合があります。
地籍調査を行うとどうなるか
○地籍調査の成果を現地復元することにより、登記手続のための境界確認作業がスムーズに行われます。
○登記手続に要する費用も大幅に削減される場合があります。
○市町村によっては、市町村が作成する地籍調査成果証明をもって、登記申請に必要な境界確認書に代えることとしており、登記手続の更なる簡素化・費用縮減が図られ、公共事業のスピードアップ等にも役立っています。
【効果3:土地有効活用の促進】
問題の所在
土地取引の円滑化や開発事業の推進にとって、正確な地籍の情報は不可欠であり、地籍が不明確であることが、土地の流動化や都市基盤整備の推進を妨げる原因のーつとなっている場合があります。また、中心市街地の開発などにおいても、ごく一部の地籍の問題によって、再開発事業や土地の有効利用が妨げられているケースもあります。
地籍調査を行うとどうなるか
○地籍が明確化されることにより、土地取引や開発事業の用地取得が円滑となり、土地の流動化や有効利用を推進するための基礎ができます。
○近年、不動産投資ファンドなどでは、取得予定不動産について十分な物件精査を行うことが求められるようになっています(デュー・デリジェンス)。土地境界に関する情報は、精査すべき事項のうち最も基本的な要素の一つであり、不動産投資市場の拡大とともに境界の明確化に対する要請はますます高まっています。
【効果4:建築物の敷地に係る規制の適用の明確化】
問題の所在
建物を建築しようとする場合、建物の設計内容や建築物の敷地等について、都市計画法や建築基準法等により一定の制限が加えられる場合がありますが、これら各制限の適用を明確にするためには、建物の敷地や道路等の境界を明確にしておく必要があります。
土地の境界が不明確なままだと、本来建築できる敷地で建物が建築できなかったり、本来建築制限を受けない土地について建築制限を受けてしまったりする場合があるなど、土地の合理的利用が阻害されることがあります。
地籍調査を行うとどうなるか
○土地一筆ごとの境界を明確にした大縮尺の地図(市街地で1/500程度)が作成されるため、建築物の敷地等に係る規制の適用を明確化することができます。
○これにより、都市計画制限に係る相談や建築確認等の事務もスムーズに行うことが可能となります。
【効果5:各種公共事業の効率化・コスト縮減】
問題の所在
○道路・公園などの公共施設の整備を行ったり、防災の観点から密集市街地の整備を行ったりする際には、必ず正確な地籍、特に精度の高い地図が必要となります。
○地籍調査がされていないと、事業のたびに現地で地権者の立会を求め実測を行うなどの無駄が生じるほか、事業採択後に現地調査を行った結果、土地の境界について同意が得られず、事業の進捗そのものに多大な支障を生じたりする場合があります。
地籍調査を行うとどうなるか
○地籍調査を事前に行っていれば、計画当初から取得すべき土地の正確な境界や面積を知ることができ、地籍の状況を踏まえた計画立案がなされます。
○既に地権者により確認された境界を現地復元することにより、円滑な用地取得が行われ、名種事業の円滑な推進に貢献します。
【効果6:災害復旧の迅速化】
問題の所在
地籍調査未実施地域において、地震、土砂崩れ、水害等の災害が起こり土地の形状が変わってしまった場合、元の土地の境界に関する正確な記録がないために、復旧計画の策定や換地事務等に時間を要し、結果的に復|日が遅れるというケースがあります。
地籍調査を行うとどうなるか
個人の土地境界の位置が地球上の座標値と結びつけられ、成果が数値的に管理されることになるため、万一の災害の場合にも境界を正確に復元することができ、復旧活動に迅速にとりかかることが可能となります。東日本大震災においても、用地取得のための境界確認や測量が迅速に進むなど復旧・復興に伴う事業費と事業期間の大幅な縮減効果が確認されている事例があります。
【効果7:公共物管理の適正化】
問題の所在
○地籍調査を行うことにより、公共物の敷地の境界が明らかとなり、道路台帳など各種公共物の台帳整備に役立ちます。
○境界確認申請への効率的な対応が可能となります。
○官民境界を明らかにすることにより、住民負担の軽減が図られます。
地籍調査を行うとどうなるか
○土地一筆ごとの境界を明確にした大縮尺の地図(市街地で1/500程度)が作成されるため、建築物の敷地等に係る規制の適用を明確化することができます。
○これにより、都市計画制限に係る相談や建築確認等の事務もスムーズに行うことが可能となります。
【効果8:課税の適正化・公平化】
問題の所在
税務行政においては公平負担の原則が何よりも求められますが、土地の所有に対する課税である固定資産税の課税は、必ずしも正確でない登記簿や公図のデータを参考にしているため、正確な土地の実態が反映されず、本来払うべき額を払っていなかったり、逆に払いすぎていたりする場合があります。 また、開発などで精度の高い測量により面積を確定した人と正確でない面積で課税されている人がいることで、不公平な取扱いとなっている場合があります。
地籍調査を行うとどうなるか
○土地―筆ごとの正確な地目や面積が把握されるため、課税の適正化・公平化を図ることができます。
○成果を数値的に管理することにより、課税事務に必要な土地異動情報を正確かつ効率的に把握できるようになります。
Q.「縄伸び」とは??
登記簿に記載された面積より実際の土地の実測面積が多いことをいいます。現在でも、地籍調査により正確に測量してみると、多くの土地が公簿面積より大きくなるという現象が指摘されています。これは、明治政府が地租改正事業を行った際、住民において土地丈量を行い字眼図等を作製するという方法を採ったため、なんとか地租を少なくしたいという住民によって実際の面積より狭く測量しようとされたことと、当時の測量技術が低かったことによるといわれています。
【効果9:GISによる多方面での利活用】
問題の所在
近年、行政の効率化やコスト縮減等のため、GIS(地理情報システム)の重要性が高まっています。GISを構築するためには、ベースとなる地図情報が必要ですが、一筆ごとの土地の位置形状を明確にした地籍図がない場合は、地籍情報(境界、面積、所有者等)と様々な行政情報を正確にリンクさせることができず、利用価値が低いものとなってしまいます。また、同じ土地であっても台帳ごとに異なる図面を作成してしまう恐れがあり、管理が煩雑になります。
地籍調査を行うとどうなるか
○数値データによる大縮尺の地図(市街地で1/500程度)が作成されるため、GIS構築のベースマッブとして利用できます。
○一筆ごとの地籍情報(境界、面積、地目、所有者)を、位置を基準とするさまざまな属性情報と結びつけて利用することができ、地図と台帳の一元化が図れます。