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Vol.5 部落差別問題

印刷ページの表示 ページ番号:0002257886 更新日:2024年3月27日更新

大久保さん紹介カード

🔳 活動を行うようになったきっかけは?

大久保さん01

 私は1973年に現在のNTTグループの前身である日本電信電話公社に入社をしました。人権問題に関わるようになった一番のきっかけは、2008年にNTT西日本大分支店の人権啓発室の担当になったことです。担当になったからには勉強しなければと思い、当時、大分県が主催する講師養成講座を1年間受講しました。その後、講師にならないかと声をかけていただきました。講師になるのはまだ早いのではと思ったのですが、自分の勉強のためにも挑戦してみようと講師登録し、活動を始めました。

 講師として年間10件くらいご依頼をいただいておりますが、現在も勉強をしながら啓発活動を続けています。

 NTTを退職する前年の2017年にはNPO法人アンリッシュの立ち上げに関わりました。『アンリッシュ』は、英語で束縛からの解放という意味です。部落問題を中心に人権問題の教育・啓発を目的としています。

 退職後から現在までは、宇佐市教育委員会の社会教育指導員として、安心院中央公民館に勤務しています。人権啓発室の担当になったことがきっかけでしたが、こんなにも長い間、部落問題に関わるとは思ってもみませんでしたね。

🔳 現在の活動について教えてください。

大久保さん02

 現在の活動ですが、まず1つ目は社会教育指導員としての活動です。

 2020年に安心院地域複合支所ができ、その中に集会所が併設されました。かつてあった集会所は、地区の子どもたちが学校の帰りに寄って勉強をする学力補償の場であったり、部落差別解消教育に携わる先生方が夜遅くまで活発に意見交換をしたりする活動拠点でした。しかし、今から10年以上前に地区の子どもが少なくなったとの理由から集会所の活動はなくなっていきました。

 新しい集会所が完成し、こんなに立派な施設を使わないのはもったいないと思い、なんとか以前のような活動ができないかと考えました。安心院ブロック(安心院中、安心院小、津房小、深見小、佐田小)の校長先生や関係各所に相談している中で、先生方の研修や人権関係の会議の場として利用していただけるようになりました。2021年度、2022年度は年間3回研修会を開催、2023年度は毎月1回研修会を実施しています。私も講師として参加していますが、当事者の話を聞くことができる、貴重な場になっていると感じています。

大久保さん03

 2つ目はNPO法人アンリッシュの事務局長としての活動です。部落差別に特化した人権意識の向上を目的として、人権教育の要である、小中学生の先生方を対象に人権連続講座を実施しています。始めたのは2018年度ですが、その時は4講座開催、参加者は69名でした。コロナ禍になり、中止にした講座もありましたが、年々参加者は増えています。2023年度は10講座を計画しまして、現在は5講座が終了、参加者は延べ298名です。

 2002年に同和問題に特化する法律である、特別措置法はなくなりました。その後に小学校に入学した方が今、先生となっています。そのため、その先生方は部落問題についてほとんど学んでいないですし、知らないのです。小学校で行われていた『差別を断じて許さない』という教育の重要性をまず先生方が知る、そして子どもたちに正しく教えるということが大事です。そのため、先生方が人権教育の要と考えています。

​ これらの活動で、私は研修を計画する立場でもありますが、講師としてみなさんの前で話をしています。研修の資料作成など前準備を含めて、自らの人権意識の向上や人権感覚を磨くことになっていると感じています。

🔳 今後の活動について教えてください。

 現在行なっている部落差別解消の研修を地道に続けること、そして先生方が子どもたちに差別は絶対にだめだということを教えていくことが大事だと考えています。

 今後は現在行なっている研修の内容を充実させていかなければなりません。時代が変わり、世代が変わっていく中で、表面的な差別はだんだんとわかりづらくなっていると思います。ただ、表面的でなくなった代わりに、インターネット、SNSでの差別という新しい問題がでてきています。匿名で面白がって拡散することによって、今まで部落問題を知らなかった人も目にし、間違った認識のまま、またそれを広めてしまう。イタチごっこで非常に悩ましいのが現状です。

大久保さん04

 先生や親御さん、周りの大人もどうやって子どもたちに教えていくのか、自分たちの人権意識を変えていくのか、研修の内容も時代に合わせて変えていく必要があります。

 また、研修講師の後継者づくりも課題となっています。私を含め、講師は高齢化が進んでいます。これはどの地域でもそうではないでしょうか。このまま差別がなくなることが一番よいのですが、この数年でなくなるということはないでしょう。

 部落差別は昔の話というイメージもあるかと思いますが、当事者がなかなか自分から話ができない分、表面化しづらい問題です。その地域で代々語り継いできたマイナスなイメージをプラスなイメージに変えていくことが大事です。これは今後、私たちが活動していく上で、考えていかなければなりません。そして、いつの日か、差別自体がなくなることを信じて、活動をしていきます。

🔳 差別をなくすために行動したい人へのメッセージをお願いします。

 まずは当事者の話を聴いていただきたいですね。なかなか身近に機会がないかもしれませんが、自治体が開催している講演会などに足を運んで、できれば生の声を聴いて身近な問題として捉えてほしいなと思います。

 もう一つは人権感覚を磨くことです。普段何気なく使っている言葉が、そのつもりはないのに差別につながっている場合があります。例えば、移動手段がないことを『足がない』、端的にという意味で『手短に』というような言葉です。言う側は何気なく使う言葉でも、身体的な表現を使うことにより、疎外感・不快感を抱く人がいるということを頭に置いていてほしいと思います。

 そして差別は絶対に許さないという気持ちを強く持ち続けること。私はいつかきっと差別はなくなると信じています。差別について知識はなくてもよいのです。逆に変に知識を持たずに、これから人権感覚を磨いて、差別について一緒に学んでいきましょう。

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