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Vol.4 性的少数者の人権

印刷ページの表示 ページ番号:0002257884 更新日:2024年3月27日更新

みえのさん紹介カード

🔳 活動を行うようになったきっかけは?

 私は助産師・看護師、看護学校の教員を経て、現在は看護学校で母性看護学の外部講師を務めています。2021年には『性のお話ができるおへやmami25(マミニコ)』を設立し、大分であまり知られていない『包括的性教育』を広める活動に携わっています。

 包括的性教育は、身体や生殖の仕組みだけでなく、人間関係や性の多様性、ジェンダー平等、幸福など幅広いテーマを含む教育です。私自身が3人の子どもを育てる中で、子ども達が自然に自分の体に興味を持ち、男女の体の違いや赤ちゃんのはじまりについて不思議に思うことに気づきました。その自然な疑問に答えていくことが大事なのではないかと思っていたときに出会ったのが包括的性教育でした。

   みえのさん01 みえのさん02

 京都在住の助産師である渡邉安衣子さんが主催する『性の健康教育実践研修会』で学習を深めていく過程で、性の多様性の啓発活動を行っているトランスジェンダーの大久保暁(あきら)さんの講演をお聞きしました。

みえのさん03

 大久保暁さんの講演をはじめ、性的マイノリティについて学ぶ中で、日頃子どもたちへの性教育について感じていた疑問や共感がはっきりとしてきました。従来、男性・女性と性別を分ける考え方が一般的で、それに疑いを持つこともありませんでした。でも、勉強をしていくうちにシスジェンダーとヘテロセクシャルっていう言葉を知り、自分がどういうセクシュアリティなのかを考えるきっかけになりました。そして、男女の性差にとらわれないジェンダーニュートラルという考え方を子どもたちが早い段階から知っていくことが大事なんじゃないかと思いました。大久保暁さんの講座は新たな人生のロールモデルを知る機会になり、希望に満ちた内容でした。

 その内容にすごく感銘を受けて、大分でもっと包括的な性教育を広めたいという強い思いが、私の活動を始めるきっかけとなりました。

 

🔳 現在の活動について教えてください。

 年に数回、講師を招いて、性の多様性についての講演会を開催しています。私自身もご依頼を受けて講師を務めることがあります。私は包括的性教育の視点から見る性の多様性について話をさせていただき、参加者の理解を深めることを目指しています。最近では中学校で保護者向けの講演会があり、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)も含めた多様な性について話しました。また、小学4年生の保健の授業で外部講師としてお話させていただきました。保健の教科書には心が成長してくると異性に対しての恋愛感情が芽生えると明記されています。生徒たちに「異性ってわかる?」と聞くと、自分とは違う性別のことだということは理解しています。誰かを好きになる気持ちはとても素敵なことだということをお伝えした上で、必ずしも異性であるというわけではないし、恋愛感情が芽生えるとも限らないという点については、しっかり解説をいれるようにしています。現時点では理解しにくいかもしれませんが、小学4年生なりの受け止め方を尊重し、多様な生き方が存在することを知り、ありのままの自分でいいことを知ってほしいと考えています。

みえのさん04​ 2023年の2月には大久保暁さんを講師にお迎えして、コンパルホールで公開講座を開催しました。その他にイベントでのブースの出展など、まずは興味を持って知っていただくことを大切にし、活動をしています。

 

 

 

🔳 今後の活動について教えてください。

みえのさん05

 日本は性教育については発展途上だと考えています。少しずつ世間の流れで変わってきてはいますが、小さな頃から性や多様性に関する教育を積み重ねていく必要があると思います。思春期になって急に保健の授業で触れても、すでに恥ずかしい気持ちや先入観を持ってしまっていては、すんなりとは受け入れられないでしょう。教育の現場を急に変えていくのは難しいのですが、学校・地域・家庭がよいチームワークとなりこどもたちが暮らしやすい環境を整えていくことが大切だと考えています。

 今後は高校生に向けた多様な性についての講座を企画しています。2024年も大久保暁さんを講師にお招きして、高校生に向けて意識を広げる機会を提供する予定です。

 また、2024年には大分県でもパートナーシップ宣誓制度が導入される予定です。これによって、企業も人権問題に積極的に取り組む必要がでてくるでしょう。企業とのコラボレーションもできればと考えています。例えば研修会を通じて参加者がそれぞれの人権感覚をアウトプットする場を提供したり、一緒に働いている人たちの考え方を共有したりすることが重要だと考えています。

 

🔳 差別をなくすために行動したい人へのメッセージをお願いします。

みえのさん06​ 少しでも興味を持ったなら、まずは行動をしてみると新しい世界が広がります。そのきっかけとしてセミナーに参加をしたり、すでに活動をしている人と話してみたりするのがいいのではないでしょうか。ただし、自分を無理に変えるのではなく、むしろ自然体の自分を受け入れていくことが重要だと思います。

 私たちは育った環境や家庭の影響を受けて、さまざまな価値観を持っています。私自身、親に「女の子だからこうしたほうがいい、将来は親元にいたほうがいい」と娘を思うが故に言われたこともありました。思春期の私はすごく窮屈に感じていました。とはいえ、その時点では、私もまたステレオタイプな考えを持った人だったと思います。社会人になり、トランスジェンダーの方や性的マイノリティーの方に出会ったことがきっかけで、自分の考え方が変わりました。いろんな生き方や価値観を知って、自分にとっても性のカテゴリーがあるということを知りました。自分がいつの間にか抱えていたステレオタイプの考えではなく、ニュートラルな立場にシフトしていくのを感じました。

 私が講師を務めるときに大事にしているのは、自分の考えを押し付けないことです。異なる考え方や視点を知る機会をつくることで、視野や世界を広げる一歩になればと思っています。みなさんも周りに目を向けて、新しい世界観を受け入れていけば、少しずつ変わっていくのかなと思います。

 ※ステレオタイプ:多くの人に浸透している先入観や思い込みのこと