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Vol.3 障がい者の人権

印刷ページの表示 ページ番号:0002257883 更新日:2024年3月27日更新

曽川さん紹介カード

🔳 活動を行うようになったきっかけは?

曽川さん01 私は山口県出身で、生まれながら障がいがあり、子どものころから親元を離れて施設で生活していました。高校時代から自立したいという強い気持ちを持っていたのと、先輩がすでに就職をしていた安心感もあり、大分の太陽の家に訓練生として就職しました。最初はライン作業をしていましたが、私が元々パソコンに詳しかったことからIT部署へ配属となりました。企業の特例子会社でホームページ制作などのIT事業に携わり、2016年に独立をしました。その後、2020年に太陽の家がICT(情報通信技術)に力を入れる方針となり、再び声がかかりました。現在は、職業指導員として就労支援課のICT推進担当をしています。

 

🔳 現在の活動について教えてください。

曽川さん02​ 現在のICT推進課の利用者は10名、在宅リモートが2名です。私が再入職した頃には新型コロナウイルスの影響で在宅就労が一般的になりましたが、これが意外な形でよい方向に働いたかもしれません。通勤と在宅の両方の選択肢が生まれ、それぞれの利用者が自身のニーズや生活状況に合わせて柔軟に働くことが可能になりました。利用者の障がいも様々ですが、この多様な働き方で最大限に能力を発揮し、仕事と生活を上手く両立できるようになっていると思います。

 様々な障がいがある中でも、近年では社会への参加の可能性が大幅に広がっています。例えば、家庭に引きこもっている方や、人との対話が苦手な方に対しても、新たな働き方や社会参加のアプローチが出来つつあります。その一つが、アバターを利用したロボットカフェでの接客です。自宅や施設にいる障がい者と、遠く離れた場所にあるカフェのお客さまが画面を通してコミュニケーションをとることができます。

 アバターを通してなら、うまく会話ができ、接客の楽しさを覚える方もいます。その経験が自信となって、新しいことにチャレンジする意欲が湧くようです。自己成長の機会が広がっていっていると感じています。

曽川さん03​ また、支援員の役割は単なる介護やサポートだけでなく、障がい者と地域とのつながりを築くことも大事です。外とのつながりを持っている方はよいのですが、家庭に引きこもっている方も多く存在します。そのような状況にある方々が社会的に孤立、取り残されないように、様々なサポート活動を行っています。地域の中での情報交換やニーズの把握をして、個々の障がい者に最適な支援ができるように心がけています。

 また太陽の家では障がい者スポーツの一環として、eスポーツの普及にも取り組んでいます。eスポーツはその特性から、年齢や性別、障がいの有無に関わらず幅広い層が参加し、新たなコミュニティを作れるスポーツの一つです。イベントや大会は競技を行うだけでなく、参加者同士が交流し、障がい者プレイヤーが自分のスキルを発揮する場となっています。

 将来的にはeスポーツの分野でプロプレイヤーを輩出し、その分野でも雇用が生み出せればと考えています。また、昨年は地元自治体や企業と連携し、eスポーツと5Gの実証実験に参加しました。

 私は自身がeスポーツプレイヤーとして様々なイベントに参加し、同時に障がい者の視点から学校や自治体で講演会を行うなど、積極的に社会参加をしています。これは私が当事者でもあるという立場から社会参加をすることで、啓蒙活動の一環となると考えているからです。

  曽川さん04  曽川さん05

 

🔳 今後の活動について教えてください。

 現在、摂南大学と太陽の家が共同で、AI分野での障がい者の就労支援プロジェクトを進めています。多くの企業の様々な分野で生成されたAIで構築されたシステムが利用されていますが、そのベースとなる膨大なデータをタグ付けするアノテーション(教師データ作成作業)など、人が作業をする必要がある部分もまだ数多くあります。

曽川さん06

 この教師データ作成作業を障がい者の新たな雇用として生み出せないかという研究をしています。

 この研究でアノテーションシステムを利用している方の障がいは様々です。発作がいつ起こるかわからない方も自宅での作業だと安心して取り組めます。寝たきりで手足が動かせない方でも、口に咥えたり、目で動かすマウスを使えば、作業ができます。仕事をすることによって社会に関わっている、必要とされているという充実感が得られているようです。

曽川さん07​ AIは今後も成長が期待される市場です。そこに障がい者が関われる環境を作っていくことが私たちの役割だと思います。障がいがあってもアノテーションができるということをもっと知っていただきたいと考えています。もちろんそこには機密保持やセキュリティなど様々な課題がありますが、しっかりとマネジメントをしていくのも役割の一つだと考えています。

 

 

🔳 差別をなくすために行動したい人へのメッセージをお願いします。

曽川さん08

 私は仲間づくりがとても大事だと考えています。一方的な考えにとらわれず、互いにコミュニケーションを取ることが大切です。

 私自身の初めての社会参加は車いすバスケットボールでした。選手として参加するだけではなく、大会の運営に携わったりすることで、障がいの有無に関係なく、たくさんの仲間に出会うことができました。

曽川さん09​ 『こんなことを言うと差別になってしまうのではないか』と考えすぎるのも時には逆効果だと思います。積極的にコミュニケーションをとり、信頼関係ができれば、お互いに尊重し合うことができて、差別のない社会を築くことができるのではないかと考えています。