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Vol.2 高齢者の人権(認知症)

印刷ページの表示 ページ番号:0002256472 更新日:2024年3月27日更新

中野さん紹介カード

🔳 活動を行うようになったきっかけは?

 県の保健師として保健所に勤務していた頃、『認知症の人と家族の会』の代表が職場を何度か訪問してくださることがあり、これからはボランティア活動が必要とされる時代になったという印象を持っていました。

中野さん01​ そんなときに、嫁ぎ先の義母が80歳になる頃に、徐々に生活上の支障が出るような認知症の症状が見られるようになりました。義父母は2人暮らしだったので、義姉が様子を見にいってはお世話していました。ただ、義姉が認知症のことを知らなかったため、「どうしちゃったんだろう」とかなり混乱し、困惑していましたが、私も具体的なアドバイスができるほど知識も持っていなかったんですね。そこで会の代表から聞いていたボランティア活動のことを思い出して、「家族の会というのがあるから、一度相談してみたら」と勧めてみました。私ができることはただそれだけしかなかったんです。

 それから義姉が「介護家族の集い」に参加するようになりました。自分が本当に困っていること、抱えている悩み、苦しさを他の人に聞いてもらう。そして他の介護経験者の話を聞くことで、だんだんと認知症に関する知識が増えていったようです。人ってトンネルの中にいるときに、出口が見えないと不安になるものですよね。でも出口がある、終わりがあるとわかれば安心します。介護も同じで、他の人の経験を聞いて、いつか終わりがあるんだとわかったことで、自分自身の心が少しずつ穏やかになり楽になったようです。義母の認知症はだんだん進み、被害妄想が出るようになりました。なかなか合う施設が見つからなかったのですが、会の紹介で入った施設で、義母も家族もやっと安心して落ち着けるようになりました。95歳で最後を看取ってもらいました。

 県を退職後、何か地域貢献をしたい、そしてお世話になった会のお手伝いができればと思い、入会をして現在に至ります。

 

🔳 現在の活動について教えてください。

中野さん02 主な活動は、認知症ご本人や介護経験者同士で支え合う『ピアサポート活動』で、集い・電話相談・会報の発行を通して行なっています。電話相談の件数は年々減少していますが、それでも電話できる場所があること自体が心の支えとなっており、提供し続ける意義があると思っています。​

 また、当事者組織として私たちの声を行政に伝え、政策に反映させるための働きかけも大切な活動の一環です。昨年度、介護保険制度の給付削減などの改正に反対する意見を、大分県内の各議会に請願書として提出し、要請のあった県市町議会には出向いて、直接説明をしました。

 また、認知症に対する普及啓発活動にも取り組んでいます。小中学生や一般の方を対象とした認知症サポート養成講座を開催していますが、当会のメンバーが講師を務めています。子どもたちにもわかりすいようにグッズを作るなど、いろいろな工夫をして多くの人に認知症の人を深く知って貰う活動をしています。

 中野さん03認知症はまだまだ知られていないと感じます。たとえば、認知症を脳卒中や糖尿病などの疾患と同様に捉える人は多くないと思います。私が講師として話す際には、聞いた後に、少しでも認知症について安心感を持ってもらえるよう、身近な存在として感じてもらいたいと願っています。

 その他にも9月のアルツハイマー月間には、県下14市でリーフレット配りなどの街頭活動や記念講演会を行なうなど、啓発活動をしています。行き会った際にはぜひ声掛けください!

 

🔳 今後の活動について教えてください。

 超高齢社会を迎え、認知症の人は増え続けています。高齢者の一人暮らしも増えており、認知症が誰も気が付かないまま進行して、医療や福祉サービスを拒否し健康を損ねてしまう『セルフネグレクト』のケースも増えてきました。高齢者だけでなく、若年性アルツハイマーを発症する人、そして親の介護を理由に 40・50 代で仕事を辞めざるを得ない介護離職の増加、介護人材の不足など、社会環境も大きく変化しており、認知症に関する問題は多岐にわたります。

 さらに、社会保険や介護保険をめぐる状況というのは今後ますます厳しくなるでしょう。認知症の人と家族への支援は未だ十分ではない状況です。公的な支援に加えて、家族の会のようなボランティア組織や地域のインフォーマル(非公式)なサービスがますます必要とされていますが、地域によって温度差があるのが現実です。

中野さん05​ 家族の会の会員数は多い時は 430 名に上ったこともありますが、近年減少し、世話人の高齢化が進んでいます。世代交代もうまくいかず、担い手不足により、今までどおりの活動を維持することが難しくなっている地域もあります。

 

 

中野さん06​ 今後も、ピアサポート活動を中心に、認知症本人と家族の当事者組織として、普及啓発活動や講演会を継続的に実施し、認知症の人々をより深く理解してもらえるように環境整備を進めていきます。また、行政との協力強化や関係機関との連携を通じて、介護が必要な状態になった場合でも、認知症の人とその家族がそれぞれの人生を送ることができるようともに支え合う共生社会を目指して、さまざまな取り組みを行っていく予定です。

 

🔳 差別をなくすために行動したい人へのメッセージをお願いします。

中野さん07 差別や偏見の根本的な原因は、知識不足だと考えています。私も様々な人と対話してみて、「認知症になったらおしまい、何もできなくなる」といった思い込みや認知症になったらどうしようという強い不安を持つ人が多いように感じています。​

 認知症に対する理解を深める第一歩は、関心を持つことだと思います。講演会やイベントなど、機会はたくさんありますので、参加して、認知症の人々を支える一員になっていただける方が増えることを期待しています。

 認知症高齢者の数は2025 年には約700万人、65 歳以上の高齢者の 5 人に 1 人、85 歳以上の 3 人に 1 人に達することが見込まれています。今や認知症は誰もが関わる可能性のある身近な病気です。身近な問題であり、大切な家族、友人、近隣の人々、そして自分自身にも影響を及ぼします。これを自身の問題として受け止めることが、差別を減少させる一歩になるでしょう。

 このような自身事として関心を持つことで、徐々に認知症の人への差別がなくなることを期待します。