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農林水産業(のうりんすいさんぎょう)は、わたしたちの生活に欠(か)かせない「食料(しょくりょう)」や「木材(もくざい)」を作るというはたらきのほかにも、いろいろなはたらきがあります。
田んぼは、水をたくわえて洪水(こうずい)を防(ふせ)いだり、森林は水をたくわえたり、雨で山がくずれるのを防(ふせ)いだり、海の海藻(かいそう)は、水をきれいにしたりします。
このほかにも、いろいろな生き物の住む場所となったり、美しい農山漁村の景色(けしき)を作ったりします。
こうしたいろいろな「はたらき」は、農林水産業の「多面的(ためんてき)機能(きのう)」と呼(よ)ばれ、大きな役割(やくわり)を果(は)たしていますが、農林水産業の活動が行われていないとこのはたらきが悪くなります。
農山漁村の人だけでなく、都会の人にとっても、安心して生活していくためには、農林水産業の活動がしっかりと行われていくことが大切です。
農業と自然(しぜん)とのかかわり
農作物は、太陽エネルギーや水、空気を使って大きくなり、生き物に必要(ひつよう)な酸素(さんそ)もいっしょに作り出しています。そして、農作物は、私たちの食料(しょくりょう)や家畜(かちく)のえさになります。その後、家畜のふんにょうは、堆肥(たいひ)という肥料(ひりょう)となってもう一度農業の生産(せいさん)に使われます。このように農業と自然環境は強いつながりがあります。
家畜のふんにょうを利用した堆肥
農業と農村の主なはたらき
農業・農村は、私たちが生きていくのに必要なお米や野菜(やさい)などの生産の役割(やくわり)を果(は)たしています。しかし、それだけではありません。田んぼや畑、農村のまわりの自然は、私たちの生活に大切な役割を持っています。
このことは、「農業の多面的機能」と呼(よ)ばれています。農業・農村が持っている主な役割について考えてみましょう。
「国土を守るはたらき」
田んぼは、あぜにより雨水を一時的(いちじてき)にたくわえることができます。このため、雨水が急激(きゅうげき)に流れ出ることを防(ふせ)いだり、河川の下流での洪水や周辺(しゅうへん)での浸水(しんすい)を防いだり、少なくするというはたらきがあります。
また、畑にも、雨水を一時的に貯えることで、洪水を防ぐはたらきがあります。そのほかにも、地すべり、土砂(どしゃ)くずれなどが起きないようにするはたらきもあります。
このように、農業は国土を守るために大きな役割をはたしています。
「水田や畑はおいしい水を私たちにあたえてくれます」
田んぼにたくわえられた水は少しずつしみこんで地下水となるほか、直接、河川を流れるよりも長い時間をかけて下流にもどされ、川の流れの安定に役立ちます。
このように、田んぼには、私たちが生活するのに必要な水源(すいげん)である地下水を豊(ゆた)かにする機能や川の流れを安定させる機能があります。
また、収穫(しゅうかく)後の田んぼや畑からも雨水の地下にしみこんでいくことによって、地下水を増やすことに役立っています。
「安らぎをあえるはたらきと良好(りょうこう)な景観(けいかん)をつくるはたらき」
まっすぐなあぜ道や、曲がったあぜ道、大きい田んぼ、小さい田んぼ、四季(しき)による色の変化(へんか)もとてもきれいなものです。
農村で農業を行うことによって良好(りょうこう)なけしきが作られています。きれいな水、すんだ空気、美しい緑、都市では見られない景色(けしき)や自然、環境、そしてうるおいや安らぎを求めて、農村に多くの人々が訪(おとず)れています。
最近は、こうした景色やながめは長い時間をかけて、人が農業を通じて自然と対話するなかでつくられてきたものです。都市に住む人が農家民宿(みんしゅく)にとまって農業を体験したり、農村の文化・自然にふれたりと、農村での人と人とのふれあいや交流が人気になっています。
森林は、木材を生産するだけでなく、地球の温暖化を防いだり、水をたくわえたり、山くずれや洪水を防ぐなど、たくさんの大切な働きがあります。
どのような働きがあるのか、ひとつずつ見てみましょう。
1.地球の温暖化を防ぐ
木は、二酸化炭素を吸収し、酸素を出します。森林は空気中の二酸化炭素を減らし、地球の温暖化を防ぐ役割をします。
2.水をたくわえる
森林は、「緑のダム」と言われるようにスポンジのように雨水をたくわえ、水をきれいにしながらゆっくりと河川へ流しています。
3.土砂災害(どしゃさいがい)を防ぐ
森の土の中は、木の根があみの目のように張りめぐらされていて、森の土が流れたり、くずれたりするのを防いでくれます。
4.多様(たよう)な動植物の生息地(せいそくち)
森林は、植物や動物など多くの生き物のすみかとなっています。 また、貴重(きちょう)な動植物を守るためにもなくてはならない存在です。
5.快適な生活環境をつくる
海岸にそって植えられたマツなどの海岸林(かいがんりん)は、海からの強い風や砂を防いでくれます。 また、樹木には排気ガスなどの大気中の汚染物質(おせんぶっしつ)を吸収して空気をきれいにする働きもあります。
海岸林(国東市)
6.レクリエーションや体験の場
山登りやキャンプなどをして遊んだり、自然観察(かんさつ)などを楽しむ場をあたえてくれます。 また、森にはリラックス効果(こうか)があると言われています。
森のキャンプ場 自然観察会
7.木材やしいたけなどの生産の場
森林から生産される木材は、住宅や家具(かぐ)のほか、紙や燃料(ねんりょう)など様々なものに使われています。また森林は、しいたけやきのこ、山菜などの様々な林産物(りんさんぶつ)も供給(きょうきゅう)してくれます。
しいたけ 山から伐(き)り出された丸太
「藻場(もば)と干潟(ひがた)のはたらき」
藻場(もば)は、海藻(かいそう:海草)が、たくさん生えている場所であり、干潟(ひがた)は、遠浅(とおあさ)の海で潮(しお)がみちればかくれ、ひけば現(あらわ)れるような砂(すな)や泥(どろ)の場所です。
これらの藻場・干潟は、有機物(ゆうきぶつ)の分解(ぶんかい)、ちっそ、りんなどの取りこみにより、水をきれいにするはたらきを持っており、魚や貝などの産卵(さんらん)や生育の場ともなっているため、守っていくことが大切です。
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干潟(ひがた) |
藻場(もば) |
「海や川を大事に使おう」
水産(すいさん)生物は、海や川で生まれ、育ち、やがて子どもを残(のこ)して死んでいきます。この間に、えさの量(りょう)や水温などの自然(しぜん)の影響(えいきょう)で、数が増(ふ)えたり減(へ)ったりします。
でも、自然(しぜん)の影響(えいきょう)だけではありません。人間がとりすぎたり、海や川を汚(よご)したりして、育つ環境(かんきょう)が悪くなると減(へ)ってしまいます。
水産業(すいさんぎょう)は、海や川で魚や貝などをとって、皆さんに食物を供給(きょうきゅう)する産業(さんぎょう)です。漁業者(ぎょぎょうしゃ)は、魚などをとりすぎないようにきまりを作ったり、漁場(ぎょじょう)を守ったり、稚魚(ちぎょ)を放流(ほうりゅう)するなどして、資源(しげん)を守っています。