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農業を行う法人名 株式会社グレイズ |
株式会社グレイズ 代表取締役の一宮氏
経営の特徴について
牛の周年放牧を行っています。放牧により母牛は足腰が強く、分娩の時間が通常の牛舎飼育に比べ短かくなります。また、夜間の分娩は母牛に任せることがほとんどで、あまり手がかからないというメリットがあります。
以前は、母牛が出産後、一定期間子牛と母牛を同じスペースで生活させていましたが、現在は、管理がしやすいよう飼料スペースと母牛の授乳スペースに分けています(子牛は行き来可能)。子牛は、産まれた直後から丁寧に管理していますので牛舎飼育と遜色ない生育量になっています。
農業参入のきっかけを教えてください
母体が林業の会社で多くの山を保有していました。そのうち1つが全伐された際に、緩傾斜の使い勝手の良い土地でしたので、植林のみに留まらない活用方法を検討しました。
当初はユズ栽培を考えていましたが、高標高地(標高550m)で寒いため栽培が厳しく、かわりに県から放牧はどうかと提案がありました。元々、父が放牧に好意的で、頭の片隅で放牧も考えていたこともあり、本格的に検討し始めました。
参入を決めてから営農開始までの経過を教えてください
まずは、豊後高田市の肉用牛放牧経営を視察に行き、放牧方法について聞きました。その後、所有していた休耕田で牛を県から2頭借り受けて(レンタカウ)飼育したところ、大きな問題なく飼育できました。そこで本格的に畜産業を始めようと考え、牧草を播種し、母牛を3頭購入して営農を開始しました。
“放牧”をするにあたって苦労したこと
特に出産関係が大変でした。
当初は、牛舎が不要な親子放牧で経営を計画しており、最初の子牛を出産する際はレンタカウ飼育時に建てたビニールハウスで行いましたが、出産後も母牛が子牛のそばを離れないなど、想像以上に管理が難しかったです。また、放牧している山の中で出産した際は、社員数人を連れ、子牛を山から牛舎に追い込むことに苦労しました。
そのため、自分独自の飼育方法に切り替えようと考え、子牛だけが餌を食べられる飼料スペースと母牛の授乳スペースを設けた牛舎を建設しました。また、母牛の管理についても、出産が近い母牛は放牧地から牛舎に連れ戻し、そこで出産させるようにしました。
本業の強みが活かせている点は何でしょうか?
母体の会社が重機を保有していたため、整備が容易にできました。伐採後の山は枝がかなり落ちており、牧草が播種できる状況ではありませんでしたが、本社の機械を利用しすばやく枝を除去できました。さらに、土地の整備についてはバックホーを活用しました。
また、人手が必要な牧草播種作業は社員と行ったり、牛舎建築用の資材を手に入れたりと、特に開園~初期は、本業の強みを活かすことが出来ました。
現在の課題
1つは、飲水用の水問題です。特に冬は、高標高地で水が凍り、飲水できない状況があります。食事量にも関係するためヒーターで温めて飲めるようにしなければいけません。
2つめは、牛が増加するにあたって、分娩する場所が足りなくなってきています。
これらの課題解決のため、来年度新しい牛舎を建設し、飲水用タンクの整備と分娩房を確保する予定です。
今後の展望
当初、牛の飼養は、本社の一般法人で行っていましたが、数年前畜産部門を独立させて新たに会社を設立しました。
現在は、産まれた雌牛を内部保留し、母牛を40頭まで増やしましたが、15haある放牧地を有効活用すれば母牛だけで100~120頭飼育できると考えています。(分娩前後の牛を牛舎管理、残りを放牧)そのため、来年度は、4つめの牛舎を建設し、増頭の足掛かりにしたいと考えています。
母牛50頭、子牛を40頭出荷すれば雇用ができるので、直近は、そこを目標に頑張っていきます。
新規参入企業へのアドバイス
農畜産業は、ほかの産業と比べて他者に干渉されず、自然に触れる作業が好きな人に魅力的な仕事です。
なお、畜産業は、事業費が大きいため、(1)レンタカウで試し飼育をしてみる、(2)やめた牛舎借りて数頭で始めてみる、(3)農家研修を行うなど、小規模から始めてリスクヘッジすることで成功に繋がると思います。