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建設業の農業参入 株式会社カヤノ農産

印刷ページの表示 ページ番号:0002176310 更新日:2022年4月1日更新
企業概要

農業を行う法人名 株式会社カヤノ農産
参入企業名    株式会社昭和建設工業 
参入年度     2006年9月
所在地      大分県杵築市山香町大字久木野尾字西カヤノ原1753番地48
経営品目、面積  茶 70ha
従業員数     社員10人、パート20人

 

経営の特徴


(株)伊藤園との契約栽培によるドリンク用荒茶の生産を行っています。参入当初から計画的に規模拡大を進め、2021年現在では70ha、大分県内で最大の茶園です。最初から大型機械での作業を想定し、1圃場の面積を既存農家の2~5倍の規模である約1haとしました。圃場の4面には作業道を設置しており、作業効率が非常に良い茶園となっています。


農業参入のきっかけを教えてください


 参入当時、大分県は緑茶業界最大手の(株)伊藤園から茶産地育成の打診を受けており、県としてもこの事業を成功させるため、多角経営を模索していた当社に話があり農業参入を決めました。2006年9月に(株)伊藤園、大分県、杵築市、臼杵市の4者で100haの茶園整備を行う「茶産地育成協定」が締結され、当社は農事組合法人カヤノ農産を設立しました。(※2021年に株式会社化)

 

茶を選んだ理由は?


 母体の関連会社が、造成工事、道路工事を得意としており茶産地造成を自社で行えること、茶は農業の中で機械化が進んだ品目で建設会社に向いていると思ったからです。
 お茶は投資回収に時間がかかる反面、天候の影響を受けにくく、病害虫にも強いですからリスクが少ない点も企業経営向きです。また、販売先が大手飲料メーカーへの全量販売というのも魅力でした。営業費用が不要ですから。
 その他、従業員に茶農家出身者がいたこと、茶栽培に適したまとまった土地が見つかったことなど様々な巡り合わせあり、茶生産事業への参入を決めました。

(左から)株式会社カヤノ農産 遠藤 建作会長、中村 一郎社長

(左から)遠藤 建作会長、中村 一郎社長

 

参入を決めてから営農開始までの経過を教えてください


 農地については、茶栽培に適し、平坦でまとまった土地がたまたま見つかり、破産管財人から安価に取得することができました。
 生産技術については、当社社員に茶の兼業農家を営む者が在籍していたことから、茶の植栽、育成、加工技術に至るまでの基本技術がありましたし、さらに茶の本場である静岡県、鹿児島県の茶園に出向き、ノウハウの習得に磨きを掛けました。
 人材の確保については、ハローワークの求人や雇用していた従業員の紹介や母体企業からの人材派遣で必要な人材を確保しました。

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参入にあたって苦労したことは?


 購入した農地は昔、桑畑だったところですが、荒廃し山林状態になっていました。畑にするまでには伐採、石礫の除去が必要で大変苦労しました。
 植栽直後は木が小さいため、通常ですと雑草対策が大変なのですが、当社ではグループ会社所有の木材チップを敷いてみたところ、これが功を奏し、雑草抑制や土壌水分保持が低コストでできました。
 茶は初期投資金額が多大ですし、植栽から収穫開始までに5年かかります。それまでの間は返済財源が確保されないことから、融資の承諾をいただくまで押し問答があり、一時は茶園事業撤退も考えました。結果的には融資を受けられ、5年間の返済据え置きや無利子措置により資金繰りが安定したことが経営の礎になりましたが、採算を得るまでの数年間はやはり母体企業からの支援が不可欠でしたね。
 また、取得した土地の気温がやや低く、一番茶の収量が思ったよりとれないなど、生産面ではしばし悩まされました。

 

参入して良かったことは?


 様々なメディアに取り上げられ、母体企業に対するイメージアップができたことです。
 購入した土地を畑に造成する受注工事を母体工事が請けられた点で本業にもメリットがありました。さらに、母体企業が圃場の造成を経験したことでノウハウが蓄積され、他社が新規に農業参入する時にアドバイスができた他、他社の果樹園造成工事等の受注が入るようにもなりました。

 

建設業の強みが活かせている点は何でしょうか?


 母体の関連会社が重機を所有し、造成工事、道路工事を得意としていることから、茶園の拡大が容易な点です。自社施工はスピード感を持って進められるので、規模拡大を計画的に進められました。販売先からの需要もまだまだあるため、さらなる規模拡大も視野に入れています。

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最近の業績について


 当社は15年後までの事業計画を常に作成しているのですが、令和3年度実績では、3年後の計画を前倒しで達成しました。令和6年度には売上2億円を見込んでいます。
 業績が伸びてきたのは、小さな工夫の積み重ねの成果です。最近も茶園用の堆肥散布機や茶葉の箱詰め機など、省力化・効率化につながる機械をメーカーと協力して開発しました。

 

現在の課題は?


 生育の良くない圃場がありますので、圃場に適した品種への改植を進めています。また、茶の生産量が増えたことから、加工処理量の限界に近づき、加工場の増設を検討しています。
 茶園運営には茶の育成から加工まで精通した人材が必要です。職位、キャリアに見合った給与体系を構築するとともに、人材育成を進めていきたいと考えています。

 

最近、経営継承をされたそうですが


 しばらく前からカヤノ農産の後継者を誰にするか悩んでいました。事業が軌道に乗ったこともあり、県外に在住していた娘夫婦に会社の現状、将来像等を詳しく説明したところ、事業を引き継いでくれることになり、2020年12月に娘婿が社長に就任しました。

 

今後の展望(中村社長より)


 社長就任から1年でまだまだわからないことも多いですが、農業は自分が取り組んだことで、課題が解決していく手応えが得られ、非常におもしろいと感じています。
 また、社内運営面では、従業員がカヤノ農産に勤務していることへの誇りが持てるよう、待遇の良さとやりがいを兼ね備えた会社にしていきたいと考えています。

 

新規参入企業へのアドバイス


 農業参入は国、県、市の支援を受ける場合も多く、事業開始前からコミュニケーションを図れる体制を作っておく必要があります。
 加えて農業は初期投資が大きいため、日本政策金融公庫やメインバンクの支援が不可欠です。あらかじめ相談や事業計画の詳細な説明を十分に行い、経営が軌道に乗るまで支援を受けることが特に重要です。