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農家と企業の提携 株式会社匠牧場

印刷ページの表示 ページ番号:0002168127 更新日:2022年1月21日更新
企業概要

農業を行う法人名 株式会社 匠牧場
参入企業名 株式会社匠 (県外飲食業、焼き肉店運営、食料品の製造)
業務提携開始 2016年度
所在地  大分県杵築市
経営品目、面積 肉用牛肥育700頭
従業員数 社員6名、パート4名

片桐社長写真

            株式会社匠牧場 代表取締役の片桐和彦氏

 

「株式会社匠牧場」について


 当初は義父の家業を継承し、一畜産農家として隣接の豊後高田市で黒毛和種の肥育を100頭規模で行っていました。畜産経営を始めた頃は配合飼料を使っていましたが、経費を抑えたおいしい牛肉づくりを追求した結果、自ら餌の配合を行うようになり、現在では焼酎かす等のエコフィードや国産穀類を活用したオリジナル飼料を自社で配合しています。
 おいしい牛肉を消費者に届けるために事業規模を拡大する目標があったので、平成28年に現在の畜舎を建設し、黒毛和種700頭を飼養する「匠牧場」を設立しました。

牧場全景


「株式会社匠」が経営参画したきっかけを教えてください


 大阪で焼き肉店を経営している「株式会社 匠」の古川社長がうちの牧場を視察に来たのが最初のきっかけです。社員やアルバイトの方を連れて視察に来られた際、一緒に焼き肉を食べにいったのですが、アルバイトの大学生が肉についてとても詳しかったんです。「この肉はこういう角度で切った方がもっと柔らかいのに・・」と言っているのには驚きましたね。それでどんな社員教育をしている焼き肉屋なんだろうと気になって、大阪に行ったついでにお店に行ってみたのがきっかけです。そこで古川社長と意気投合して、うちの牛肉を出荷することに決め、平成26年頃から取引を始めました。
 平成28年、杵築市山香町での新たな牧場を建設に合わせて、株式会社匠牧場を設立し、古川社長には取締役に就任してもらいました。
 取引を始めた当初は「株式会社 匠」へ多くを納めていましたが、規模拡大で出荷量が増えたので、現在は出荷頭数の1/3を「株式会社 匠」へ、1/3を輸出用、その他が1/3という割合で出荷しています。

牛に餌を与える片桐社長
 

経営の特徴は?


 和牛というと脂っこくてあまりたくさん食べられないイメージがあると思います。私は消費者の方に牛肉をたくさん食べていただきたいので、「毎日でも食べられる牛肉」を目指して、エサには徹底的にこだわっています。
 焼酎かすや米など様々なエサを自社でブレンドし、あっさりした味わい、できるだけ味のぶれが少ない牛肉の生産を目指しています。「ブランド」をつくるにはぶれない味を作らないと。2回買って味が全然違ったら、3回目のリピートはないですから。

 

提携して良かったことは?


 「株式会社 匠」に直接出荷することで、第3者から味の評価をフィードバックしてもらえるというのは非常に大きな価値です。畜産の場合、生産者と消費者の距離が遠いですから、すべて市場に売ってしまったら自分の育てた牛肉の評価がわかりません。焼き肉匠から「この間の肉は良かった」「いまいちだった」と反応をもらえることで、エサや血統の改良を積み重ねることができます。昔に比べて、自分が理想とする味に近づいたと思っています。
 また、(株)匠とは年間通して一定の価格で契約していますので、中長期計画が見通せ、経営の安定化を図ることができます。
 従業員教育でも互いに協力していて、弊社の従業員を(株)匠の焼き肉店に数ヶ月研修に行かせています。どういう肉がおいしいのかを学んでくることで、研修後は牛の見方・育て方も違ってきます。逆に、(株)匠の従業員も2週間ほど牧場研修に来てもらっています。牛を育てるところから知っていると焼き肉店の接客でもお客さんに深い知識を伝えることができるそうで、非常に好評ですね。

 

提携関係をうまく維持するために工夫していることは?


 特に苦労はないですよ。取引量が多く、仕入担当者や店舗担当者とは連絡は自然と密に行えているので、いい関係が保てていると思います。
 また、牛には個体差があるので、どうしても3~5等級というように肉質にばらつきがでてしまいますが、できるだけ偏らないよう工夫しています。焼き肉店では肉質にブレ幅が大きいと顧客の期待を裏切ることになります。高い等級ばかり、低い等級ばかりとならないよう、ちょうどいいバランスをとって出荷する方が、お互いのブランドを守る上で重要なんです。

 

匠牧場には女性従業員が多いようですね


 うちは従業員10名のうち5名が女性です。「動物好きの方」で募集すると、女性の応募も意外とありますね。畜産は重労働のイメージがあると思いますが、女性でも作業しやすいよう徹底的に機械化を進めています。大型免許なども入社後に会社負担で取得してもらうようにしています。最初は大型機械の運転を怖がる方もいますが、慣れれば機械の扱いも丁寧でうまいですよ。
 また、牛舎には定期的にミネラル水を散布するなど、臭いを低減する工夫もしていて、気持ちよく働いてもらえる環境整備にも気を遣っています。働き方が柔軟に選択できる点も重要です。子供が風邪を引いた時などは従業員間のグループラインを使って休みを融通しあうなど、うまく協力してやってくれています。

 

現在の課題は?


 飼料価格の高騰が課題ですね。焼酎かすなどの食品加工残渣やSGS※など様々なエサを自社でブレンドすることでコストを大幅に削減しています。世界情勢の変化で、今後ますます状況は厳しくなっていくことが予想されるので、対策を検討中です。
 ※SGSとは・・・米を乾燥させず嫌気発酵させた飼料のこと

機械

 

今後の展望について教えてください


 焼き肉店と精肉加工所を県内に出店する予定です。間違いのない良い商品を適正な価格で提供する店をやりたいと考えています。焼き肉店のオープンにあたっては「株式会社匠」から協力を得る予定です。人やノウハウの面で、業務提携している強みが活かせると思います。

 

企業との業務提携を考える農家へのアドバイス


 飲食店はオンリーワンの農産物をほしがるところが多いので、農業者と飲食店の提携による農業参入は今後も増えていくのではないでしょうか。大事なのは相手企業との規模・レベルが近いこと、マインドが同じ方向を向いていることです。これが合っていないと関係は長続きしないでしょう。農家が作り手としてのプライドを持って、対等に付き合える関係であればいいビジネスができると思います。