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農業を行う法人名 社会福祉法人 農協共済別府リハビリテーションセンター |
ウェルファームMINORIの職員と利用者の皆さん
農業参入のきっかけを教えてください
当法人はJAグループですから、農業で何かやりたいという考えは当初からありました。 1991年から入所者訓練として小規模の水耕トマト栽培をしていましたが、2010年に75aのハウスを新設し、就労継続支援事業(B型)をスタートしました。
ミニトマトを選んだのは片手が不自由な方や車椅子の方でも収穫作業ができること、サイズが小さく収穫の手間がかかるため多くの利用者の作業につながること、大玉トマトに比べて市況が安定していることが理由です。
経営の特徴は?
オランダのフェンロー型ハウス3棟でミニトマトの長期多段取り栽培を行っており、定植時期をずらすことでほぼ周年、収穫ができます。ハウス内は環境制御システムによって温度・湿度・CO2濃度を自動で制御しています。また、ハウスの加温には温泉熱を利用しているため、光熱費を大幅に抑えることができているのは経営上大きなメリットです。
年間90~100トンの生産量のうち、9割弱はJAべっぷ日出を通じて市場へ出荷し、1割は別府市内のホテル・旅館や直売所に出荷しています。
障がいのある方が多く働いていらっしゃいますが、工夫していることはありますか?
様々な障がいを抱える方がいますので、栽培施設はもちろんバリアフリーですが、ソフト面での取り組みが重要ですね。利用者に安心して利用していただけるよう、作業環境を定期的にチェックしたり、職員勉強会やKY活動を行って支援スキルの平準化に努めています。
就労訓練にあたっては農作業の一連の実習をしてもらい、障がいの特徴や程度、本人の希望を見ながら、利用者の方に合った作業をマッチングしています。そのため利用者の定着率はとても高いですよ。
車椅子のまま使えるよう高さや幅を合わせた調整作業台
社会福祉法人が農業を行うことのメリットは何でしょうか?
事業所内で作業の確保ができることが大きなメリットですね。B型事業所は利用者のために毎日一定量の仕事を用意する必要があります。コロナ禍のため土産物製造販売会社からの受注作業は大きく減少してしまったのですが、ミニトマトの作業は周年あるため、作業をしっかりと提供できました。また、施設外就労に比べて移動時間がなく効率よく働けるため、利用者の工賃確保にもつながっています。
園芸療法とも言われるように苗を植え、育て、収穫するという仕事は心身に良い効果があるようです。利用者からは、「ものづくりの楽しさを感じられる」「食べ物を作ることで社会に貢献していると実感できる」との声も聞いています。
社会福祉法人の強み、ノウハウが農業で活かせている点は?
身体障がい、精神障がい、知的障がいの方がいらっしゃいますので、誰もが安全に働きやすい仕組みづくりのノウハウが蓄積されています。例えば熱中症対策では、暑さ指数をパソコンで常に監視し作業時間を短縮したり、飲み忘れがないよう経口補水液を配ったりといった、個人任せではない仕組みを構築しています。
現在の課題は?
資材費や燃料光熱費などコストの上昇が脅威です。段ボール箱や施設資材の見直しでコスト削減努力をしています。また、利用者の高齢化が進んでいるため、支援学校と連携して卒業生の一般就労に向けたトレーニングを受け入れるなど、若い方の利用を増やす取り組みを進めています。
今後の展望について教えてください
コロナ禍の影響で軽作業の受注は1/3になってしまいました。そこで、ミニトマトに加えてコロナ禍等の影響を受けにくい新規事業を検討中です。また、当法人の工賃はB型事業所平均を超えていますが、さらに利用者の方に満足いただける工賃が出せるよう、経営改善に努めたいと考えています。
新規参入企業へのアドバイス
社会福祉法人が農業参入を考える場合、利用者数に合った規模の経営を考える必要があります。毎日仕事がある安心感は利用者の大きなメリットになりますが、農業を始めるには多くの投資が必要です。小規模な社会福祉法人の場合は既存の農業法人と連携して農作業を受託する道を探るのも一つの手ではないでしょうか。