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台風対策マニュアル(花き)
事前対策
1.共通事項
(1)収穫可能なものはできる限り収穫を急ぐ。
(2)施設花きではハウスの補強、露地花きでは支柱の補強、ベタがけ資材の準備等を主に行う。予備の被覆ビニール、ハウス資材、病害虫防除のための薬剤等を確保し、代替作物の検討も行っておく。
(3)十分な排水対策を行う。防風ネットを装備できるところは準備する。
(4)塩害も併行して起こるので、特に海岸部ではベタがけ資材の準備や散水施設の点検を行う。
2.施設花き
(1)ハウスの点検
ア.ビニール等被覆資材が破れていないか点検し、破れは完全に補修する。ビニールのたるみをとり、ハウスバンドをしめ直す。また、バンド受けの鉄線ワイヤーやらせん杭のゆるみがないか点検し、整備する。
イ.ブレース、ボルト・ナット、Tバンド等の金具がゆるんでないか点検し、締め直す。
ウ.強風による飛来物で被覆資材が破損しないよう、ハウス周辺の点検・片づけを行う。
エ.加温機の煙突は除去し、加温機、油タンクは倒壊しないよう杭等で固定し、油漏れのないようにバルブを締める
(2)ハウスの補強
ア.ハウス本体の傾きや、曲がり、ゆれを防ぐために、パイプ、ワイヤー等で補強する。サイドや谷をスプリングでとめる。
イ.ビニールのバタツキを防ぐために、ハウスネットを使用する(褄部、天井部)。周囲に防風ネットを設置し、ハウスヘの風をやわらげる。
ウ.ハウス周囲に側溝を施し、すみやかに排水させることで基礎を安定させ、雨水の流入を防ぐ。
エ.出入口や換気口から風が入りこまないよう、杭、ハウスバンド、ロープ等で固定する。
(3)台風が近づいてきたら
ア.強風により、ハウス本体の破損が予測される場合は、ビニールを取り除く。
イ.換気扇のついているハウスは、吸気口を閉めて換気扇を運転する。ただし、吸気口を完全に閉めると圧力がかかりすぎてブレーカーが落ち、換気扇が停止する場合がある。そのようなタイプの換気扇は吸気口を一つは開けて空気の入り口を確保するか、換気扇の運転数を少なくする。停電に備え、発電機をリース等により手配しておく。
3.露地花き
(1)生育途中~出荷期のものはネットと支柱のゆるみを直し、補強を行う。草丈が低い場合は、通気性のある被覆資材等で全面を覆い、台風通過後にただちに除去する。
(2)半電照栽培の電照設備等は電球やカサをはずしておく。
台風通過後の対策
1.施設花き共通事項
(1)ビニールハウス等施設は閉め込むと高温多湿となり、病害が発生しやすくなるので、台風通過後、すみやかに換気し、薬剤散布を行う等、防除を徹底する。
(2)破損部分の修復を行う。特に、被覆資材の発注・確保を早急に行う。
(3)自動開閉装置等が正常に作動するか、配電板やブレーカーの点検を行う。ボイラー本体、タンク、配管等を確認し、水等の混入がないか確認する。
(4)生育中にハウス内が冠水した場合、水の排出速度は遅くした方が株の傷みがやわらぐため、ドア等により排出速度を調節する。
2.露地花き共通事項
(1)冠水した圃場は、すみやかに排水する。
(2)株が倒伏した場合、台風通過後ただちにネットや支柱とともに起こし、土寄せできるものは土寄せする。はね上りで葉裏等に泥が付着している場合、よく洗い流す。
(3)潮風を受けた場合や台風通過時の降雨量が少ない場合は、ただちに散水し、茎葉に付着した塩分を洗い流す。回復後薄めの液肥を施用する。
(4)病害虫が発生しやすくなるので、薬剤散布を行う等、防除を徹底する。
3.キク
(1)露地ギクは倒伏した場合、台風通過後、ただちに引き起こし、葉に付いた泥や付着した海水(塩)等を洗い落とし、殺菌剤の散布を行う等、病害防除を徹底する。
(2)半電照ギクや年末電照ギクで停電が3日以上続いた場合、その後電照を再開しても柳芽になることが考えられるので、発蕾時に柳芽を早めに処理する。
(3)生育初期に風で吹き回された場合は、株元がしっかりしているものは軽い土寄せを行ない、2週間後に液肥を施用する。地際部に立枯性病害の発生も考えられるので、殺菌剤の散布を徹底する。
4.バラ
(1)施設の破損で強風が吹き込み株が傷んだり、落葉が発生した場合、枝を新たに折り曲げ、葉数を確保する。
(2)べと病、灰色かび病が発生しやすくなるので、台風通過後、すみやかに換気し、殺菌剤の散布を行う等、病害防除を徹底する。
5.トルコギキョウ
(1)採花中に施設を閉め込むと、灰色かび病が発生しやすくなるので、台風通過後、すみやかに換気し、殺菌剤の散布を行う等、防除を徹底する。
(2)生育中にハウス内が冠水した場合、排水後に付着した泥や海水(塩)等を洗い落とし、殺菌剤の散布を行う等、病害防除を徹底する。生育が回復した後、芽の整理を行い、生育の良い芽を立たせる。
6.ホオズキ
(1)収穫可能なものは早めに収穫し、涼しい場所で水上げし、水は毎日交換する。
(2)生育途中のものは、支柱を補強し、ヒモでしっかりと支柱に留める。
(3)露地ホオズキは斑点細菌病の増加が予想されるので、台風通過の前後に薬剤防除を徹底する。倒状したものは台風通過後ただちに引き起こしを行ない、葉に付いた泥や付着した海水(塩)等を洗い落とし、殺菌剤の散布を行う等、病害防除を徹底する。
7.シンテッポウユリ
(1)倒れた株はすみやかに起こし、できるだけ土寄せを行い、回復を早める。
(2)葉枯病の発生が予想されるので、殺菌剤の散布を行う等、病害防除を徹底する。
(3)採種用株で風雨による傷みがひどい場合、切り取って水上げしながら種子の熟度を高める。
8.シュッコンカスミソウ
(1)抽台して間もないものやこれから抽台するものは、ロゼット防止のためネットや支柱により芽をできるだけ起こす。
(2)主枝が折れたものでも側枝の収穫が可能な場合は、折れた枝を整理し、殺菌剤の散布を行う等、病害防除を徹底する。
9.カーネーション
(1)枝折れ等株の傷みがひい場合は、残りの収穫期間を考慮し、切り戻して仕立て直し、殺菌剤の散布を行う等、病害防除を徹底する。
(2)被害が大きく採花不可能な場合は、苗を注文し、植え替える。
10.ストック
(1)定植直後の株や、育苗中で苗が傷んだ場合、ただちに種子を確保し、まき直す。
(2)倒れた株はすみやかに起こし、できるだけ土寄せを行い、殺菌剤の散布を行う等、病害防除を徹底する。
11.センリョウ
(1)茎葉に付着した海水(塩)等をすみやかに洗い落とし、殺菌剤の散布を行う等、病害防除を徹底する。
(2)遮光用の寒冷紗が破損した場合、当面の処置として、古ビニール等で覆う。
(3)曲がった枝は、立て直しを行う。
12.グラジオラス
(1)抽台していないものは茎が折れないよう、2~3回に分けて丁寧に起こす。
(2)起こすのが遅れ、切り花としての価値がなくなったものは、花を飛ばし翌年の切花用の養成球にする。
(3)採花が終わったもので、2~3枚下葉が残っているものは病害虫防除を徹底する。