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日照不足等技術対策マニュアル(果樹)
日照不足対策
1.果樹共通
(1)日照不足により枝梢が軟弱徒長傾向となっているため、適期防除を徹底する。一部の果樹では既に収穫が始まっているものもあるので、収穫前の安全使用基準には十分注意するようにする。
(2)根の活力が低下していることが考えられるので、園内排水路の確保とあわせて敷き草、敷きワラ等の有機物のマルチングにより樹勢の維持・強化を図る。
(3)受光条件を良くするため、防風林の刈り込みや、枝の混んでいる部分の枝抜き・誘引を徹底する。
2.ハウスみかん
(1)成熟期、収穫期を迎えた園では、適期収穫に努め、浮皮の発生を防ぐため土壌水分の変化に常に注意するとともに、必要に応じてハウス内の換気を行う。また、園内への水分流入を防ぐためハウス外周部の排水対策を行う。
(2)ハウス周辺の防風垣の刈り込みや枝つりの手直しによりハウス内の通風採光を良くし、着色促進や浮皮防止、夏芽の緑化促進に努める。
3.カンキツ類(露地)
(1)黒点病の発生が予想されるので、降雨前後の定期的な予防散布(防除の目安は降水量200mm)を徹底するとともに伝染源である枯れ枝除去と剪定くずの適切な処理を行う。
(2)マルチ被覆予定園では早急にマルチを被覆する。
4.な し
(1)果実の肥大と糖度の向上を図るため、過繁茂した枝梢の枝抜き・誘引等を徹底し、受光条件をよくして、充実した結果枝を育成する。
(2)二十世紀、新水では黒斑病、幸水・豊水・新高・晩三吉では黒星病の防除を徹底する。ただし、収穫直前の防除については、農薬の安全使用基準を遵守する。
(3)長雨、低温、日照不足等によって果皮色よりも果肉の成熟が早いため、収穫期の判断を誤らないよう留意し、適期収穫に努める。
5.ぶどう
(1)土壌水分の過剰および日照不足等により成熟の遅延、裂果、着色不良、枝の登熟不良が発生するので、排水対策等を徹底する。
(2)特に巨峰等では、新梢が過繁茂し充実不足となり、翌年の花振るい現象が予想されるので、受光条件をよくするため副梢の除去・摘心等の管理を徹底して新梢の充実に努める。
(3)べと病、かっぱん病、晩腐病の防除を徹底する。
夏秋季の対策
1.ハウスみかん
(1)収穫中の園では、適期収穫に努め、浮皮の発生を防ぐため園外からの土壌水分の流入に注意し、必要に応じて換気扇による強制換気を行う。
(2)収穫後は天井被覆を利用して、夏枝発芽時の気温確保を図り、夏枝の充実・硬化促進、2次発芽抑制のため土壌水分を調整する。またミカンハモグリガ等の防除、葉面散布剤の散布を徹底する。
2.カンキツ類(露地)
(1)黒点病の発生が続くと予想されるので、収穫前の安全使用基準の範囲内で防除を徹底する。
(2)高糖系温州などのマルチ被覆予定園では、天候が回復次第早急にマルチを被覆する。
(3)マルチ実施園では、マルチ上の雨水の短時間排水を徹底するとともに、晴天時には被覆の開閉を行い、土壌乾燥を促す。また、フィガロン乳剤2,000~3,000倍の散布により熟期促進、糖度上昇を図る。
3.な し
(1)低温、低日照時には、収穫期の判断を誤らないよう早めに果実の仕上がりを確認し、収穫遅れが発生しないよう適期収穫に努める。
(2)輪紋病は、収穫の1ヶ月前以降の感染では発病しないとされているが(新田ら 2001)、スロトビルリン剤などの治療効果が期待できる薬剤を使用した場合、収穫1ヶ月前を過ぎても防除効果があるという報告もある(井手ら 2001)。
(3)ミツ症の発生は、特に満開後90日前後の最高・最低気温、日照時間と負の相関が高く、地色が進むほど発生量が増加するとされている(川瀬ら1995)。