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少雨・高温対策マニュアル(野菜)
夏秋期(7~9月)干ばつ
この時期の干ばつは、直播き野菜の不発芽や、苗の定植後の活着不良が起きやすくなります。かん水は時間帯に注意し、局所かん水や乾燥防止対策(敷わら、マルチ等)との併用につとめましょう。定植後の土壌表面からの蒸散を防ぐためにマルチや敷きわらを使用する。マルチの上から、敷きわら等を厚く行うと地温上昇の防止に効果がある。
・昇温防止のために寒冷しゃによる遮光やハウスのビニール表面に遮光材の塗布を行いましょう。
・かん水、マルチ、敷きわら、遮光等は、気温や地温の低い時間帯に行いましょう。
・高温乾燥時は、ハダニ類、アブラムシ類、うどんこ病等の発生が多くなりますので、早期の発見に努め、適期防除に努めてください。
・薬剤散布は、気温の低い時間帯に行い、薬害の防止に努めてください。
・また、干ばつの状況によっては、品種や品目の見直しが必要な場合があります。詳しくは、地域を管轄する県地域振興局生産流通部へご相談ください。
・農業用水の確保のため、関係機関との調整を図り、計画的な取水ができるよう準備を行ってください。
野菜の夏期高温・干害対策
〔露地野菜〕
1.これまで定植および栽培しているもの
(1)ピーマン、なす
ア.マルチの上に敷わら、敷き草を多く置き地温の上昇を抑える。かん水は、早朝か夜半の地温が低下した時間帯に行う。
イ.適期収穫を行い、大果収穫による草勢低下を防ぐ。また、収穫は早朝に行い品質低下を防ぐ。
(2)白ねぎ
ア.夏秋どり(7~10月頃)においては、高温時にかん水を行うと軟腐病や白絹病を助長させるおそれがあるため、長時間水が滞留しない土地条件である場合を除いてかん水は控える。やむをえず実施する場合は、根の呼吸量が低下する日没後で、地温が低下した後に実施する。
イ.秋冬どり(11月以降の収穫)においては、定植直後で活着が不安定になると欠株となりやすいので、水が滞留しないように注意して日没頃のかん水を行う。
(3)キャベツ、レタス等
ア.定植直後の苗については活着を促すため4~5日間は株元にかん水する。マルチや敷きわらを行い、地表面からの水分の蒸散や地温の上昇を防ぐ。
(4)夏秋きゅうり
ア.敷わら、敷き草を多くして地温の上昇、水分の蒸散を防ぐ。かん水は、早朝か夜半に行う。設備が無く、畝間かん水する場合は、滞水しないよう注意する。
イ.適期収穫を励行し草勢低下を防ぐ。また、収穫は早朝に行い品質低下を防ぐ。
(5)アスパラガス、さといも、みょうが
ア.敷わら、敷き草を多くして地温の上昇、水分の蒸散を防ぐ。かん水は、早朝か夜半に行う。設備が無く、畝間かん水する場合は、滞水しないよう注意する。
2.これから定植、または播種するもの
(1)はくさい、ほうれんそう、にんじん、だいこん、その他葉菜類
ア.発芽を早く揃えるために、催芽種子を用いるとともに、は種圃場には前日に十分かん水しておくこと。
イ.は種は早朝か夕方行うが、は種直後にはべたがけ資材、敷わら等を利用して地温の上昇を抑さえ発芽を早く揃える。
〔雨よけハウス栽培〕
(1)トマト、ピーマン、きゅうり、ほうれんそう
ア.ハウスのつま部分を解放するとともに、肩部分は可能なかぎり上げて、ハウス内の通気を行い温度を下げる。寒冷しゃ等で遮光する場合は、温度の低い時間帯に行う。遮光する場合は、ハウスの外部遮光の効果が高い。
イ.適期収穫を行い、収穫遅れによる草勢低下を防ぐ(ほうれんそうを除く)。また、収穫は早朝に行い品質低下を防ぐ。
ウ.敷わら、敷き草を多くして地温の上昇を抑えるとともに、早朝か夜半にかん水をする。マルチの上から敷きわら等を行うことも地温上昇防止に効果的である。
エ.乾燥によってうどんこ病やハダニの発生が多くなるので防除を徹底する。
(2)にら
ア.ハウスのつま部分を開放するとともに、肩部分は可能な限り上げ、ハウス内の通気を行い温度を下げる。
イ.収穫2~3日前に、品温を上げないために寒冷しゃ(遮光率40~50%)を被覆する。
ウ.収穫は早朝に行い、品温が上がらないうちに調整作業を行い、予冷庫に入れ品質低下を抑える。
エ.かん水は早朝か夜半に少量行うが、収穫4~5日前までとする。
オ.冬にらの定植にあたっては、十分にかん水するとともに、定植時から1週間程度被覆資材を活用し地温を下げ、定植後の植え傷みを防ぐ。
(3)こねぎ
ア.ハウスのつま部分を開放するとともに、肩部分は可能な限り上げ、ハウス内の通気を行い温度を下げる。
イ.は種直後には、寒冷しゃ、べたがけ資材等を利用して地温の上昇を抑さえ発芽を早く揃える。
ウ.収穫は早朝に行い、品温が上がらないうちに調整作業を行い、品質低下を抑える。
エ.水切りは行わず、かん水の量を減らすだけで収穫まで少量かん水を続ける。
〔施設栽培〕
(1)いちご
ア.育苗ハウスの遮光により、育苗施設の温度を下げる。
イ.ハウスのつま部分を開放するとともに、肩部分は可能な限り上げ、ハウス内の 通気を行い温度を下げる。
ウ.親株が水不足で萎れないように、こまめにかん水する。
エ.立枯性病害予防のため、週1回の定期的な予防散布を行う。
オ.苗が混み合わないように間隔を広げ、蒸れと水はねの軽減を図る。
カ.病害の発生が疑わしいものは、早期に除去する。
〔水耕温室栽培〕
(1)みつば、こねぎ
ア.チラ一等を利用し養液温度の上昇を抑える。
イ.常時、養液濃度をチェックし適正養液濃度を厳守する。
ウ.腐敗根の残渣により生育不良、病害多発が考えられるので適時、養液交換を行う。
〔野菜全般的注意事項〕
(1)露地野菜で、これからは種するものは発芽不良が考えられるので、種子の確保、品種、作型等十分考えておく(は種が遅くなれば早生種にかえるか品目を変える)。
(2)品温が上がらないうちに収穫調整作業を行い、予冷庫に入れ品質低下を抑える。
(3)草勢低下防止のために少量多回数の施肥体系を取る。
(4)害虫の多発生が予想されるので防除に努める。