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少雨・高温対策マニュアル(作物)

印刷ページの表示 ページ番号:0000292098 更新日:2022年6月29日更新

少雨対策

〔水稲〕
1.被害の発生様相
(1)土壌水分が最大容水量の60%以下になると干害が起こるが、被害の程度、様相は立地条件、品種、生育ステージ等で異なる。
  
(2)空梅雨では植付け時期が遅れるとともに植付け後、湛水が不十分となるため雑草の発生が多くなる。
  
(3)分げつ期の干ばつは分げつの停止、下葉が枯れ上がる。
  
(4)以後、灌漑が十分であれば穂数は減少するが一穂籾数、登熟歩合の向上によって補償される。耕土の白化状態が20~30日間続くと40~50%減収する。
  
(5)幼穂形成期では穎花の分化が妨げられ、白ふ、奇形籾が発生する。
 
(6)穂孕期(減数分裂期)の被害が最も大きく、籾数が減少するとともに、不受精籾が増加し、減収する。
 
(7)出穂後では登熟歩合の低下、玄米千粒量の低下による減収が顕著となる。また、胴割れ、未熟粒が発生する。
 
(8)干害を受けたものは病害虫が発生しやすい。
 
(9)干拓地では塩類が地表付近に集積して塩害を起こすこともある。
 
 
2.対策
(1)水不足が予想される地域では、あらかじめ用水系統別に水利計画を立てるとともに、既存の揚水ポンプ等、施設の点検、調整を行う。
 
(2)灌排水路の整備に努めるとともに、畦畔からの漏水を防止する。
 
(3)中山問部では夕立による雨水を有効に利用するため畦畔からの漏水防止に努める。
 
(4)水田の見回りを強化し、モグラなどの被害を防止する。
 
(5)節水栽培の実施(活着期、幼穂形成期~出穂期、とくに穂孕み期は湛水する。)
 
(6)7月中旬からの干ばつの場合、早期水稲は畦畔の刈草などを畦ぎわを中心に敷草し、乾燥防止に努める。成熟期に近いものは、刈遅れにならないよう注意する。
 
(7)高温では、紋枯病、トビイロウンカの多発生が予想されるので適期防除に努める。
 
(8)塩害が発生した場合は淡水灌漑を行い、塩分濃度を薄める。
 
(備考)
      7月下旬までに干害を受け枯死寸前のものについてはすき込み、他の作物を作付けする。
    (大豆、ソバ、飼料作物など)
 
〔麦類〕
1.被害の発生様相
(1)土壌の過乾燥は出芽の遅延、不揃いをもたらし、除草剤の効果も劣る。
 
(2)出芽後の土壌の過乾燥は生育の遅延をもたらし、分げつが遅延するが、その後適湿であれば回復する。
 
(3)分げつ期の極度の乾燥は分げつの遅延、減少をもたらし、穂数も減少する。
 
(4)出穂、開花前の干ばつは不稔をもたらすとともに粒の充実は劣り、小粒化する。
 
(5)分げつ期の長雨のあと、登熟期に干ばつにあうと根が傷み、枯熟れとなり、品質、収量とも劣る。
 
 
2.対策
(1)土壌が極度に乾燥している場合は、降雨を待って播種する。ただし、播種期の限界は地域によって異なるが、平坦・沿 岸部では12月末までとする。
 
(2)土壌が過乾燥状態で播種する場合は、種子の位置はやや深めとし、播種後鎮圧を行うと出芽が揃う。
 
(3)土壌が過乾燥状態では除草剤の効果は劣るが剤型によっても異なる。粒剤よりも乳剤、水和剤等の液剤の方が効果は優る。
 
(4)登熟期に灌水が可能な場合は灌水する。畦の表面が十分に湿ったら出来るだけ早く排水を行う。
 
 
〔大豆及びマメ類〕
1.被害の発生様相
(1)空梅雨で土壌が乾燥すると出芽は遅れ、不揃いとなり欠株を生ずる場合が多い。
 
(2)播種が遅れた場合(7月20日以降)は生育量は不足し、減収する。
 
(3)出芽後~開花期の干ばつは分枝数が減少する。
 
(4)開花期前後の干ばつは落蕾、落花を生じ、莢数が減少する。
 
(5)登熟期の干ばつは粒の肥大を悪くし、粒数の減少、小粒化をもたらし、品質、収量とも劣る。
 
(6)干ばつが続くとダニが発生し、葉が黄化して光合成能力も劣る。
 
 
2.対策
(1)播種後、乾燥が続くことが予想される場合は播種深度を深めにし、鎮圧すると出芽は良好となり、出芽揃いも向上する。
 
(2)播種が7月中旬以降の晩播になる場合は標準播き(10a当たり13,000本程度)より30~40%密植する。
 
(3)転換畑で出芽後、葉の萎凋が見られる場合は、灌漑が可能であれば畦間灌漑を行う。この場合、蒸発散の少ない夜 間に行い、株元の地表面が湿る程度とし、すぐに落水する。
 
(4)中耕は標準よりも浅くし、培土は必ず実施する。
 
(5)ダニなどの害虫防除を徹底する。
 

高温(夏期)対策

〔水稲〕
1.被害の発生様相
(1)高温は一般的には降雨が少なく多日照となり干ばつを伴う場合が多い。
 
(2)高温期は水稲には有利に働き、活着、分げつ、出穂期の促進など生育面でプラスに働くが、登熟期の高温、特にに高夜温は登熟に悪影響を及ぼす。
 
(3)夜温が高いと呼吸作用に同化養分が消費され、穂への転流が劣り、登熟歩合が低下する。
 
(4)登熟の適温は平均気温21℃前後で、23℃以上および20℃以下では登熟は劣る。
 
(5)登熟期前半の高温(平均気温26~27℃以上)は、白未熟粒(基白米、背白米、乳白米)の発生に影響し、特に低日照条件では発生が拡大する。
 
(6)高温条件下では地力窒素の初期発現が大きくなるとともに、有機物の分解による有害物質の発生で根が障害を受ける。
 
(7)高温では、紋枯病、トビイロウンカが多発する場合がある。
 
 
2.対策
(1)登熟期高温を避けるため、早植えはしない。
 
(2)適正な水管理による根の活力維持を図る(間断灌水、登熟期のかけ流しによる地温の低下を図る)
 
(3)白未熟粒発生に対しては、事前対策として、適正籾数を確保し(取りすぎない)、 倒伏させない様に、地力維持増進(稲体の体質強化)が重要である。
 
(4)病害虫の防除を徹底する(紋枯病、もみ枯細菌病、トビイロウンカなど)。
  
 

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