種子植物の見直し点
1 「レッドデータブックおおいた」(2001)に掲載された種(変種を含む)は606種。発刊後も調査を続け,環境省が2007年に発表したレッドリストにリストアップされた種で,大分県に生育・標本記録があるもの,生育が確認されているもの,さらに2001年以後,新たに大分県で分布が確認された植物を含めて,今回の調査対象とした。
その結果,新たに絶滅危惧IA類(CR)に8種,IB類(EN)に16種,Ⅱ類(VU)に20種,準絶滅危惧(NT)に7種,情報不足(DD)に6種の計57種を追加し,11種を登載種から除外し,「レッドデータブックおおいた」(2011)に登載した種は652種となった。
2 新たにレッドリストの絶滅危惧IA類(CR),IB類(EN),Ⅱ類(VU),準絶滅危惧(NT)のランクに登載した種(51種)
2001年以後,大分県で分布が確認され,その生育状況や個体数などからリストに登載した種は,オオナキリスゲ,ツクシテンナンショウ,シロテンマ,キバナノセッコク,オオコガネネコノメソウなど28種,また,前回の「レッドデータブックおおいた」で登載を見送った種で,この10年間に生育地や個体数の減少が見られ,絶滅危惧種にリストアップしたものは,ササユリ,カリガネソウ,ダイサギソウ,ミヤマムギラン,スナビキソウなど23種。その結果新規に51種を登載した。
3 新たに生育地が見つかった種(13種)
記録はあるが,その生育地が不明であったり,かつて確認されていた生育地が自然災害や土地の改変などで,その生育が確認できず情報不足(DD)とされていた種のうち,調査の結果,新たな生育地が見つかり,ランクが与えられた植物はオニコナビ,ハナムグラ,カワツルモ,カシノキランなど13種。
4 ランクを引き上げた種(1種)
アオカズラは県西部,県南部の一部に生育が限られ,いずれの生育地でも個体数が限られている。近年,特に生育地での確認ができなくなり,また人工林周辺の生育地は,環境の変化や林業作業などによる減少が懸念されるため,ランクをⅡ類(VU)からIB類(EN)へ引き上げた。
5 ランクを引き下げた種(1種)
キリシマシャクジョウは日本固有種であり,本県ではアカガシ林やモウソウチク林の落葉に腐生する繊細な植物であり,樹林の伐採や攪乱による絶滅の危険性が極めて高い。調査では新たな生育地が多く発見され,自生地での個体数も多いことからランクをIA類(CR)からIB類(EN)に引き下げた。しかし,発生の消長が不安定であり,今後も注意して見守る必要がある。
6 情報不足(DD)とした種(12種)
湿地の水位の上昇によるものか,かつて生育していたマルバオオモダカやスブタは見られなくなり,台風による生育地の崩壊や植生遷移によりガンゼキランやハクサンボクなどもその生育が確認できず,「レッドデータブックおおいた」(2001)に登載していた種のうち,6種を情報不足(DD)とした。
また,環境省(2007)がリストアップした種のうち,大分県に記録があるが,現在,生育が確認できないユキモチソウ,マメダオシ,ハマネナシカズラなど6種も情報不足(DD)とした。
7 ランク外とした種(11種)
同定や種の誤認,分布上疑問のあるツクバキンモウソウ,タシロスゲ,オオハクウンラン,タヌキモ,ビッチュウアザミなど11種を除外した。
8 その他
県内に分布はしているが,環境省の絶滅危惧IB類(EN)に挙げられているオナモミについては,アジア大陸原産の帰化植物であるとの見解で,今回の大分県のリストには登載していない。