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![]() ![]() 火災時の消火活動、集中豪雨や台風の時の洪水の監視、万一の時の非難・誘導まで、県民の生命、身体、財産を守ってもらっています。 消防は、消防署と消防団という二つから成り立っています。消防署は常設の市町村の機関であり消防署員は公務員ですが、消防団というのは地域に密着して作られた防災組織で、消防団員の方はほぼボランティアです。 また、消防署員は大分県内1531名ですが、消防団員は1万5932名と、消防署員の10倍以上です。1万5千名もの消防団員の方が、生命、身体、財産を守るための活躍を奉仕精神でやっていただいている、このことをあらためてありがたく思います。 ![]() 広瀬 今日は、大分県消防協会の生島会長と、現場でご活躍されている若い消防団員のお二人にお越しいただきました。消防団というのはどんな仕事をしているのか、体験談を交えてお聞かせください。 ![]() その時にとても印象に残ったのが畳上げです。高齢者二人暮らしのご家庭でしたが、「水に浸かると畳が駄目になってしまう、畳を上げてくれないか」と言われたんです。そこで団員が力を合わせて畳を上げたところ、大変に感謝していただきました。入団したばかりの時期でしたが、地域の皆さんにこんなに感謝される活動ができるのだと、消防団の醍醐味を感じました。 広瀬 そうですね。命だけでなく、財産まで守ったということですから、感謝されるでしょう。野中さんは女性消防団員ですね。入られたきっかけは何だったんですか。 野中 私は仕事をしながら三人の子の母親でもあります。産後休暇を取っている時に、上級救命講習の募集を知り受講したことがきっかけでした。興味がありましたので、救急隊の方にいろんなことを質問していたら「女性消防団」を紹介され、入団することにしました。 途中、家庭の都合で一度退団したのですが、再入団することになりました。私は、バスの運転手とバスガイドをやっているんですが、ガイドをしていた時、突然バスに子どもさんが飛び込んでくる大きな事故がありました。日ごろ、消防団活動の中で一般の方々にAED(自動体外式除細動器)や、応急救護の仕方を指導していますので、それが自然と身に付いていて、迅速に子どもさんを救護することができました。 普通の主婦や会社員であっても、そういう知識・技能を身に付ければ人命救助につながるんだとあらためて実感し、再入団を決めたんです。 ![]()
生島 私は消防団に入り50年になりますが、近ごろは団員数が年々減少して、高齢化が進んでいます。特に一昔前に比べると、今の若い人は消防団に対する意識が変わってきているようで、危機感を持っています。若い人も、火を消すこと、人を助けることには十分意欲があるんですが、「消防団が行かなくても消防署がある」と言われることもあり、なかなか人が集まらないのが現状です。消防団の役割については、入団して経験を積む中で初めて理解できることも多いと思います。まずは入団していろいろなことを経験していただきたいですね。 広瀬 住民の皆さんの生命、身体、財産を守るわけですから、大変ですが、ものすごく感謝されるし、崇高な仕事ですよね。大変やりがいがあることなのに、若い人が少ないというのは意外な感じがします。若い人に入っていただくために、粟津さんはどうしたらいいと思いますか。 粟津 消防団の活動というのは台風、火災での出動がほとんどですが、火災の多くは夜起きますし、台風の時は人は外を出歩きません。だから地域の人々は意外と消防団の活動を目にすることがないと思うんです。 ですから、消防のお祭りである「出初式」をもっと街の中で、市民に見ていただける場所で開催して、消防団員が輝ける場面を作っていくことが必要だと感じています。そうすれば若い方の消防団活動に対するイメージが、変わってくるのではないでしょうか。
それから、高校生で組織する「ハイスクール消防クラブ」というのもあるんですよね。 生島 平成20年に結成した高校生の消防クラブで、初期消火活動、蘇生訓練などに取り組んでいます。若いころから消防活動を勉強して、公共のために頑張るんだという気持ちを早く持ってもらうことが大事だと考えています。子どもたちは通学途中で倒れた人に出会うこともあるでしょうから、消防クラブの活動が役立つこともあると思います。 広瀬 そして第二の野中さんが誕生すると。 姫島には中学生の少年消防隊がありますよね。島だから、自分たちがやらないで誰がやるという気持ちがあるんですね。全員入団すると聞いて、感心しているんです。 生島 姫島の消防隊は大変すばらしいことだと思いますね。 消防団でも、1〜2ヶ月に1回行う日曜日の操法訓練に、地元の中高校生を呼んで一緒にポンプ操法の訓練をしてもらったらどうかなと考えています。そうすれば、若い人に消防団の魅力を伝えることができるのではないかと。若い人にとって、消防団というものを身近な存在にしていきたいですね。 ![]() 広瀬 女性団員の募集も大事なことです。野中さんから見て女性に消防団に入ってもらうためにどうしたらいいと思いますか。 野中 やはり、消防は男性というイメージがまだ強いんですよね。ですから、まずは女性消防団員の存在を知っていただこうと、昨年から佐賀関の鯛つりおどりや鶴崎踊に参加して、大分市消防団の女性分団「ファイヤーレディース21」をPRしています。また、企業や、小さい赤ちゃんを持つお母さんたちの集まりなどに出向いて救急法の指導を行っていますが、そこでもPRをしています。 生島 女性消防団員もこれから大いに増やしていきたいですね。大災害が発生した時、女性消防団員の役割はとても重要です。大災害時の支援活動では、けがの手当てや炊き出しなど男性の消防団員だけでは絶対に不足するので、女性分団などの体制の充実が必要だと思います。 ![]() 広瀬 野中さんはバスガイドさんとバスの運転手、それから粟津さんはホテルで働いていらっしゃいます。それこそ、仕事と消防団というボランティア活動の両立を考えておかないと大変ですよね。いろいろご苦労も多いんじゃないでしょうか。 ![]() ![]() 私は、会社でも消防団活動について熱く語っているんですが、そのためか、仕事で何かあった時に備えて、社員みんなでAEDの講習を受講しようということになったんですよ。 広瀬 会社も野中さんの仕事を理解し、野中さんの仕事に学ぼうというわけで、なかなか理想的ですね。ホテルで働いていらっしゃる粟津さんの方はいかがですか。 粟津 ホテル業は働いている時間が長いので、同僚の協力が不可欠ですね。それに、うちの分団長は、消防はボランティアだからまずは仕事を優先させること、という考えです。消防の活動を完ぺきにする、というルールがあればほとんどの方が消防団員ではいられなくなるので、仕事も十分頑張って、自分ができる範囲で消防団に力を入れています。 広瀬 おっしゃるとおりだと思います。ご自分の仕事が成り立っていくことを前提に、プラスしてボランティアで消防団活動をお願いしているわけですから。 生島 勤め先の企業に、どこまで消防団について理解していただくか、これも大きな課題ですね。地域貢献を果たしていることをもっとPRしていただくとか、消防団への協力事業所に対するいろんな優遇措置が必要だと思います。企業の方々、そしてご家族の協力がないと消防団の出動は不可能に近いんです。 広瀬 本当に、おっしゃるとおりです。消防団の皆さんが仕事と消防団活動の両立ができるように、われわれとしても機能別消防団員、消防団応援隊など皆さんをカバーする制度を作っているところです。 生島 県の指導により、県内の消防団に機能別消防団と、消防団応援隊が誕生しました。これは、消防団員が少なくなる昼間をカバーしてくれる組織ですので、大変ありがたいことです。消防団応援隊については、もう少し増えると助かります。というのは、林野火災の時には広範囲に燃えますから初期消火が最も大事で、その初期消火には、地区の方々の応援がないと難しい面があります。地区の事情に詳しい方々で組織された消防団応援隊を、今後も数多く結成していただきたいです。 広瀬 そういう意味では、地元に密着して地元の事情もよくわかっている、そして消火活動でも防災活動でもすぐに活動できる、というのはやはり消防団や消防団応援隊なんですね。
![]() 広瀬 消防団は、自分を犠牲にして地域の守りを固めていただいているんだなと、心から感謝の念がわいてきます。しかし今皆さん方から、消防団が抱える問題、特に、なかなか若い人が入ってこないというお話も伺いました。最後に、消防団の面白さややりがいを含めて、新しい団員を勧誘していただければと思います。 粟津 団員の減少、団員の平均年齢の上昇が、消防団の大きな問題になっています。しかし、いざ災害が起きた時に消防団員が少ないと、困るのは県民の皆さんなんです。ですから県民の皆さんもぜひ、若い方に入団を呼びかけていただいて、いざ何かあった時はみんなで地域を守っていきましょう。人命救助や火事の消火、やりがいは山ほどありますので、とにかく中に飛び込んでいただいて、一緒に活動していければと思います。 野中 大分市の女性団員は現在36名です。市民47万人に対しての36名ですので、何かあった時には絶対的に人数が足りないと思います。私も上級救命講習に行っていなければ応急手当等も身に付かず、いざ現場に立った時に何もできなかったと思います。消防団に入ったことでいろんな勉強をさせていただきました。その結果、人を救うことができ、そのことで大変感謝されたという経験が、私にとってはやはり一番のやりがいですね。一人でも多くの方に入団していただきたいです。 生島 やはり、来るべき地震とか災害への備えをしておかなくてはいけない、そのためには消防団が存分に活動できるような体制、組織づくりが必要だと感じています。 今一番心配していることは東南海・南海地震の発生です。近い将来、マグニチュード7〜8規模の大地震の発生が懸念されています。われわれは地震を防ぐことはできませんが、被害を最小限に食い止めることはできます。例えば地域の住民の防火診断。高齢者宅の寝室の場所を把握することで、迅速な救助が可能になります。大災害に備えて、消防団が今すべきことはたくさんあります。ぜひ一緒に地域を守っていきましょう。 広瀬 消防団の皆さん方のおかげでわれわれは助かっているんですね。粟津さんのお話にあったように、消防団員は最終的には市民、県民のために活動していることをよく考えながら、感謝を込めて協力していきたいと思います。ありがとうございました。 |
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