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大分県人権教育基本方針

印刷用ページを表示する掲載日:2010年8月12日更新

平成17年1月28日
大分県教育委員会

国際社会では、国際連合において「人類社会のすべての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利とを承認することは、世界における自由、正義及び平和の基礎である」との認識のもと、1948年に世界人権宣言を採択して以降、全世界からあらゆる差別や人権侵害をなくすため、国際人権規約をはじめ女性差別撤廃条約、児童の権利に関する条約等、人権に関する多くの条約を採択し、人権が尊重される社会の実現に取り組んできた。
 我が国では、日本国憲法において、個人の生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利を尊重し、すべての国民は法の下に平等であるとしている。これら憲法の保障する基本的人権の確立に向け、国際社会の一員として様々な条約を締結し、福祉や教育などの分野において各種の法律や制度の整備を進め、具体的な取組を行ってきた。
本県においても、人権尊重の精神を取り入れた各種条例の制定等を行い、1998年には「人権教育のための国連10年」大分県行動計画を策定し、学校や地域において人権教育を進めるとともに、特定職業従事者等に対して研修等の取組を進め、併せて、人材の養成や教材等の開発・整備に努めるなどして、「人権尊重の大分県」をめざして取り組んできた。これらの取組を通じて、一人一人が自らの尊厳を認識し、相互に人権を認め合い、差別や偏見の解消に向け不断の努力を重ねることにより、すべての人の人権が尊重され、豊かに共生できる社会の実現という理念のもとに、「人権という普遍的文化」の構築をめざして、同和問題をはじめとするあらゆる人権問題の解決に向けた人権施策を総合的に推進してきた。
 しかしながら、依然として、我が国固有の人権問題である同和問題をはじめ、女性、子ども、高齢者、障害者、外国人、医療に係る問題等様々な人権問題が存在し、また、インターネット上での差別的内容を含む誹謗中傷など、新たな人権問題も発生している。これらの背景としては、人々の中に見られる同質性・均一性を重視しがちな性向や非合理的な因習的意識の存在等が挙げられるが、国際化、情報化、高齢化等急激な社会の変化も要因と考えられる。こうした差別の解消や人権問題の解決に向けては、これまでの同和教育などの取組の成果や反省の上に立って、社会を構成するあらゆる人々が、互いに個人として尊重し合い、様々な文化や考えを交流できる「共生社会」を実現することが求められている。
 「人権の世紀」といわれる21世紀において、すべての人々の人権が尊重され、相互に共存し得る平和で豊かな社会を実現するためには、一人一人の人権尊重の精神の涵養を図ることが不可欠であり、そのために教育の果たす役割は大きい。
 以上のことから、大分県教育委員会は、日本国憲法及び教育基本法、人権関係の国際条約などの精神に則り、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律の基本理念をふまえ、その責務を深く自覚し、人権尊重社会の確立をめざし、学校教育と社会教育を通じて以下のように人権教育を推進する。

1.人権意識の基礎を培う教育の推進

一人一人の人権が大切にされる環境において、「自分の大切さとともに他の人の大切さも認める」人間関係づくりを通して、自分自身がかけがえのない存在であることに気づき、相互の違いを認め合う中で、自尊感情を育成するなど、人権意識の基礎を培うための人権教育を推進する。

2.豊かな人権感覚を育成する教育の推進

人権の意義や様々な人権問題に関する学習を通して、人権問題への正しい理解や認識、的確な思考力・判断力を身に付け、人権問題を直感的にとらえる感性や、人権への配慮が態度や行動に現れる人権感覚を育成するための人権教育を推進する。

3.人権を尊重する意欲や態度、技能を育成する教育の推進

一人一人が、自らの課題として人権問題の解決に取り組むとともに、社会の構成員としての責任を自覚し、豊かな体験活動を通じて、他の人と共によりよく生きようとする実践的な意欲や態度、技能を育成するための人権教育を推進する。
この方針の実施にあたっては、これをより効果的に、かつ総合的に推進するため、人権教育にかかわる県・市町村、関係諸機関及び民間諸団体などの各実施主体が、その担うべき役割をふまえ、相互に有機的な連携協力関係を一層強化することが重要である。
また、人権教育は幼児から高齢者に至る幅広い層を対象とするものであることから、県民の思いや対象者の発達段階をふまえ、生涯学習の視点に立ち、地域の実情等に応じて、家庭、学校、地域などそれぞれの場で多様な機会を通して実施される必要がある。
その際、県民一人一人に人権問題や人権教育の在り方について多様な意見があることをふまえ、その自主性を尊重するとともに、教育行政の主体性と中立性を確保し、広く県民の理解と共感が得られるよう、十分留意しなければならない。